第9話 接敵

マイが教えてくれた湿地にやって来た


マイ曰く薬草集めはお小遣い程度にはなる位は稼げるらしい


しかし薬草の見た目は普通の草と何ら変わらない


同じ草を沢山取っても実は薬草になるのは一部分だけ


それを避ける為にどうやって見極めるのか


「『集え精霊よ ウォーター』」


俺は手をかざし水魔法の中でも初級中の初級の物を唱える


すると手のひらから水が放出され始めその水を被った一部の草が光り始めた


「薬草は魔力を溜める性質があって魔力が含まれる魔法に光って反応するんだっけ?」


魔法使いが放つ魔法はその人自身が持っている魔力を変換する現象な為、普通の物とは少し変わる


今回出した水は普通の水ではなく少し魔力が混ざった水となる


この知識は実は様々な所に使われており1番身近なのは偽造通貨の防止である


レベルの高い魔法使いだと土魔法でそっくりな通貨が作れてしまうが、その通貨にはどうしても作った魔法使いの魔力が混じってしまう


魔法使いのそれぞれの魔力は向き不向きもあるし指紋みたいな物で誰1人同じ人はいないらしい


ちゃんとした店だと硬貨を置くとそれが正規ではない魔力が混じっており偽造かどうか判別する装置が常設されているし、偽造が分かれば魔力を調べて同じ人物を国が探す


つまり一種の抑止力になっているのだ


ちなみに呪文の時に魔法名の前につける言葉を始動呪文と言い「今から魔法を使いますよ」と自分に暗示をかける言葉になり、人それぞれ決めることが出来る


俺は「集え精霊よ」を始動呪文にしているが精霊がいるかは知らない


そして今の理論を当てはめると今回使ったのも俺が放った水には自分の魔力が含まれている


それを利用して薬草が俺の魔力を中に溜める時光るのでそれで判別する


そうしてしまうと薬草に俺の魔力が入ってるからポーションにも煎じた時に俺の魔力が混じっているのではないかと思うが、薬草は摘んだ後も蓄えた魔力を消費していくらしく煎じる時には空になっているとか


ポーションを飲んだ時、薬草の成分が飲んだ者の魔力と反応し自己治癒力の上げる効果になると言う事だ


人族・エルフ族・ドワーフ族・魔族、すべて多かれ少なかれ魔力を持って生まれてくる


勿論、持って生まれる量に差はあるが0と言う事はないらしい


「さてそこそこ集めたし、これ位でいいかな?」


薬草自体はそんなに高値で取引されているわけではないのに量を取ると結構かさばる


ランク査定も誤差の範囲なのでそこまで躍起になる必要はないだろう


「よし、今日は帰ろう・・・ん?」


草の中に何かある見つける


「これは・・・なんかの服の切れ端か?まだ乾いてない血も付いてるな・・・あっ・・・」


切れ端のあった所には靴も履いていない小さな無数の足跡と同じ方向に血痕


いくら村の子供でも靴は履く


間違いなく・・・


「ゴブリン・・・だな・・・」


足跡はゴブリンの物だが服の切れ端はゴブリンのではない


つまり・・・


「誰か連れ去られたのか?ゴブリンが人を連れ去るとか聞いたことないぞ・・・」


襲われた奴が死んでるなら放置するはず


この血がちぎれ落ちた服の切れ端についただけのゴブリンの返り血なら良いのだが、もし、この血が服の持ち主のでこの量の出血で連れ去られたとしたら・・・


「まだ血の乾き具合から言って生きてる可能性が高い・・・だがギルドに言って報告する暇はないな・・・」


さてどうしたものか・・・


「いや、ジャックなら何も考えず走ってただろうな」


俺は背負っていたバッグの側面にさしていた自分が鍛えた短剣を取り出し腰に差す


鞄の中身は薬草と昨日の夜ジャックボットのメンバーに作った料理の残りを入れた弁当のみ


身軽な方が良いに決まっているので忘れない様に気を付けながら置いていく事にした


俺はゆっくりと周りに気を付けながら足跡と血痕を追っていく


血痕の到着点は洞窟であった


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