第2話 解散

「なっ、何かジャックボットに問題でもあったのか?」


「・・・俺が勇者の素質を見いだされ、数人いる勇者候補から勇者になった。盗賊や人災などは勿論、魔物や災害からも幾度となく人々を守って俺ら4人は英雄と呼ばれるまでとなった」


そう、英雄扱いは俺を除く4人だけ


俺は役職が鍛冶と言う事で武器の鍛冶・修理が終わればやる事は敵の情報収集や料理・その他雑用が大半で戦闘時は隠れて状況を分析し、メンバーのみ伝わる意思疎通魔法道具で指示を出すのみ


国や国民からすれば俺は金魚の糞に見えてしまうって事だ


実際国からの恩賞はいつも4人だけだったし、式典などには俺は呼ばれなかった


新聞にメンバーとして名が出るときは皆は大文字で出るが俺は小さく読み飛ばされても仕方ない程度の大きさ


それでも俺が立ち上げて育てたこのパーティの為なら全く悔しくもなかった


メンバーは誰一人邪険にする事もないどころか、いつも恩賞を分けようとしてくる


後からアヤカから聞いたがジャックは鬼の形相で「ボットが恩賞式典に呼ばれないとはどういうことですか!?」と招集に来た勅使を問い詰めたらしい


俺はどんだけ世間から金魚の糞と見られようがこれだけで幸せだった


だが、ジャックは違ったらしい


「お前の事で国の対応に不満がある」


「お前なぁ・・・」


宥める俺を無視しながらジャックは続ける


「俺は散々ボットの優秀さを世間に説いてきた。性格が違うスペシャリスト5人をお前が上手く纏めてくれて、パーティの為にやったことのない料理を必死に練習し俺らの体調を考え、魔石集めや交渉、その他の雑用・敵情報の入手など万全の準備を自ら進んでしてくれた。勇者だから俺が目立つがこのパーティの頭脳であり軸は間違いなくボット、お前なんだ・・・」


あっ、やばい、泣きそう・・・


そうなのだ、ジャックは「彼が居なければこのパーティは一瞬で壊滅する。彼こそがこのパーティの主なのだ」とマスコミにも言って庇ってくれた


マスコミはそれを「勇者の親友メンバーを守るためについた嘘」と捉えて勇者のやさしさを報じていたし、実際俺もパーティに居やすいようにしてくれているんだと思った


何せ俺にはジャックのような戦闘力はないのだから


それでもこのパーティが好きで5年頑張ったつもりだし他人に何と言われようが気にしなかった


だがジャックは吠える


「何故、パーティメンバー以外誰も信じてくれない!?散々マスコミに取り上げられてこちらの技や癖・戦術までも全て敵に筒抜けだろうに何で勝てているのか。それはボットが向こうに知られている以上にこっちが敵を知るように情報収集してくれているからじゃないか!?」


ジャックは震えながら続ける


「もう疲れたんだ・・・やればやるほどボットが馬鹿にされる仕事に。そして馬鹿にしている国民含めて守らなくちゃいけない使命にも・・・別に俺は勇者の素質があっただけで勇者になりたかった訳でもない。勇者になるまではとにかく仲間と努力するのが楽しくて、勇者に選ばれても頑張ったのは5人の努力が実を結んだのが嬉しくてここまで来たんだ」


ジャックは机の上に置いていた手を握りしめる


「もう勇者にならせて貰った国民への恩はここ数年何度も世界を救って返したつもりだ。これからは20歳になってやりたい事をやる・・・幸い国からの恩賞でお金はあるからな」


「今までの名誉を捨ててでもやりたい事なのかよ・・・」


「あぁ、まだ何をやるかは言えないが、成功して必ずボット含め4人の為になる事をする。今考えたら同じ国民で1番俺が迷惑をかけてきた4人に恩返しできてないもんな!」


ジャックはニッと笑う


「今までありがとうな、親友・・・いや相棒よ!」


そう言って出してきた手は決意にあふれていた


「俺のことなんて気にしなくても良かったのにな・・・本当にお前は・・・相棒、ありがとうな・・・」


俺はジャックの手を握って俺ら『ジャックボット』の解散が正式に決まった

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