第18話 物件

「おや、これは珍しいお客様ですね。ボットさん、ようこそお越しくださいました」


出迎えたのは40代位であろう糸目の男性だった


「お久しぶりです、キールさん」


俺は軽く頭を下げる


以前、国からの依頼で紹介され彼が所持していた魔物が占拠している館の殲滅をした事があった


国が個人の為に依頼を出すのは珍しい


つまり国と密接な関係にあると言う事だ


俺は敬語を使ってでも仲良くしておく人物だと思っている


「キールさん、お元気そうで何よりです」


「はい、おかげさまで。ボットさんも・・・おや・・・」


キールは俺の後ろを見て少し目を見開く


「これはこれは・・・ボットさんのお子様でしょうか?」


すぐに元の細い目の笑い顔に戻るキール


「いや、最後に会ってからそんなに経ってないのにこんな大きい子がいる訳・・・」


「・・・お主、分かっておるのじゃろう?」


俺の突っ込みを遮る様にアキがキールに話しかける


「おや、何の事でしょうか?」


「わらわは魔が見える。魔は種族毎・個人毎にひとりひとり違う。お主は・・・」


「はは、これは聡明なお嬢さんだ」


今度はアキの話を遮るキール


「それで、かわいいお嬢様。私をどうするおつもりで?」


「わらわは種族の争いには興味がない。どうしようとわらわは止めぬつもりじゃ。じゃが・・・」


アキから少し出る殺気


「ボットに手を出したら殺す」


「おい、アキ、入っていきなり何を言ってるんだ!?すみません、急に・・・」


俺は訳の分からない事を言い出すアキを叱り、キールに謝る


会って早々何喧嘩売っているんだ・・・


「いえ、ボットさん、貴方は本当に面白い人だ」


キールは気にしない様子で糸目の目をさらに細める


「勇者パーティを指揮し、さらには勇者と匹敵、いやそれ以上の方まで仲間にされる。貴方のような人徳優れる方には付いて行きたいものですな」


「えっ、キールさん、アキの事・・・」


「はは、私も魔力が見えますので。お嬢さんの言い方に合わせるのであれば、ここまで大きな魔を持っていらっしゃる方を私は見たことがございません」


そう言ってキールはまたアキを向く


「アキさんと言いましたね。お約束しましょう。元々私ははぐれ者ですので人に手を出すつもりはございません。逆に・・・」


そう言ってまた少し目を開けるキール


「私は貴女がそこまでほれ込むボットと言う人に興味が出てまいりました」


そう言ってまた微笑み俺の方に向き直る


「さて・・・それでは、こちらにお掛け下さい。それで本日はどの様なご用件でしょうか?」


俺とアキは椅子に座って要件を話す


「あっ、すいません・・・アキが迷惑をおかけして・・・今回はこの子と一緒に住む家を探しに来たんです」


俺は条件を何個か挙げる


厨房まではいかなくても台所がある事や寝室が2つある事、後はそれに一緒に食べる部屋、つまりダイニングがある一軒家


「それでしたら・・・ここら等はいかがでしょうか?」


そう言って何個か物件の載った紙を出すキール


全て賃貸ではなく買い取りの物件ばっかりで買えなくはないが貯金の9割はとんで行ってしまう


普通の20歳が買える物ではないので勇者ジャックボットにいる事を考えて出してくれたのだろう


「うーん・・・買えなくはないんですが・・・」


「そうですね・・・冒険者の方は他の職業に比べ危険なお仕事で安定した収入も見込めませんのでローンも組め無いでしょうし・・・あっ、これならいかがでしょうか?」


と奥から違う紙を出すキール


だが・・・


「・・・これ、さっきより高くないですか?」


「はい、ですがここから半額にさせていただきます」


「えっ、半額ですか・・・」


国と繋がっているほど商人としての実力を持っているキール


そんな彼が簡単に半額で手放すとは思えない


キールは俺が何か考えてるのを察したかの様に話始める


「えぇ、この物件は少し問題がございまして・・・私としましても少し腫れ物扱いの物なのですよ。私としては行くのもあまり好まないので申し訳ございませんが、鍵をお渡ししますので一度向かって行かれてはいかがでしょうか・・・くれぐれもお気をつけて・・・」


そう言ってキールが出したのは古びた鍵だった

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