第12話夜が終わり新たな一日 4/4

旧校舎から僕達が出た頃には辺りを静寂が支配していた。街灯のほのかな明かりだけが灯り、朝とはまた違ったレスタの風景が僕達に映る。


「クソッ、魔獣の体液やら汗やらで酷い匂いだ」


「洗濯物が増えたな」


「お前らさぁ、もっと大変だとか考えろよ。貰って2日でボロボロとか冗談にもならないぜ」


「ルイスの言うとおりですよ。予備があと2着あるとはいえ、制服の損傷はどうにかしないと」


僕等が悩んでいるときに声を上げたのはリオンさんだった。何時もの無表情だったけど、軽く笑っている様にも見える。


「なら、俺にかせ。全員分を完璧な状態にしてやる」


「良いんですか?!」


リオンさんの申し出は有り難いけど、流石に全員分となると大変だろうし、僕も手伝った方が良いのかな?


「良いのかリオン?」


「構わない、ただコレは貸しだ。踏み倒す事は許さないからな」


「このユリウス・フォン・ローエングリン。約束を違える事はしないと誓おう」


「僕もです、でも大きくはないですよね?」


「まぁ、リオンならそこまでの事はしないだろう、、、だよな?」


ルイスがリオンさんの顔色を伺う感じだけど、リオンさんは軽く微笑んで僕達に向けて言葉を告げる。


「速く居室に戻って着替えろ。今着ている制服は居室の前に出しておけよ、回収しておく」


リオンさんの言うとおりに各自居室に戻った。鍵はしまっていたけど、皆合鍵は持っているし問題ない。ただ、女子達に気付かれない様にするのが大変だったかな。寝間着を着替えたら眠気が激しくなったけど。


「リオンさん頼みます」


他に聞こえない様に目の前にいるリオンさんに話しかける。


「律儀だな、他の奴は直ぐに寝たぞ」


「一様、頼んでますので筋は通すべきだと思いました」


「ふっ、わかった。だがお前も疲れているだろう。今日は眠れ、じゃあな」


男の僕から見てもリオンさんは格好良い。1つ違いのはずだけれど、10歳以上離れたお兄さんって感じがして離れない。僕は言われたらとおりにベッドに横になる。直ぐに目蓋が重くなり、僕は深い眠りについてしまった。





「兄様、遊びましょう!」


「****全く、淑女らしくできないのかい?」


「良いの!魚釣りも乗馬も楽しいもの!」


「こら****、レーヴェ、あまり離れるな」


「シー姉様のケチ!」


「こら!」



懐かしい日々の記憶が蘇る。楽しかった日々、もう来ないとわかっていて悲しい日々が。


「失うぞ」


「、、、」


僕は何も言い返せなかった。



ピピッピピッピピッピピッ


「んぅあ」


鳴り続ける目覚し時計を止めて鏡の前に行く。何か夢を見ていた気がするけど、どんな夢だったかが思い出せない。


「あれ?」


そこで僕は気づいた。鏡の前に昨日着ていた制服がおいてあったんだ。汗臭くも無く、傷も跡が残らないレベルで消されている。まるで新品みたいだ。


「ありがとうございます、リオンさん」


僕は着替えを持って朝風呂へと向かった。僕は毎朝5時に起きる。何時もは軽く素振りをするのだけれど、昨日のアレでする気は起きない。


ビュン!ビュン!


「《導力弾》?」


訓練場からは昨日と違って導力銃の射撃音が聞こえてきた。中を覗いて見ると案の定、リオンさんが訓練しているところだった。嫌、もう一人いる。


「100発撃って83発有効、10発負傷、7発ミスか。ユリウス、射撃も優秀だな」


「リオン、全て急所に当てたお前に言われたくは無いがな」


「俺がコイツを使う限り。外す事は無い」


リオンさんは自分の武器をみつめ、言った。ユリウスさんも軽く苦笑いをしているけど、リオンさんの射撃の腕を見ているからかそれ以上は言わなかった。


「しかし、集中して疲れたな。朝風呂、行かないか?」


「賛成だ。レーヴェも行く途中だったのだろ?」


「はっはい、それじゃあ皆で行きましょうか!」


脱衣場で着替えて汗を掻く流す。昨日はシャワーも浴びずにいたから身体もベトベトで嫌だったんだ。


「そう言えば、ユリウスさんは制服を受け取りました?」


「あぁ、気付かれないうちに鏡の前に置かれていた。縫い目も完璧に隠されていてな、アレはまるで新品だぞ」


「驚いてくれたのなら、やったかいが有ると言うものだ。ただし、借りは覚えておけよ」


リオンさんがシャンプーをしながら僕達に話しかけてくる。ユリウスさんは「まったく」と言いながらも笑顔で湯船に浸かっている。


「ん!!!やっぱり朝のお風呂は最こ、、、え?」


「な?!」


男湯に入ってきたのはアンナさんだった。タオルを巻いてはいたけど、女性特有のスタイルが


「いっ嫌ァァァァァ」


「んがぁ!」


僕の目の前に桶が飛んできた。確かに見ていた僕も悪いけど、もっと優しくしてくれても良いと思うんだ。でも、桶が飛んでくる瞬間とても良いものを見たような気がした。


「アンナちゃん!大丈夫?!」


「エマ?!何故導力杖を持っている?!」


「えっ?あぁ、大丈夫です。何もしなければって

アーツが暴走して!」


「ぐぉァァァ!」


「なんだ?熱い?熱すぎる!!」


なんだろう、もうてんやわんやだね。僕は沈みかけていたところをユリウスさんに助けられ、浴場から出られた。そして、、、


「何か弁明はあるか?」


「うぅ、ありません」


今はリオンさんのお説教だ。談話室にてね。


「アンナ・G。これは貴女の不注意が齎した事ではない、、、がその一端は貴女にある。現にレーヴェは軽い怪我をして、更にユリウスと一緒に全身に軽い火傷だからな」


そう、暴走した火のアーツのせいだ。エマの貰ったマスターモーテルは風だけどあの導力杖のせいで全属性を使えてしまう。双子のアーツなら信じられるのだけど、、、僕とユリウスさん、リオンさんはローラさんだけじゃない、話を聞きつけた皆に手当をされている。


「えぇ、レーヴェには謝っておくわ」


「それで良い、これからはきちんと男湯と女湯の確認を怠らないようにな」


うん、アンナさんにはあまり起こってないもんね。どちらかと言うと、、、


「エマ・アイギス、お前はとことん疫病神らしいな」


「ごっ、ごめんなさいって言っても許してはくれませんよね?」


「くたばれ」


リオンさんはそれだけ言うとさっさと上着を着ないで何処かに行ってしまった。


「う~んと、一様あなた達の教官としては説明をして欲しいのだけれど」


「はい、シーラ教官事の始まりは、、、」


話を聞いた教官は呆れ果てていた。まずアンナの不注意、そしてエマの暴走。


「アンナはまぁ、良いでしょう。でも、レーヴェも役得ね、裸見れたんでしょう?」


女性陣の視線が僕に一瞬で向く。慌てて自分の弁明に入った。僕は悪くないもの!


「止めて下さい!それにアンナさんはバスタオル巻いてたんです!見れるわけ、、、あ」


「見たのね!このぉ!」


「痛い!痛いから!」


「まぁ、レーヴェは良いとして」


「シーラ、火に油を注いどいてそれはない」


「確かに、シーラ教官もどうかと思うが今はリオンとエマの仲違いだろ」


「エマ、リオンなんで虐めたの?」


「エマ、リオンなんで燃やしたの?」


「事故だったんです」


エマさんは何かの拍子に導力杖の起動とリミッターを外すと言う事をした。それからだ、火のアーツは暴走し辺りの温度をあげ、更にはリオンさんに命中した。あまりバーサルを込めなければ死ぬことは無いけど、今回は暴走だった。一歩間違えば死ぬこともあったんだ。


「だがな、リオンもあれだけ大きな火傷をしたしな」


そう、リオンさんは右腕から背中にかけて大きな火傷を負った。皆心配していたけど、リオンさんはそれを無視して簡単な治療だけで済ませてしまったんだ。激怒とは行かなくとも、関わり合いになりたくないだろうね。


「取り敢えず、全員解散よ。このまま続けば朝食も食べれないしね。ほら、さっさと解散しなさい」


シーラ教官にそう言われ、僕達は談話室から出て行った。皆何とも言えない顔をしていたけど、、、はぁ、今日の学園生活は胃が痛くなりそうだ。

















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