第27話 伽話
「なんだ?四英傑って」
「う、うむ・・・わらわが産まれる前からある言い伝えでな・・・」
そう言ってアキは物語を話し始める
『龍に乗りし英傑 世を変へし者なり
龍に思はれし英傑 世を癒す者なり
龍を守りし英傑 世を清くする者なり
龍を支へし英傑 世を救ふ者なり
五千年毎の災厄訪れしほど 四英傑すだきて
事収む』
「・・・と言う内容の昔からある御伽話じゃ」
「昔からって、龍族って4頭しかいないんじゃ無いのか?5000年ってそんなに長生きしてるのか?」
俺の質問にアキは頷く
「うむ。4頭しかおらぬわらわ達は、魔の属性が皆違いすぎて龍同士で子供なども出来ぬ。今、最年長で4500年程じゃ。龍は5000年程の寿命と言われていて、命尽きた時はその遺体の魔から新しい龍が生まれるのじゃ」
「なるほどな・・・」
「じゃが、新しい龍が生まれたと言っても前代の記憶はないし、人族で言う潜在魔法も違う。炎属性の龍の魔からは炎属性しか生まれないのじゃが、前代はわらわの様に人化出来ぬかったと聞く」
御伽話自体は龍が生まれてから数年だけは、大きくなるまで他の龍に育ててもらう時に聞かされる話とアキは説明してくれた
「英傑って4人居るって事だよな。龍に乗った英傑、龍に愛された英傑、龍を守った英傑、龍を支えた英傑と」
「うむ。英傑はそれぞれ世界にもたらした結果が違うようじゃ。そして最後じゃが・・・」
「5000年に1度災厄が来て4人の英傑が集まって事件を解決・・・ってとこか。この災厄は普通の戦争とは違うレベルなんだろうな。戦争なんて数十年に1度は起きてるしな・・・」
俺は腕組みをしながら考える
「ちなみに600年前。わらわはその4500歳の・・・当時は3900歳の水の龍に数年だけ育ててもろうたのじゃが、そやつはまだ生きてる時に災厄には合っておらぬし、それからわらわも600年生きたがまだ来ておらぬ。つまり・・・」
「最低でも4500年は来てないと言う事なんだな」
「まぁ御伽話じゃから本当に災厄が来るかも分からぬがな。じゃが、今、わらわがつけた防具。ただの鉄の防具と言いながら、間違いなく飛躍的に能力が向上しておる。こんな向上の仕方、今まで聞いた事もないし、見た事も勿論初めてじゃ・・・
600年、確かに成長で緩やかに魔は大きくなって来てはおるが、ただの鉄の防具で10倍じゃぞ?龍であるわらわでなきゃ、魔の急激な増大で眩暈などの魔酔いをしているかもしれぬ・・・そんな防具を作るボットがじゃ。
600年も今まで全く人と絡まぬかったわらわの前に、たまたま人族として初めて優しくしてきて一緒に住むとなったのじゃ。あまりにも偶然とは思えぬのじゃが・・・」
「・・・まぁ考えてもしょうがない。本当に今回作ったのはただの鉄のガントレットだし、何で能力が上がったのかも分からないからな。とりあえずガントレットをつけた間だけでも、それだけ能力が上がったらしばらくは冒険依頼に後れを取らないはずだ。これで冒険者登録出来るぞ」
まぁ、無くてもアキなら防具無し人化の状態縛りでも下手すればSランク行きそうだけどな
アキは俺の言葉にパァと顔を綻ばせる
「本当かの!これで一緒に冒険出来るのじゃな!!」
「そうだな、もう昼だし昼飯を作って食べてからギルドに一緒に行くか」
俺はアキの頭を撫で、一緒に屋敷に戻っていった
昼食を済ませ、ギルドに向かう途中
「あっ、そうだ。アキ、1人で依頼を受けたいと思うか?」
俺の質問にアキは首を横にブンブンとふる
「わらわは人族の為ではなく、ボットと一緒に居る為に冒険者になるのじゃ。1人で受けようとは思わぬ」
「まぁ、そっちのが良いかもしれないな。個人冒険者だと国からのソロ強制依頼が来るかもしれないしな」
勇者ジャックボット時代、国から数多くの強制依頼が来た
しかし解散するまで俺が個人冒険者を知らなかった様に、全部パーティでクリアする依頼だった
つまり、個人冒険者と登録していなければソロの強制依頼は来ないと言う事
アキが個人冒険者として登録すれば間違いなく瞬く間にランクが上がって行くだろう
するとアキ個人に強制依頼がくる
俺がいなければ他種族に関係を極力持とうとしなかったアキがそれを喜んで受けるか
多分、俺と離れるのを嫌がるだろうアキはそれを受けたがらないはずだ
「よし、ならアキは俺とパーティを組むで良いな」
「うむ!無論じゃ!」
俺達はギルドに着き、扉を開けた
「あっ、ボットさんにアキさん!?ちょうど良い所に!!」
そう言って出迎えるマイ
「どうしたんだ?」
「ボットさんが助けた方が先ほど目を覚まされたんですよ!かなり出血していたみたいで丸2日程眠られてましたが、今は胃に優しいお粥を召し上がっています!」
「おぉ、それは良かったな!マイ、その人に『無事で何より』と伝えておいてくれ。それで今日はだけどな、アキの冒険者とうろ・・・」
「いえ、実はですね・・・」
マイは俺の言葉を遮る
「目を覚まされて、このギルドに登録された冒険者に助けられたと言うと『是非御礼が言いたい』と仰られています!ボットさんに不都合がなければ通させていただきますが、いかがされますか?」
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