第15話 報酬
俺らはギルドに戻るとまずマイに攫われていた女性をベットに寝かすように頼んで渡す
幸いヒールで止血をしたおかげで命に別状はないようだ
消毒して寝ている
「この子、ゴブリンの住処にとらわれていたんだ。地面に落ちていた血痕量からギルドに戻る暇がないと考えて助けに行ったがゴブリンキングとゴブリンの群れがいて・・・」
「えっ、ゴブリンキングと群れですか!?」
目を丸くするマイ
「ちょっと待ってください、それは本当なんですね?」
「あぁ、ほんと・・・」
「うむ、わらわもしかとこの目でゴブリンキングとやらを確かめたぞ!」
俺の言葉を遮ってしゃべるアキ
「この子は・・・」
「あぁ、近くの村に住んでいる子なんだが俺の料理が食べたいってついてきたんだ」
龍である事は内緒にしておくと町に入る前にアキと決めておいた
「えっ、ゴブリンキングが攫っただけじゃなくボットさんもこんな小さくかわいい女の子を攫って・・・しかも料理でつるって・・・」
「いや、俺は攫ってねぇよ!?」
勝手に俺まで誘拐犯になりかけて慌てて訂正するがマイは無言のジト目でこちらを見てくる
「心配しなくても大丈夫じゃ。わらわは1人で暮らして居るからちょっと遊びに来たまでじゃ!」
「そうですか・・・でも気を付けてくださいね。ボットさんは大丈夫だと思いますが、男って狼ですからね?」
・・・狼ごときじゃ深紅姫龍には勝てんだろうなぁ・・・
「あっ、そうだ、ゴブリンキングとゴブリンの群れでしたね!?すみません、すぐパーティ向け討伐依頼を出しておきます」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
俺はそういって鞄から紫の魔石を取り出す
「これは・・・?」
マイは魔石を見て数秒考えた後、ハッとした顔で俺を見る
「まさか・・・」
「あぁ、ゴブリンキングの魔石だ」
「えっ、もう討伐されたのですか!?1人で?」
「いや、倒したのはこっち。しかも俺は何もしてない」
俺はアキを指さす
アキはムフーと満足げな顔だ
「・・・いや、ボットさん。さすがにその嘘は無理ありますね・・・。素手の女の子1人でゴブリンキングを討伐は・・・」
「まぁ、そう思うわなぁ・・・」
俺も龍化するまでは無理だと思ってたしな
アキを見るとムスーとすねた顔をしてる
本当に表情豊かな奴だ
「アキ、拗ねるな。腕によりをかけて何でも作るからさ」
その言葉に目を輝かせて俺を見るアキ
「言ったな!約束じゃぞ!」
「あぁ、ちょっと後ろの椅子に座って待っててくれ」
俺とアキのやり取りを見てマイはクスっと笑う
「まるで親子ですね!」
「いや、俺まだ20歳!?せめて兄妹にしてくれ・・・これ、換金頼めるか?」
「分かりました!ゴブリンキングと群れをボットさんが討伐したと言う事もギルド内の報告版に載せておきます!ただ・・・」
マイは少し暗い顔をする
「なんだ?」
「実は、このゴブリンキングの討伐はクエストを通してされたものではないのでランク査定には入らないんです・・・」
「そうなのか?」
あれ、パーティの時はそんな事なかったはずなんだが・・・
「えぇ・・・今回Gランクのボットさんがゴブリンキング+ゴブリンの群れと言う、最低でもBランクのクエストをクリアした事で、本来ならそのBランククエストを受注できる最低ライン、つまりCランクの実力は最低でも持っていると考えられます・・・ですがそれを許してしまうと低ランクの方が一発逆転を狙ってクエストを通さずギルドの管理外で無茶な高ランクの魔物と戦いに行ってしまう可能性があるんです・・・」
「なるほどな・・・」
それは納得できる話だ
「もし、ボットさんがCランク以上でこのクエストを受けられる人であれば今回のアクシデントもBランククエストクリアとしてランク査定に入れる事が出来ますが、Gランクなので実力があっても無茶な討伐と取られ、ランク査定に入れることが出来ないんです・・・」
すみません・・・と謝るマイ
なるほど、勇者ジャックボット時代はすぐランクが上がったから途中であったトラブルもランク以下のクエストとして査定に入れてくれていたわけだ
勿論、勇者パーティを早くSにしたいと言う国の思惑もあったかもしれないが・・・
「いや、気にしないでくれ。人を助けられたし十分だ」
と言うかゴブリンキング倒したの本当にアキ1人だけでだし
「勿論、ランク査定は無くても魔石の報酬は出ます!あと受注されていた罠の依頼も成功させたと言う事で今、お金持ってきますね!」
マイは奥に引っ込み少し時間がたってからお金を持ってくる
「はい、ゴブリンキングの魔石が本物と確認されました!ではゴブリンキング金貨50枚と罠の依頼報酬小銀貨5枚ですね!!あと、ゴブリンの洞窟はもう群れが残っていないか依頼を出して確認しておきますのでもし分かったらご報告します!パーティ向け依頼になるのですが勇者ジャックボットの方で受けられますか?Sランクの方が受ける依頼ではないですが・・・」
ジャックの事だから王には解散を伝えただろう
だが普通の人はまだ知らない
俺が王なら解散は隠しておく
最強の国を守る門番がいなくなったなんてバレたら即刻攻めてきて戦争の恐れがあるからだ
マイには悪いが適当に流させてもらおう
「いや、ジャックは国の依頼で遠くにいてな。ジャックなら頼られたら喜んで受けるだろうが今回は他のパーティに任せるよ」
そう言って俺は机の上に置かれた金貨を30枚取って
「残りは貯金で」
とマイに渡す
この国は全て硬貨でやり取りが行われる
枚数によってはとてもかさばる
なのでギルドが銀行として預かる事も出来るし国が許可を出した団体に限り民間の銀行としての役割をになっていた
市民の平均月収は金貨30枚
今回の報酬は1か月半分のお金だが、1か月分の30枚あれば美味い物を食わして数週間の宿代にはなるだろう
勿論、今まではジャックボットでSランク任務をこなしてきてお金は困っていない方だ
ただパーティを解散してお金は大切にしなくてはならない
「了解です!いつもの口座に貯金しておきます!」
「あぁ、助かるよ」
そう言って俺はお金をしまう
「はい!また攫われた方が目を覚まされましたらお伝えします!個人情報になるので全てを伝えることはできませんが!」
「分かった。今日は帰るよ。じゃぁな、マイ。アキ、お待たせ。じゃぁ買い物行くぞ。何食べたい?」
「おっ、終わったかの!わらわは肉が食べたいのじゃ!」
龍はやっぱり肉食だわな
「分かった、じゃぁ買いに行こう」
俺はアキと一緒に買い物に行くためにギルドを出た
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