第10話 寄道
洞窟にはゴブリンが2体、棍棒を持って見張りをしていた
「ゴブリンが見張りを立てる何て珍しいな・・・」
ゴブリンは知能があるがゴブリン同士で上下関係等は生まれないし見張り等もたてたりはしない
過去ゴブリンがここまで統率されているのを見たのは数度だけ
「ゴブリンキングが産まれたのか・・・」
魔物の大半は魔力を持っていても魔法は使えない
それは言葉が発せられないから呪文を言えない、もともと知性がなさすぎて魔法に対する理解力が低いからとも言われている
だがどの種族の魔物でもずば抜けて知性が高い魔物が稀に産まれる事がある
実際に会ったことは無いが人間の言葉を発するのもいるらしく彼らは疑似魔法も使うとか
それを「(種族名)キング」と呼ぶのだが彼らにはある共通点があった
同じ種族の低級に命令し使役することが出来るのだ
今、洞窟に門番として見張っているゴブリンはゴブリンキングから命令されたと考えるのが妥当だろう
ゴブリン自体の適正冒険者ランクはFとかなり楽な部類だ
しかし群れになるとDまで上がるし、ゴブリンキング単体だとC、ゴブリンキング+ゴブリンの群れだと群れの数にもよるが最低でもBは行く
正直俺が一人で行けるか本当に微妙な所だ
現在の俺の状態を考えてみる
現在一人、敵の数は分からない、誰か攫われているならすぐ助けないといけないから時間もなく、このまま行っても勝てるかすら分からない・・・
「かなり厳しいな・・・」
俺が今使える魔法は
まず潜在魔法は判明していない、または生まれつき持っていない
習得魔法は
ジャックから教えてもらった ビルドアップと言う身体強化が小レベル
レナから教えてもらった アイスニードル・アイスウォールを中レベル
アヤカから教えてもらった ヒールが小レベル
リクから教えてもらった ストーンビルドと言ういわゆる錬金術の様な物が中レベル
後は一般人でも使える日常魔法として火をつけたり松明の代わりにもなるファイアーを小レベル
体や食器を洗ったりに使えるウォーターが小レベル
メンバーから教えてもらった魔法は皆大レベルが使えていたが俺にはこれが限界だった
身体強化はジャックの3分の1位の効果だったし、レナのアイスウォールは大と中の1レベルしか変わらないのに硬さも分厚さも範囲も全く違う同じ魔法と言うのも恥ずべき物だった
アヤカは骨折とか切断された腕もすぐに直せたが俺が出来たのは止血位だし、リクは要塞レベルの物を作れていたが俺が出来るのは家具位だ
さてどうするかな・・・
少し考え、ある程度の方向性が決まった
まず考えたのが相手に気付かれないように中に入る方法だがこれは駄目だ
洞窟なので中で敵にバレたら挟まれ窮地になる
なので攻略するなら全員殺さないといけない
殺しつつ進んで攫われた人間がいれば救助、いなければゴブリンキングの存在を確認したらそのままギルドに戻り報告
これが最善手だろう
「『集え精霊よ ビルドアップ』」
俺はビルドアップ小を唱え腰に差した短剣を手に取り見張りに気付かれない様に近づく
そして、かなり近づいたところで見張りの一匹にダッシュで近づき足払い
「ぐえっ!?」
足払いをされ視界が空のみになったゴブリンの目に次に映るのは上から振り下ろされる短剣
声を出せない様に喉に刺した短剣をねじり損傷を大きくした状態で俺はようやくこっちに気付いたもう一人の見張りに手を突き出す
「『集え精霊よ アイスニードル』」
俺の手からは小さい氷の槍が3つゴブリンに向かって飛び出る
子供サイズしかないゴブリンはそこまでの速度で走る事は出来ず全弾当たる
「ぎぁっ!?」
いくら氷でできた槍とはいえ中レベルの威力
1本のアイスニードルが脳に突き刺さりゴブリンは倒れる
俺はそこに間髪入れずに近づき片足で首を踏み声を出せない様にしながらビルドアップで得た力で首の骨を折った
すかさず喉に短剣を刺したまま倒れ苦しんでいたもう片方のゴブリンに戻り思いっきり頭を蹴る
短剣で喉、つまり首にかなり損傷を受けていたゴブリンの頭は何なく蹴り飛び絶命した
「ふぅ・・・一応Sランク任務でも自分の身を守れる位にはならないとって鍛えてはいたからな。ゴブリン2体程度相手なら遅れは取らないわな」
俺は短剣を拾いゴブリンの服で短剣の血を拭いて洞窟の中へと入った
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