続・水槽の夢【3:2:0】45分程度

男3人、女2人

45分程度


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中野浩史(なかの ひろし)

23歳。大学卒業後、社会人となり営業職をしている。

最近、同じ夢を頻繁に見ていることが気になっている。崇史の双子の弟。


世田春樹(せた はるき)

32歳。浩史の先輩で、一緒に営業回りをしている。

面倒見のいい性格で、浩史を気にかけている。

関連作品:遠い夏のラブレター


中野崇史(なかの たかし)

23歳。大学時代に親友を亡くしている。

夢乃、雪乃とは同じ大学で仲が良かったが、親友が亡くなった後、疎遠になった。大学卒業後、社会人として働いている。浩史の双子の兄。


神崎雪乃(かんざき ゆきの)

23歳。大学卒業後、社会人として働いている。

崇史に想いを寄せていたが、今は疎遠になっている。

夢乃の面倒を見ながら生活している。夢乃の双子の姉。


神崎夢乃(かんざき ゆめの)

23歳。好きな人が亡くなってから家に引きこもるようになった。

大学は休学中で、雪乃と一緒に暮らしている。雪乃の双子の妹。


御堂真(みどう まこと)

※本当の名前は御堂実(みどう みのる)

崇史、夢乃、雪乃と同じ大学に通っていた青年。頭が良く実家は裕福。

同じ夢を見るようになり、夢日記をつけ始めることで、忘れていた記憶を取り戻し、後悔から自殺した。


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「続・水槽の夢」

作者:嵩祢茅英(@chie_kasane)

浩史♂:

世田♂:

崇史♂:

雪乃♀:

夢乃♀:

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浩史「今日も同じ夢を見る。


男がしきりに謝っている、そんな夢。

その男は悲しげに俯き、『自分のせいで申し訳ない』と、何度も何度も頭を下げた。

その表情は、見ているこっちまで悲しくなるような、胸が痛くなるようなものだった。」


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浩史「世田せたさん、同じ夢を見ることってあります?」


世田「ん〜?…子供の頃はそういう夢も見た気がするけど…

最近は夢自体見ないなぁ、忙しすぎて!…てか、いきなりどうした?」


浩史「…最近、同じ夢を見るんスよ。

同い年くらいの男が謝ってる夢。

最初は週に一回とか…最近は週三か週四くらい」


世田「ふーん。で、気になってると」


浩史「最初はただの夢だと思ってたんスけど…ここまで続くと気になるじゃないスか」


世田「お前ってそういうスピリチュアルなの、好きな奴だったっけ?」


浩史「いや、否定派なんスけど…」


世田「うん、そっか。でもな、そういうのって、本当にあるんだよ」


浩史「…そういうの?」


世田「科学では説明がつかないようなこと」


浩史「世田せたさんって、そういうスピリチュアルなの好きでしたっけ?」


世田「好きっていうか…信じてる。

そういう世界があるって、そう思ってる」


浩史「案外子供っぽいとこあるんスね」


世田「なんだよ、バカにしてるような言い草だな」


浩史「そんな事ないっスよ〜」


世田「うわ、もう昼飯奢ってやらねぇ」


浩史「なんでっスすか!こんなに慕ってんのに〜!」


世田「はははっ、やめろ、ウザい〜」


浩史「ひっでぇ!!」


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浩史「ただいまー」


崇史「おかえり。遅かったじゃん」


浩史「会社の先輩と話してて。あれ、親父達は?」


崇史「ばーちゃんが危篤らしくて。二人とも病院に行った。

何もなければ明日の朝に帰ってくるって」


浩史「そうなんだ…ばーちゃん大丈夫かな…」


崇史「歳だしなぁ…あ、お前メシは?」


浩史「食ってきた」


崇史「あ、そ」


浩史「疲れたからフロ入って寝るわ」


崇史「なぁ、浩史ひろし


浩史「んー?」


崇史「何かあったら、話くらい聞くぞ」


浩史「何だよそれ、何もないよ」


崇史「何もないならいいけどさ。

一人で抱え込むような事はしないでくれよ、頼むから…」


浩史「…分かってる。サンキュ」


崇史「…おう」


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浩史「その晩も、夢を見た。

何度も見ている夢。

男はすでに泣き崩れ、か細いけれど、それでもしっかり聞こえる声で、何度も何度も謝っている。


『ごめん…ごめんな…俺のせいだよな…俺のせいで…』


そんな言葉を繰り返す男に、何も言えなかった。

お前は誰なんだ、なんで謝ってる?

そんな事を思いながら、ただ男を眺めていた。」


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崇史「お、ハヨ。昨日寝るの早かったくせに起きんの遅せーな」


浩史「んー…夢のせいであんまり寝た気がしない…」


崇史「(何か思うように)…夢?」


浩史「そう…なんか最近、同じ夢見んだよなー」


崇史「………」


浩史「…?どした、そんな怖い顔して?」


崇史「その夢のこと、気になってンのか?」


浩史「夢の頻度が尋常じゃねーんだよ。気にするなって方が無理なくらい…」


崇史「夢は夢だ!気にするな、忘れろ!」


浩史「はぁ?なに必死になってんだよウルセーな」


崇史「心配してんだよ…

お前まで…いなくなるなよ…絶対に!」


浩史「…」


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浩史「崇史たかしは大学の頃、親友を亡くしている。

詳しい事は知らないが、自殺だったらしい。

俺たちは元々そんなに仲のいい兄弟じゃなかったが、その件以降、崇史たかしはやたら話かけてくるようになった。

最初はウザかったけど、いつまでも仲の悪い兄弟ってのもなんだ、反発しあってたのも、互いに子供だったからだと、今ではそう思う」


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雪乃「ただいまぁ〜…って、電気も点けないでどうしたの?!」


夢乃「雪乃ゆきの…おかえりなさい」


雪乃「ユメ、また眠れなかったの?」


夢乃「うん…」


雪乃「そう…そうだ、お腹は空いてる?」


夢乃「ううん…」


雪乃「少しずつでも、食べなきゃダメよ?あれからろくに食べれてないんだし…」


夢乃「ユキちゃん…」


雪乃「ん?」


夢乃「ごめんね…」


雪乃「どうしたの、急に」


夢乃「私、ユキちゃんに甘えてばっかり…ずっと家に引きこもって、何もできてない…」


雪乃「いいのよ…無理はしないで。今はもっと…

そうね。ちゃんとご飯を食べて、夜ゆっくり眠れるように。それだけを考えて」


夢乃「…私、雪乃ゆきのの足、引っ張ってない?邪魔じゃない?

…こんな妹、要らなくない?」


雪乃「何言ってんの!要るに決まってるじゃない!!

私たちは産まれた時からずっと一緒だった!

…私から離れるなんて、許さないんだから!」


夢乃「うん…」


雪乃「ユメ?ユメが辛いのは、私も分かってる。

でも、時間が経てば、少しずつ楽になるはずだから…」


夢乃「楽に…」


雪乃「…」


夢乃「まことはさ、なんで死んじゃったんだろう…」


雪乃「…」


夢乃「だって、あの日の朝まで普通通りだった。優しかった。

私、まことが死んだって、受け入れたくなくて…それでっ…」


雪乃「うん…」


夢乃「なんで死んじゃったの?まことまことぉ…」


雪乃「ユメ…今日はもう寝よう?薬はある?」


夢乃「うん…。…ねぇ、ユキちゃん…」


雪乃「なぁに?」


夢乃「眠るまで、手、繋いでいてくれる?」


雪乃「いいわよ。待ってて、水を持ってくるから」


夢乃「…あのね…」


雪乃「…ん?」


夢乃「夢の中なら、楽しくいられるの。みんなで。…四人で。」


雪乃「ユメ…」


夢乃「…」


雪乃「…」


夢乃「…っ、ごめんね、こんな話して!お水、ありがとう。

じゃあ私、部屋に行くから」


雪乃「…っ、夢乃ゆめの!」


夢乃「…なに?」


雪乃「あ……着替えたら、すぐ行くから」


夢乃「うん。ありがと、ユキちゃん」


(夢乃、自分の部屋に戻る)


雪乃「………はぁ…私に出来ることって、何もないんだなぁ…嫌になっちゃう…」


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浩史「(あくび)ふぁ〜…」


世田「でっけぇあくびだなぁ?シャキっとしろよ〜?これから営業回るんだから」


浩史「(眠そうに)は〜い…」


世田「なんだ、最近眠そうにしてるけど、寝れてないのか?」


浩史「ん〜…そっスねぇ…」


世田「はぁ…(ため息)、原因はなんだ、ゲームか?テレビか?それともYouTube?」


浩史「(笑いながら)YouTubeって」


世田「最近の子はテレビよりYouTube見てんだろ?」


浩史「最近の子って…オッサンみたいっスよ、発言が」


世田「んだよ、三十すぎたらオッサンだろ、若い子から見たらさぁ」


浩史「自虐は良くないっスよぉ。それとも誰かに言われたんスか?」


世田「別に自虐じゃねーけどよ、まぁ、それは置いといて、だ。

何か悩んでるなら話くらい聞くぞ?」


浩史「ははっ」


世田「おい!真面目に言ってんの!」


浩史「すいません…でも、ははっ、同じ事言われたなーって」


世田「同じこと?」


浩史「俺、双子の兄がいるんスけど、何かあったら話くらい聞くぞーって」


世田「ふーん、そっか。いい兄ちゃんじゃん」


浩史「いや、そうでもないっスよ。少し前までろくに口も利かなかったんで」


世田「そうなの?」


浩史「はい」


世田「でも今は話すようになったって事だろ?」


浩史「そっスね」


世田「何かきっかけでもあったのか?」


浩史「あー…まぁ。」


世田「あ、聞いちゃマズイ事だった?」


浩史「いや、まずくはないんスけど…

兄の親友が亡くなってから、やけに心配されるんスよ」


世田「あー…そっか…まぁ兄弟ってさ、てか家族なら、心配はするんじゃないかな。

仲が悪いって言っても、嫌いって事じゃないだろうし」


浩史「んー、そうっスね…

前はろくに話さなかったけど、別に理由がある訳じゃなかったし…

なんとなく、避けてたっていうか…」


世田「みんなそんなもんだよ」


浩史「そんなモンなんスかね」


世田「で、だ。なんでそんなに眠そうなんだよ?」


浩史「あぁ…えっと、この前、同じ夢を見るって言ったじゃないスか」


世田「あぁ、言ってたな」


浩史「…ここんとこ、毎日見るんスよ」


世田「…え?」


浩史「同じ夢。毎日。んで起きて、そのまま眠れなくて」


世田「そっか…なんなんだろうな…

でも生活に支障が出るようなら寝れるように薬使ってみるとか、そういうのも検討した方がいいんじゃないか?」


浩史「…そう…ですね…」


世田「とりあえず俺運転するから、隣でゆっくりしてろ」


浩史「…ありがとうございます」


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浩史「気がつくと、そのまま眠りに落ちていた。

…またあの男が謝っている。

いつもの夢と違ったのは、その男が俺の腕を掴んで


『俺のせいでバラバラになったあいつらを…』


と言ってきたことだった。」


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浩史「…っ!はぁっ、はぁっ、はぁっ…!」


世田「お、おい、大丈夫か?車出してすぐに寝たから起こさなかったんだけど…」


浩史「(呟くように)俺に、どうしろって言うんだよ…」


世田「え?」


浩史「あ…すいません…夢の話…」


世田「男が、謝ってる夢?」


浩史「はい…それが…『バラバラになったあいつらを頼む』って…腕掴まれて…」


世田「…(ため息をついて)お前、もう帰れ」


浩史「…え…仕事は…」


世田「そんなんじゃ仕事にならねーだろ?送ってくから」


浩史「え、でも…」


世田「あのな、体壊したら仕事もできねーぞ?

あ、薬局寄ってから、お前んちまで送る。会社には電話しとくから」


浩史「…すいません…」


世田「ばーか。そこは『ありがとうございます』だろ?」


浩史「…ふ、ありがとう、ございます」


世田「おう」


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世田「…っ(浩史と崇史の顔を交互に見て声にならない)」


崇史「どうも、浩史ひろしの兄の、崇史たかしです」


世田「本当に、同じ顔なんだな…」


浩史「まぁ、双子なんで。一卵性の。

ってかなんで家にいんの?仕事は?」


崇史「今日遅番なんだよ。で、なに?具合悪いの?お前」


世田「あ、その事なんだけど」


崇史「?」


世田「中野、これ。市販薬だけど」


浩史「え、薬局寄ったのって、これ買ってたんスか?」


世田「うん。お前はとりあえず寝ろ。

崇史たかし、くん?ちょっと話、いいかな?」


浩史「出た、おせっかい」


世田「うるせ。水も入ってるから、さっさと着替えて寝てろ」


浩史「はーい」


崇史「やけに素直じゃん」


浩史「知らなかった?俺って素直ないい子なんだけど」


崇史「はぁ?」


浩史「先輩」


世田「ん?」


浩史「ありがとうございます。でも崇史たかしと話って…」


世田「いいから」


浩史「…」


崇史「俺はいいっスよ。仕事までまだ時間あるし」


世田「そう、ありがとう」


崇史「上がってください。お茶でいいですか?」


世田「構わないよ、ありがとね」


浩史「あ、あのぉ…」


世田「はいはい、おやすみ」


浩史「〜〜〜っ!おやすみなさい!」


崇史「………ふ」


世田「ん?」


崇史「いや、あんな弟、見たことないっスよ。

世田せたさんのこと、本当に慕ってるんだなって」


世田「そう?それなら嬉しいけどね」


崇史「…で、話ってなんスか?」


世田「あぁ…最近、中野が同じ夢を見てるって、聞いてる?」


崇史「…聞いてます。…でも夢は夢でしょ。深く考えない方がいいと思ってます」


世田「その夢でろくに寝れてないみたいなんだ」


崇史「そう…なんですか」


世田「知らない男が謝ってくる夢だって」


崇史「…」


世田「『俺のせいでごめんな』って。」


崇史「…」


世田「それが、さっき車の中で見た夢は違ったんだって」


崇史「…違った?」


世田「いつも謝ってる男が『俺のせいでバラバラになったあいつらをどうにかして欲しい』って頼んできたそうだ」


崇史「バラバラになった…」


世田「心当たりはある?」


崇史「あの…」


世田「ん?」


崇史「…俺、大学の時に親友を亡くしてるんスよ。

そいつも、同じ夢を見るって言ってました。

で、夢の内容を書く、『夢日記』ってやつをつけ始めたんです。

『夢日記を書くと、良くないことが起こる』って、聞いたことないですか?」


世田「さぁ、初めて聞いたな」


崇史「そいつは、夢日記を書いたから死んだんです」


世田「そう、言ってたの?」


崇史「いえ。でも俺はそう思ってます」


世田「だから中野の夢のことも、放っておいた方がいいと?」


崇史「……そう、思ってました。今の話を聞くまでは」


世田「うん。何か、心当たりがあるんだね?」


崇史「…大学で仲良くしてた友達がいて…でも、親友が死んでから疎遠になりました。会ったら思い出すから…」


世田「そっか…その、亡くなった子の写真とかある?」


崇史「…あります」


世田「中野が起きたらさ、見せてあげてくれないかな?」


崇史「…浩史ひろしの夢に出てくる男が、そいつだと?」


世田「そうなんじゃないかなって。そう考えると辻褄つじつまが合うから」


崇史「…」


世田「気分を害したならごめんね」


崇史「あ、いや…」


世田「人の想いってさ、残るんだよ。想いが強ければ強いほど」


崇史「…オカルトですか」


世田「そういうの、信じないタイプ?」


崇史「そっスね。霊とか見たことないんで」


世田「霊だ、って気付いてないだけかも知れないよ」


崇史「急になんスか、怖い話?」


世田「いやいや、そうじゃなくて。

胡散うさん臭く感じるかも知れないけどさ。

そういう可能性もあるってこと」


崇史「…可能性スか」


世田「あ、ごめん。話しすぎたね、そろそろ戻らなくちゃ」


崇史「あ、浩史ひろし、わざわざ送ってくれて、ありがとうございました!」


世田「あはは、いいよ。あ、これ俺の名刺ね。

何かあったらかけてきて。携帯の番号も書いてあるから」


崇史「ありがとうございます」


世田「それじゃ、お邪魔しました」



崇史「可能性、か…」


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崇史「あ、もしもし?」


雪乃「…もしもし」


崇史「雪乃ゆきの?今、電話大丈夫?」


雪乃「大丈夫だけど…どうしたの?急に」


崇史「うん…あのさ…」



雪乃「ふぅ〜ん…で、アンタはどうしたいの?」


崇史「…なんか、分からなくなっちゃって…」


雪乃「…やれることがあるならさ、やってみれば?

やらないでモヤモヤしてるより全然いいと思うけど?」


崇史「…ん、だよな…」


雪乃「迷ってんじゃないわよ、アンタらしくない!

繊細ってキャラでもないでしょ?」


崇史「…ふ、ウルセー。…ありがとな」


雪乃「うん。何か分かったら、教えて?」


崇史「ん。じゃ、また」


雪乃「うん、また」


(電話が切れる)


雪乃「…また、か…」


夢乃「…ユキちゃん?」


雪乃「わ!…ユ、ユメ?どうしたの?」


夢乃「あ、ビックリさせてごめん…誰と電話してたの?」


雪乃「あ、あぁ、崇史たかしがね」


夢乃「崇史たかし?」


雪乃「うん、なんか悩んでるみたいで、相談」


夢乃「そうなんだ…」


雪乃「あ、そうだ、ユメ、お腹空いてない?」


夢乃「んー…」


雪乃「ヨーグルトあるよ」


夢乃「じゃあ、ヨーグルト食べようかな」


雪乃「うん、用意するから着替えておいで」


夢乃「ユキちゃん」


雪乃「ん?」


夢乃「ありがとね」


雪乃「…うん」


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浩史「薬のおかげか、その日は久々に夢を見ることなく、夜中まで寝続けた。

起きると崇史たかしが仕事から帰ってきていて、ある写真を見せられた。

そこには見慣れた顔があった。毎日夢に出てくる男が、写っていた。

その男は、例の、大学の時に自殺したという人だった。」


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崇史「あ、雪乃ゆきの?」


雪乃「もしもし、崇史たかし?」


崇史「弟の夢の件だけど、」


雪乃「うん」


崇史「…まことだった」


雪乃「…マジ?」


崇史「うん。でさ、まことの実家に行ってみようと思うんだけど」


雪乃「そう…」


崇史「お前らはどうする?」


雪乃「そうね…私は行くとして、ユメがどうするか…」


崇史「…うん」


雪乃「これ以上、ショックを受けさせたくないの」


崇史「分かってる」


雪乃「とりあえず、まことの実家の番号調べて、いつ行くか調整できるようにしておいてくれる?」


崇史「分かった」


雪乃「ありがと、それじゃあ、また」



夢乃「ユキちゃん!」


雪乃「っ!夢乃ゆめの?!」


夢乃「今っ、まことの実家って、言ってたよね?」


雪乃「あ、あの…」


夢乃「行くの?!崇史たかしと!」


雪乃「あ、あのね…」


夢乃「私も行く!」


雪乃「……え?」


夢乃「私も!まことの実家!行く!!」


雪乃「え、ちょ、大丈夫なの?」


夢乃「私ね、なんでまことが死んじゃったのか、ずっと考えてた…私のせいなのかな、とか…」


雪乃「そんな事、ある訳ないじゃない!」


夢乃「うん。だから、ちゃんと知りたいの!まことのこと!」


雪乃「ユメ…」


夢乃「ダメって言っても、着いてくから!」


雪乃「…言わないわよ」


夢乃「ほんと?」


雪乃「うん、みんなで一緒に行こ?」


夢乃「うん!ユキちゃん、ありがと!」


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夢乃「そうして、まことの実家に行った私たちは、まことの両親から話を聞くことができた。

仏壇には同じ顔をした、二人の小さな男の子の写真が置いてあった。


まことの両親から聞いたのは、

まことの本当の名前は『みのる』だということ。

まことという名前の、双子の兄がいたこと。

小さい頃、家の階段から落ちて、その兄が亡くなったこと。

それから、みのるは『まこと』として振る舞うようになったこと。

みのるは寂しがり屋で、いつも兄と一緒にいたことから、兄を亡くしたショックでそうなったのだろうということ。※

それから、みのるの物を処分し、二人で映っている写真を隠したということ。


まことは、兄のことを思い出して、死を選んだのだろうか…」


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世田「あ、中野か?体調どうだ?」


浩史「ありがとうございます、もう大丈夫です。詳しくは明日、話しますね」


世田「お、明日は会社来れんのか?」


浩史「はい。…もうあの夢は、見なくなりました。」


世田「そっかそっか、良かったな」


浩史「はい。……世田せたさん」


世田「ん?なんだ?」


浩史「ありがとうございます」


世田「なんだよ改まって。気持ち悪いな」


浩史「ひっど!素直に感謝してるんスよ」


世田「おう。じゃあ明日、会社でな」


浩史「はい!」


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(真の墓の前で)


夢乃「ねー、ユキちゃーん!」


雪乃「ん、なに?」


夢乃「お花、長くて不安定~!」


雪乃「ハサミ持ってきたから、余分なくき切って。

あ、切ったら輪ゴムで縛り直してね?」


夢乃「はぁ〜い!」


崇史「ビール置いて、もう線香に火着けていいか?」


雪乃「いいわよ、気をつけてね?」


崇史「わーてるって!」


夢乃「ユキちゃん、ハサミありがと!」


雪乃「ん」


崇史「ふー!ふー!(線香についた火を吹いている)

ほれ、これ夢乃ゆめのの分」


夢乃「ありがと、崇史たかし!」


崇史「んで、こっちが雪乃ゆきの


雪乃「サンキュー」


崇史「で、俺のも…(しゃがんで墓前に線香を供える)よいしょ…ん、これでヨシ!」


雪乃「じゃあみんな手、合わせて」



夢乃「やっとお墓参りできたね」


雪乃「そうね」


崇史「これから毎年来ようぜ!」


雪乃「そうね!」


夢乃「まこと、これでもう大丈夫かな。天国に行けるかな」


崇史「さぁなー。でも、もう心配はしてねぇんじゃねーの?」


雪乃「そうだといいわね」


夢乃「…私、復学する!」


崇史「おっ!」


雪乃「大丈夫なのー?」


夢乃「大丈夫!いつまでもこのままじゃダメだもん…

ちゃんと卒業して、私も働く!」


雪乃「…うん。応援してる」


崇史「おし、じゃあ帰るか〜!」


夢乃「ねぇ、いい天気だし、どっか寄ってかない?」


雪乃「いいわねぇ!」


夢乃「えへへっ」


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以下

雪乃→幼少期、真

夢乃→幼少期、実

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真「大きくなったら、何になりたい?」


実「大きくなったら…?うーん…まことは?まことは何になりたいの?」


真「宇宙飛行士になって、宇宙に行く!」


実「えー!じゃあ僕も!」


真「宇宙飛行士になるには、たくさん勉強しないといけないんだぞ!」


実「そうなの?勉強は嫌だなぁ…」


真「じゃあ僕がみのるの勉強を見てあげる!」


実「ほんと?!」


真「だから、一緒に宇宙に行こう!」


実「うん!まことと一緒に、僕も頑張る!」


真「約束な!」


実「うん!約束!」


二人『ゆーびきーりげーんまーん


うーそつーいたーら


はーりせーんぼーんのーます!


ゆーびきった!!!


…ふふっ!』


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補足


※兄を亡くしたショックではなく、兄を殺したショック

 兄を殺したことを思い出して自殺した

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水槽の夢シリーズ 嵩祢茅英(かさねちえ) @chielilly

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