第17話 朝支度
「んん・・・もう朝か」
一緒に生活するに決まってから初めて迎えた朝
アキはあの後すごい楽しそうに俺が作った色んな料理を食べていた
あまりにも急いで食べようとするから
「おい、無理するなよ?いつでも食えるんだから」
と注意すると
「そうじゃな・・・えへへ!」
とても素直な、にやけ顔
そんなアキは横で寝ている
さすがに一緒のベットはどうかと思ったが
「今日だけじゃ!初めての誰かと一緒に寝るをやりたいのじゃ!!!」
とベットに潜り込んできた
・・・勿論、手は出してないぞ
「んんぅ・・・ボット、おはようなのじゃ・・・」
「あぁ、おはよう。良く寝れたか?」
俺はアキの髪を撫でる
「うむ、やっぱり起きて誰かがいるっていいもんじゃな・・・」
「そりゃ良かった。昨日の晩はいっぱい食べたし今日の朝は牛肉入りスープで軽く済まそうな」
俺の朝ごはんの誘いにアキの寝ぼけ眼がサッと覚める
「おっ!スープ!昨日の液体の料理じゃな!」
「ちょっと味付けは違うがな。ちょっと待ってろ。アキ、女将にお湯借りてくるから料理で厨房借りてる間、体を拭くだけでも・・・って人化のまま出来るのか?」
「うむ、前までは川で人の姿のまま行水しておったぞ。勿論、裸の姿にもなれるからな」
「へー便利だな。その服、どうなってるんだ?」
俺は純粋な質問をした
「この服か?体とくっついとるぞ。」
「は?」
えっ、服と体がくっついてんの?
「この服は龍の時の羽が元じゃからな!背中にくっついとるんじゃ。裸になるときはしまうだけじゃしな」
「なるほど・・・なら今日は用事があるから一緒に途中で服屋行って普段着を買いに行くか」
「良いのか!?」
「あぁ、服と体がくっついてるの誰かに見られたら人間じゃないと思われるかもしれないしな。アヤカがアキと同じ位の背丈なんだが、あいつのお気に入りの服屋の買い物に荷物持ちで行った事がある。寄ってみような」
「うむ!!!楽しみじゃ!!!」
アキは跳ねて喜んでいる
昨日の晩、寝る時にお話をせがまれたので俺は勇者ジャックボット時代の話をしたのでアキはアヤカの事を知っている
俺は4人の英雄のパーティに入っていたんだと言うと
「ボットは英雄じゃったのか!?」
とアキは目を輝かせる
「いや、俺以外の4人が英雄だったんだ」
「ん?仲間みんな英雄と言われてボットだけ違うってあり得るのかの?仲間から嫌われてたのか?」
「いいや。本当にいい奴らだった。ただ俺は鍛冶師や諜報、料理ばかりだから功績がまったくないんだ」
「なんじゃわかっとらんのー、人間は。あの料理は功績じゃろうに」
と慰めてくれた
いや、鍛冶の方が功績具合として多いはずなんだがな・・・
俺は女将に厨房を借りる事とお湯を借りた
昨日の寝る前に料理数も多く皿洗いも大変だっただろうから、少し多めのチップを渡しておいたので愛想よく用意してくれた
俺はそれを部屋で待っているアキのもとまで持っていき厨房で昨日の牛肉を玉ネギなど数種類の野菜で煮込んだスープを作る
調味料で味を調えて味見
「うん、美味しいな」
それを器に移して部屋の扉まで戻り声をかける
「入るぞー」
「うむ!ちょうど終わった所じゃ!おー、いい匂い!早く、早くなのじゃ!」
俺はさっぱりした顔をしているアキと向かい合って座る
「じゃぁ、いくのじゃ!」
「あぁ」
『いただきます』
アキのいただきますははち切れんばかりの笑顔だった
こういうのも良いな
俺はそう思いながら食事を始める
アキは朝ごはんのスープもお気に入りなようで
「美味いのじゃ!本当にすごい特技じゃ!」
と褒めちぎっていた
食事が終わり、荷物をまとめ俺らは宿を出る
まず行くべき所は不動産
さすがに1人ならずっと宿を転々でも良いだろうが、2人で暮らすとなると固定の場所が欲しくなる
無駄遣いは出来ないと言ったがここは必要経費だ
ジャックボット時代の貯金で買える、または借りれる物件を探しに行く
「まずはどこに行くんじゃ?」
「今から俺らの住む家を探しに行くんだ。ずっと宿だと毎回厨房を借りる時手間だからな」
「おぉー!寝床か!わらわは屋根のついた場所で寝るのも初めてじゃったし、布団とやらも初めてなのだが人間は良い発明をするな!龍族で人化できるのはわらわだけじゃから勿論使ったことなかったしボットと会って初めて尽くしじゃ!」
俺は他愛の無い話を嬉しそうにするアキを見つめながら、以前勇者ジャックボット時代に縁があった不動産の扉を開けた
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