第19話 内見
俺とアキはキールから鍵を受け取り外に出る
「はぁ・・・」
俺はアキの額をペシッと軽く叩き歩き出す
「うにゃ!?何をするんじゃ!?」
「あのなぁ・・・アキの縄張りにいきなり誰か入ってきて『殺す』なんて言ってきたらどうする?」
「そりゃぁ、撃退するに決まっとるじゃろう」
アキは額をさすりながら返事をする
「だろ?アキはキールさんに同じことをしたんだぞ?」
「う、うむ・・・そうかもしれんが・・・あやつは・・・」
俺は話を遮る
「2人の話を聞いて何となくだが理解した。キールさんは人間じゃないんだな?おそらくは純粋な魔族」
ハーフなら人に手を出すとかの話はしないはず
何故なら自分も半分同じ人間なのだから
きっと純魔族なのだろう
「・・・なんじゃ、分かっておったのか。うむ、種族までは分からぬが魔的にも人の血が入っていない魔族である事は間違いない」
魔族にも種族がある
魔族はケンタウロスや牛男等色んな種族があるが、言語能力がある知性が高い種族は魔物ではなく魔族とされる
例外もいるが基本的に見た目が人間と違い、過去に領地を争い戦争をしたこともありお互いの国での差別・嫌悪は凄まじいものがあった
人族・エルフ・ドワーフ・魔族はそれぞれ子供を掛け合わせることが出来、ハーフ魔族のレナは見た目が人間にしか見えなかったからまだマシだったが、国民にバレた時は色々紛糾があった
魔族に家族を殺された人もいるから気持ちも分からなくはない
だが魔族が殺したかもしれないがレナが殺したわけではない
人間の盗賊が人間を殺したからと言って遺族が盗賊を嫌う事はあっても『人間と言う種族全員嫌いだ!』とならない
だが殺された相手が別種族であったら、何故か種族全員に嫌悪を覚える事があり得る
「人族の国に純粋な魔族がいるのじゃ。人族に手を出す可能性があるかもしれん。わらわはそんな事は一向に構わん・・・じゃが・・・」
アキは上目遣いで俺を見る
「ボット、お主だけは生きてもらわきゃ困るのじゃ・・・」
「アキ・・・」
俺はため息をついてうなずく
「分かった、分かったよ・・・ただキールさんがちゃんと人に手を出さないと分かったら謝りに行こうな?」
「うむ・・・ボット、すまぬのじゃ・・・」
シュンとするアキ
アキが俺の為にキールが万が一、悪意を持っていたら危ないと思って釘を刺しておいてくれたのだろう
アキは自分自身の為でもなく俺の為に行った事
疑いが晴れたら俺も一緒に謝ろう
10分くらい歩いただろうか
俺達は家に着いた・・・はずだった
「本当にこの家・・・なのか・・・?屋敷だろ・・・」
目の前にあるのは貴族が住むような屋敷ほどではないがかなり裕福な人が住んでいたのであろう家、見る人が見れば屋敷と思うであろう
俺達は門を開けて中に入る
そこには花などを植えれる庭もある
庭の真ん中まで来て周りを見渡す
「いや、2人で住むには広すぎるだろ・・・確かに手入れされていない様だけど、それで半額ってあり得るか?」
「多分、その理由は別にある様じゃ」
アキは屋敷を見ながら呟く
「どういう事だ?」
「中から魔を感じる。だれかおる様じゃ」
俺はアキにつられて屋敷を見る
「・・・中に何人いるか分かるか?」
「1人の様じゃな。魔としてはかなり小さい。動いてもおらん様じゃ」
「まだ気づかれてはないか・・・魔力が少なくても物理的に強い可能性もある。無理に入るのは危険だ」
勇者ジャックボット時代諜報・収集担当だった経験が俺に危険信号を出す
「あのキールと言う男、やっぱりわらわ達を嵌める気だったのかの?」
そうかもしれない
だが俺にはキールがアキと話していた時、嘘をついてるとはどうしても思えなかった
「そう決めつけるのはまだ早い。アキ、中に居る魔力が動き出したら俺に言え。すぐに屋敷を出る。まず、屋敷には入らず外から中を観察するぞ」
「うむ」
俺は、屋敷の扉に近づきそっと引いてみる
扉は動かない
だが無理にこじ開けた形跡もない
「キールさんが鍵を渡してきたから閉まっているとは思っていたけど、やっぱり別の場所から侵入しているようだな・・・」
元々鍵が閉まっていたこの屋敷、初回に入る時は中に居る人物は他の方法で入る必要がある
俺達は屋敷の周りをゆっくり慎重に回る
大きな窓がいくつもあった
そして扉に戻ってくる
「おかしい・・・中に居る奴はどこから入っているんだ?」
「?・・・ガラス窓からじゃないのかの?」
「いや、全ての窓の金具にかなりの埃が積もったままだった。長年触られた形跡もない・・・中に居る奴はこっちに気付いているか?」
アキは俺の問をうけ屋敷を見る
「・・・いや、動いてはおらぬようじゃ」
「寝てるのか・・・?」
ギルドに行って依頼を出すか?
だが、もし俺とアキ2人がかりで勝てない相手が他の冒険者で勝てるか?
答えはNOだろう
「アキ、その人の姿での力ってどれくらいだ?」
屋敷の中で龍の姿にはなる事は出来ない
俺は人の姿の時のアキの力を見た事がないので聞いておいた
「魔は変わらないレベルが使えるぞ。じゃが、力は人よりは強いがかなり落ちるし、まず・・・」
そう言って手を横に広げる
「こんな小さい体じゃ届かない範囲が多いの・・・」
「そうか・・・」
「そして、わらわの使える魔は炎の属性のみじゃしな・・・」
「屋敷ごと燃えるんだな・・・」
2人して黙り込む
「アキ、お前はここで見張っていてくれないか?俺が中で様子を見てくる」
「!?・・・いや、危ないのじゃ!?キールと言う男の罠かもしれん!!」
「大きい声をだすな・・・だが、そうするしかない・・・そうだ・・・」
俺は、ポッケから石のような物を取り出しアキに渡す
「これはなんじゃ?」
「これはエルフ族が作った魔道具だ。俺の魔力が込められている。こうやると・・・」
俺は頭で念じると魔道具が光る
『こうやって俺はしゃべらなくても持っている奴と一定の距離、意思疎通ができる。アキの方は喋らなくちゃだめだがな』
アキは頭の中に流れる俺の声に驚く
「なるほど、これは珍しい物じゃな」
「あぁ、勇者ジャックボット時代に戦闘中に指揮する時の必須品だった・・・何かあればすぐ連絡する。その魔道具にアキの魔力を流すと俺に話しかけられるから、誰か来たり中に居る奴が動いたらすぐ教えてくれ」
「・・・分かったのじゃ・・・ボット気を付けるのじゃぞ?」
心配そうな顔で見つめるアキ
俺はそのアキの頭を撫で
「あぁ、大丈夫だ。お前を1人にはしない」
と言ってキールからもらった鍵を扉の錠に差し静かに開け1人で中に入った
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