第21話 主人
「あれは・・・彼女の子供か・・・?」
喋りかけている内容からしても間違いないようだ
特徴からしても、状況からみてもアンデッドである事は間違いないだろう
ロッキングチェアの周りの床には埃がたまっている
そこにはやはり足跡はない
何年もこのロッキングチェアに揺られながら1歩も動かず遺骨の赤ん坊に話しかけているのだろう
「あの子供をあやしてる時が一番幸せだったんだろうな・・・」
アンデッドは一番幸せだった行為を邪魔しなければ襲ってくることがない
つまり今回に関しては赤ん坊を取り上げなければ大丈夫なはずだ
「とりあえず、後悔の手がかりを探さないとな・・・」
部屋の隙間から覗いたまま見えるのはロッキングチェアの横に赤ん坊用の小さいベッド
赤ん坊が落ちない様に柵があって上にはあやす用のおもちゃが吊るされている
どうやらここは子供部屋の様だ
「まず、あのアンデッドだった人の部屋を探すか・・・」
子供部屋の両隣には部屋が2部屋あった
赤ん坊は泣くので泣き声が聞こえやすい様に、すぐ会いに行けるように隣の部屋が夫婦の部屋の可能性が高い
俺は左側の部屋を開けた
開けた瞬間、本の紙の匂いが鼻を抜ける
「ここは・・・旦那の部屋か?」
沢山の本が本棚に綺麗に整頓されており、机の上には高価そうな羽ペンとインク達が置いてある
その時、俺は違和感を感じる
並んでいるインクは黒が1つに赤が4つ
俺はその内の1つ赤のインクの蓋を開け羽ペンを浸けて紙に垂らしてみる
「この匂いは・・・血だな・・・」
旦那は悪趣味なのか?
この部屋で分かったのは悪趣味と言う事くらい
本の種類も豊富でどんな人物か特定するのは難しい
俺は旦那の部屋を出て反対隣の部屋を開けた
「ここがあのアンデッドの部屋で間違いないみたいだな」
部屋にあるのは大きめのベッドにドレッサーデスク、ドレスが多く入っているクローゼット
婦人の部屋で夫婦2人で寝ていたのか枕が2つ
この部屋も綺麗に整頓されている
俺は部屋に入り辺りを見渡す
「これは・・・手紙か?」
ドレッサーに置いてあるのは綺麗にシーリングワックスで封がされた手紙
あて先は・・・書いていない様だ
「あのアンデッドには悪いが手がかりかもしれないからな・・・」
俺は手紙の封を切り中身を取り出す
そこに入っているのは手紙と指輪
俺は指輪を握って手紙を読む
「・・・・・・・・・・そうか。そう言う事だったんだな・・・」
俺は指輪を戻し、その手紙を持って部屋を出た
俺は婦人アンデッドがいる子供部屋の扉を開ける
『キィー』
何年かぶりに開けきられた扉は自己主張の激しい音をたてた
「あなたは私とあの人の大事な・・・」
婦人はスッと俺を見る
そしてすぐ興味を失ったか、何事も無かったかのように赤ん坊に話しかけるのを再開する
「あなたは私とあの人の大事な子、大切に育っておくれ・・・あなたは・・・」
俺は婦人に向き合うようにしゃがみ婦人の視界に入った状態で話しかけた
「あんたがずっとしたかった事、この手紙を旦那に渡す事だったんだな・・・。俺が今からこの手紙を渡してくる。あんたの旦那、『・・・』さんに・・・」
「私とあの人の・・・」
婦人はまた言葉を止めて目線を赤ん坊から変えて俺を見る
赤ん坊をあやしている時は幸せそうな半面寂しさも持っている様な笑顔だったが俺に見せたのは本当に嬉しそうなまた別の笑顔
「ありが・・・とう・・・」
婦人アンデッドは生前の姿とほぼ変わらない姿から後悔が無くなり消えようとしていく
まだ渡してはいないが俺を信用してくれたようだ
髪が抜け落ち、皮膚が腐り白骨化し抱えてた赤ん坊の棺桶と共に床に崩れ落ちる
「かならずあんたの気持ちを伝える。だからゆっくり休んでくれ」
俺は2人の白骨遺体に供養の気持ちを込めて頭を下げた
俺は魔力を込め、アキに渡した魔道具に連絡をする
『アキ、聞こえるか?』
『ボット、無事かの!?中に居た魔が動かないまま消えた様じゃ・・・怪我はしとらんか?』
アキはずっと俺の心配をしていた様だ
『大丈夫だ。アキ、全部終わった・・・いや終わらせるために戻るぞ・・・。この館の主の『キール』さんの所に』
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