第25話 一緒
「うぅ・・・朝か・・・昨日は結構大変だったな・・・」
俺は朝を起きて昨日屋敷を手に入れた後の事を思い出した
まず、アヤカがお気に入りだった店でアキの服の購入
「ボットよ・・・わらわは600年、人化で同じ服しか着とらん・・・どれが良いか全く分からんのじゃが・・・」
「うーん、ここに来た事はあるが、アヤカの買い方は独特だったからな・・・」
以前来たときは、アヤカは気に入った服があったら値段を見ずに買っていた
エルフ族でアキと同じ位しか身長は無いが、それ位の身長でも子供すぎない大人っぽい服が売っているこの店が大のお気に入りの様で3歩に1回足を止めて『これも』と買っていた
あまりにも見境なく買うから俺が止めたら
「ボット?服との出会いはその一瞬だけなんだよ?誰かに買われたら私が着てあげる事出来ないんだよ?」
と、まじめな顔をして言うから説得を諦めたなぁ・・・
それでも勇者ジャックボットのメンバーで、英雄でもあるアヤカにとっては全く懐が痛まない所なんだろうけど・・・
俺は違うからなぁ・・・
服屋の中で立ち尽くしてる俺達を見かねて女性店員が近づいてくる
「いらっしゃいませ!!どのような服をお探しですか?」
来たな・・・悪魔のささやき・・・
ここで「おすすめを」なんて言ったら高い値段で売れにくいのを出して「これなんてお似合いですよ~」と言ってくる店があるとレナとアヤカが話していたことがある
男としてのプライドが邪魔して俺にはそれを断る勇気がない
大事なのはちゃんと目的と予算を先に伝えておく事
ちなみにそのアドバイスをしたアヤカ自身は、少しでもいいと思えば全部どうせ買うので実践していない
「あー、新生活の為にこの子の服を買いに来たんだが、金貨5枚で複数着そろえる事って出来るか?」
「勿論です!新生活おめでとうございます!私服用ですね?でしたらお求め易い物をお持ちしますね!」
「あぁ、頼む・・・」
そう言って店員が数分後に持って着た服を、試着室に入って試着したアキが目の前に出てきた
「おぉ、アキ、これ可愛いじゃないか」
肩口にレースのついたカッターシャツとチェックのスカート、深紅のケープコートを試着しており、店員は下着やその他にも動き易そうな服等も出してくれた
さすが英雄アヤカが気に入る服屋
素人の俺でも分かる位センスが良い
「ちょ、ちょっと待つのじゃ、ボットよ・・・」
そう言ってちょいちょいと耳を近づけるジェスチャーをするアキ
俺は促されるまま耳を近づける
「どうした?」
「・・・この服じゃ冒険依頼で破れたら勿体なくはないかの?」
「は?」
俺はアキを見る
アキはまじめな顔をしていた
「アキ、一緒に冒険者になるつもりだったのか?」
「あ、当たり前じゃろう!?わらわがいる事で万が一の時でもボットが生き残る事が出来るかもしれんのだぞ!?」
まぁ、アキは圧倒的に俺より強いから言ってる事は正しい
だが・・・
「アキ、俺は冒険を手伝って欲しくて家族になったんじゃないぞ。幸せにしたくてなったんだ」
アキはポカンとした顔で俺を見る
「まぁ、お金は任せとけ。すみません、これ全部下さい」
「はい♪ありがとうございます!!」
店員さんが俺から金貨を受け取り服を袋に入れに奥にさがる
すると待ってる間にアキが俺の腕に自分の手を絡めた
「ボット・・・ボットが冒険に行ってる間、またわらわは1人かの?」
「アキ・・・」
「それでボットが危険な目に合ってるかもしれないのに、わらわはあの屋敷で1人心配して待っておらないといけないのかの・・・?」
「・・・」
俺は何も言い返せない
確かにアキは物凄い強い
だがそれを理由に家族になると言ったらアキは悲しむし、俺はアキが強かろうが弱かろうが関係なく家族になりたかった
だから俺が全て1人で稼いでアキを養う位の気持ちでいたんだ
でもアキの心配はそこでは無かった
そうか・・・そうだよな・・・
昨日はアキとの出会いから孤独の辛さを知り、朝はキールの事件から愛の大事さを知った
キールの家族はキールが全てをする訳では無く、ライラもキールを精神面で助けていた
今まで1人だったアキも家族が出来た事で、自分が出来る範囲で俺を助けようとしてくれているんだ
「アキ・・・冒険は危ない。それでも付いてきてくれるか?」
「も、もちろんじゃ!どこまででもついて行く!絶対にじゃ!!」
「・・・分かった。ただその服たちは買う」
「・・・良いのかの?」
「あぁ、アヤカが言ってた・・・」
俺は少し笑いながらアキに言う
「『女の子はオシャレも冒険も命がけなんだよ!!』ってな!さっき値段見たらそこまで高くもないし、破れたら買い直せばいいさ!」
アキはキョトンとした顔をしてはいたが、俺の言ってる事を理解したのかパァと顔を輝かせて「うむ!!」と頷く
試着した服は着たままで出れる様にして貰い、その他の買った服とお釣りを受け取り俺らは次に夕飯と布団を買いに行く
さすがに他人が5年前に使った布団
買い替えるべきだよな・・・
ライラの部屋にあったベッドはキングサイズだったからそれ用の布団を買って、もう1台ベッドを購入する必要がある・・・と言ったらアキはモジモジと何かを言い出す
「ボットよ・・・さすがに布団2枚は勿体ないのではないか?あの寝床は広いし。昨日は今日だけ一緒に寝ても良いぞと、わらわは言ったが・・・仕方あるまい・・・今後も一緒に・・・」
「ちょっと待て!?アキが一緒に寝たいって言ったんだろ!?店の人の前で変な事言うんじゃない!?」
俺は慌てて訂正する
寝具屋の店員を見ると苦笑いをしてこっちを見てる
あぁ・・・絶対未成年好きと勘違いされてる・・・
「にしし!!まぁ良いではないか!すまんが、この布団1枚買うので頼めるかの?」
アキは店員に向かって注文する
「はい!ありがとうございます!本日中にお届けしますのでご住所をお聞きしますね!」
店員はてきぱきした手際で梱包し始める
「アキ・・・」
「な、なんじゃ!?これは譲らぬからな!?」
「はぁ・・・」
まぁ良いか
別に恋人がいる訳でも一緒に寝たら死ぬわけでも無い
アキが一緒に寝たいと言ったら別に断る理由も無いからな
俺は、寝具屋店員に住所を伝えに行きアキの所に戻る
「じゃぁ、次は晩飯材料買いに行くぞ」
「うむ!」
夕飯の材料を買って帰るとキールが手配した業者がキールの私物を撤去する為に門で待っていた
俺は業者に指示をする為に一緒に見て回り、終わったら今度は布団の業者が来て運んでもらうために案内する
それから料理をして、いただきますをして一緒に料理を食べシャワーを浴びたらもうクタクタだった
それで寝て起きたら今と言うわけだ
「・・・ボット・・・起きたのかの?」
アキが眠い目をこすりながら起きてくる
「あぁ、おはよう。アキ、朝ごはんが済んだら冒険者登録の前にしなくちゃいけない事がある。付き合ってくれるか?」
アキは半目の状態で首をかしげていた
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