第8話 初任務
「ふぅ・・・こんな感じかな?」
俺が受けた初任務は害獣駆除の罠仕掛けだ
ジャックといた時は害獣より人相手、魔獣・魔物相手の誰も引き受けたがらない任務を優先にすることが多く、そういう危険なクエストをこなすとランクの上がるのが早いと言う事もあり興味はあったが結局受けたことはなかった
実は冒険者にとっては初任務に持ってこいな物だったりする
魔獣は日夜動き回るが、イノシシやシカなどの作物を荒らす害獣は夜に荒らしに畑に来ることが多い
つまり昼に罠を仕掛けて置くことで比較的安全に達成でき、尚且つ初任務クリアの達成感も得られる
作物収穫期には一定数の罠依頼も来て初心者冒険者には重宝されるクエストだ
勿論Sランクパーティに在籍させて貰ったから害獣クラスに負ける事はないはずだし、いくら世間から金魚の糞扱いされてたとはいえ中レベル攻撃魔法を何個か使える上に今までの経験から言っても、もっと危険なクエストでも平気のはずだ
「でも、冒険者として最初のクエストとしての定番のこれを受けてみたかったんだよなぁ!」
いつもクエストを受けるときは命がかかっている様な物ばかりだった
1つ間違えたら仲間が死ぬかもとの恐れから相手を調べられるときには徹底的に調べ上げて地図がない場所なら1から作る位の事はやった
それはそれで自分しかやらないであろう結構面倒な作業だからやっていて忙しく充実はしていたが、心身共にかなり大変だった
相手を調べるためには敵に近づく必要も出てくる
時には部下に成りすましたり様々な方法で近づくがバレたら死が問答無用で待っているのだ
「こうやって平和な時間もいいよな・・・よし!おばちゃん、罠仕掛け終わったぞ!危ないから畑に子供とか近づけないようにな!確認してくれたらクエスト達成のサイン頼むわ!」
俺は依頼主である畑の持ち主のおばちゃんに話しかけた
「ありがとうねぇ!この前、旦那が亡くなったばかりで罠を仕掛けるのも一苦労でね・・・うん、完璧だね。ほら、依頼完了のサインだよ。ご苦労さん!」
依頼主からサイン付きの依頼書を受け取る
「そっか・・・大変なんだな・・・元気出してくれよ?」
「あはは!子供の為にも落ち込んではいられないよ!あんたもこんな安い依頼を受けるって事は始めたばかりじゃないのかい?気を付けなよ?最近、ゴブリンの群れが近くにあるって噂だからね・・・」
ゴブリンと言うのは人間ほどではないが知性のある魔物である
武器を自作し簡易ながら服も着る
人を攫ったりする事は無いが食べ物を奪うために襲い殺す事はある
魔物の中では低ランクではあり1体なら普通の冒険者1人でも何とかなるが群れとなるとそうもいかない
彼らは結構タフなのだ
魔法を放つ回数には人それぞれ限界があるし、剣で戦おうとも数体切れば血で切れ味が落ちる
だから普通はパーティに任せる案件のはずだ
「そうか、おばちゃんありがとうな!」
おばちゃんは俺の事を知らない
まぁ新聞に載る写真もいつも他のメンバー4人だけだったしな
だから素直な心配からくる忠告だった
それが俺には嬉しかった
勇者ジャックボットがSランクになってから受けるクエストはとても難易度が高いのに「Sランクなら出来て当たり前」「失敗するクエストはない」と言う空気ができていた
誰も忠告や心配はしなかったし、クエスト成功してもその成果の程度によっては鼻で笑う奴もいた
冒険者の中には勇者であるジャックを妬む奴は多かったし、実力もないのにと俺を妬む奴もいた
パーティが有名になって良い事も多かったが全部が全部良かった訳でもない
「俺は今、新しい冒険者の1歩を踏み出したんだな!」
なんかワクワクしてきてる
ギルドのクエストには一時クエストと常駐クエストがある
一時クエストとは今回の罠仕掛けの様に依頼人が困ってる時に一時的に冒険者を頼み、それを見て冒険者が参加申請するクエスト
常駐クエストとは常に必要としているから誰でも申請をせずに参加できるクエストの事である
例えば薬草探しなんかが当てはまる
薬草は煎じるとポーションになる
これは品質によって程度は変わるが自己治癒能力を上げるもので回復魔法が使えない冒険者にとっては必需品となる
つまりギルドからすればいくらあっても困らない物なのだ
こういうクエストは参加申請をしなくてもたまたま薬草を手に入れギルドに渡すだけで買い取って貰えて本当に微量ではあるがランク査定にもなると言うとてもお手軽な常駐クエストとなっている
「確か今回の依頼できた村の近くに薬草が生えやすい湿地があるとかマイが言ってたような・・・」
とにかく今は少しでもランクを上げないとGのままでは安いクエストしか受けられない
俺は薬草を探しに寄り道をする事にした
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