第7話部活動見学
僕とルイスは結局最後に教室を出る事になった。他の人は皆僕達が話している間に何処かに行ってしまったみたいだ。
「さて、何処から回る?」
「う~ん、部活動が何処で行われてるかによるけど、一つ一つ教室を覗けば良いと思うよ」
「だな、行こうぜ」
学院はコの字になっていて、すべての階層が繋がっているんだ。東棟が教室で西棟が特別教室や教官室となっていて、僕達の教室は3階にあって一つ一つ確認しながら降りていけば問題ないからね。そう思って西棟の向かうと、物凄く物騒で悲しい歌が音楽室から聞こえてきた。
「我等は戦士。血にまみれ、友の屍を越えし者。憎しみさえも、悲しみさえも、我等の糧とした。全てが死に絶えるその時に、我等は彼の者呼び醒ます。その名はドラグーン、聖女と共に終わりを示し、始まり作るもの。そして人の罪を断罪す」
ルイスは顔をしかめ、冷汗をかいているようにも見える。リオンさんの歌声は心の奥底まで響き、聞くもの全てを魅了するかのような、そして聞くもの全てが恐怖を感じるような歌声だった。男声特有の低い歌声。でも、誰もその歌を素晴らしいと評価する事はしなかった。
「、、、駄目ですか教官?ターシェ王国に伝わる民謡なのですが」
「えっえぇ、リオン君。君はもっと明るい歌はある?」
「では、、、[私はきっと鳥になる。翼に風を受け、空高く舞い上がる。青く澄んだ空を、光り輝く星空を越え、高く、もっと高く飛び続けていたい]、、、どうですか、ターシェ王国国家「翼」なのですが」
始めてターシェ王国の国家を聞いたけど、いい歌だと思う。翼、どんな翼かはわからないけど、きっと鳥のような翼なんだろうな。
「他にもバイオリンピアノは演奏できます」
「うん、リオン君よね!是非、音楽部に入ってね!」
「宜しくお願いします。部長さん」
あの女先輩が部長なのか。しかし、リオン君も女誑しだね。先輩の頬が真っ赤だよ。
「ルイスは入る部活どうする?」
「俺に合唱とかは向いてねぇな」
僕とルイスはリオンさんに拍手をしたあと、次の教室へ向かった。と言っても隣の美術室に向かっただけなんだけどね。
「嫌ぁぁぁぁ!!!」
「誰か!消火器もってこい!」
「なんで絵が燃えるんだ!何したんだよ!」
「ふぇぇぇぇ、、、わかんないですよぉ!」
僕とルイスは目を合わせて、美術室の扉から手を話した。絶対に関わっちゃいけない、それに関わり合いになりたくない。美術室の隣は《導力端末室》だった。鍵もかかっているし、部活はないみたいだからそのまま階段を降りて2階に降りた。西棟2階最初の教室はなんと実験室だった。ここでは科学部と化学部の2つが仲良く実験をしていた。中では双子、ミロちゃんとミラちゃんが仲良く実験中。それを先輩方や同級生が見ている。
「実験、俺は良いかな」
「僕もね、それじゃ次行こうか」
隣は調理室か、料理部が今も
「お~ホッホ、このエヴァンゼリン・フォン・ホライゾンにかかれば」
「、、、レーヴェ、駄目だ。駄目だ、絶対駄目だ。ここからすぐに」
「あら、ルイス様?ルイス様ぁぁ!!!」
「レーヴェ、逃げるぞ!」
「えっ?!ちょっ待ってぇぇぇ」
首根っこを引きずられて近くの教室に飛び込んだ。どの教室って隣の教室何だけど、直ぐに扉を閉めてばれないように隠れるんだ。しかも、ルイスに口を押さえられたんだよ。首も締められた状態で。僕は危うく窒息する所だった。
「やっやぁ、君達は見学かい?ここは茶道部。東方の文化である茶道を体験し、行うというものさ」
「茶道か、興味あるな。レーヴェ、悪い。俺はここに決めた。俺の信条は決めたら一直線だからな!」
ルイスはそのまま行ってしまった。僕は邪魔をする前に退散だ。まだ運動場と校庭を覗いて無いし、取り敢えず行って見ようかな。って感じで僕は校庭に来てみたんだけど、テニス部と馬術部、戦技部が活動している所だった。《テニス》は新しくできたボールをラケットで打ち合う競技。男女共に人気があるけど、見た限りじゃ女子の比率が多い。でも、活動するテニス部の前でアンナさんがずっと立っている。きっと、入るのかな?馬術部ではユリウスさんが馬に乗っている。クールな見た目で女子生徒達にキャーキャー言われて、凄い鬱陶しいって顔をしていた。《戦技部》は却下。いくら士官学院特有の部活動だとしても、匍匐前進や射撃訓練なんかを放課後にしたくはない。
「次は運動場か」
運動場は校舎の北に作られている。内部には《剣技場》と《屋内水練場》そして2階に各運動部の部室があった。最初に覗いたのは剣技部だったのだけれど、誰も刀術を使わなくて、七ノ葉一刀流の剣舞を披露するだけになった。あと、剣技部と言うけど大会の関係で実質フェンシング部らしい。とても残念だった。水泳部ではローラさんが何度も水練場を往復しているのが目に入った。つい見惚れてしまう程のプロポーションで、、、いや、違う。僕は覗き魔なんかじゃない!僕は見学に来たんだ。
「レーヴェも来たのか」
「ろっローラさんっ?!」
「なんだ?女性を見て驚くのは失礼だと思うのだが」
「ごっごめん。さっきまで泳いでいたと思ったから」
「休憩だ、リオン。君は入る部活は決めたのか?」
「いいや、まだ全ての部活動を見て回った訳じゃ無いからね。面白いって感じた部活にするよ。でも、水泳部が今の所僕の中では一番かな」
「そうか、私と同じ部活に入るのなら共に競い合おうか」
「あはは、考えておくね」
部長さんとは会えなかったけど、うん水泳部イイね。泳ぐのは嫌いじゃ無いし、水泳なら身体も鍛えられるだろうし。取り敢えず運動場をでて気付いたんだ。運動場の隣に温室が有るのを。[新入部員歓迎]と貼り紙が貼られていて、出入り自由なようだ。花は余り詳しくないけど、取り敢えず覗いてみた。
「リースちゃんはどんな花(こ)が好きですか」
「わかんない」
「ではリースちゃんに似合う花(こ)を探して見ましょうか」
リースが麦わら帽子を被った貴族生徒らしい先輩と仲良く話している。リースじたい楽しんでるみたいだし、邪魔しちゃいけないかな。
「あら、見学の方ですか?」
「はい、一様」
「!」
「あら、リースちゃん?」
僕を見てリースは麦わら帽子の先輩の後ろに隠れてしまった。きっと恥ずかしいんだろうけど、部活見学の生徒は来るんだからさ、う~ん。
「う~んと、貴方にはこの花(こ)ですね」
「オレンジの薔薇ですか?」
「はい、この花(こ)の花言葉は絆です。きっと、貴方は絆を紡いて行きますよ。でも、いま紡げる絆を紡いではいませんね。他の部活も見学してみてはどうでしょう」
「リーネ部長、なんか変」
「ふふっ、リースちゃんもお花さん達と話していれば、きっと解るわ。それじゃ、手入れに戻りましょうか」
「ん」
取り敢えず、言われた言葉の意味を考えて温室をでた。麦わら帽子の先輩、とても不思議な人だった。
「あの先輩の言葉を信じる訳じゃないけど、取り敢えず学生会館も覗いてみようかな」
もともと学院の設備とかも覚える必要はあるし、図書館の隣りにある学生会館に入った。ここ一階にと購買部と学食があって2階に各文化部の部室と生徒会室がある。生徒会室に用事は無いけど、購買と文化部を覗くのは良さそうだ。
「よぉ、いらっしゃい。お前はアノE組か?」
「はい、」
何かアノなのかは解らないけど目立ってるのかな。
「嫌さ、男子イケメン揃い。女子は美女美少女揃いの花形クラスがあるってね」
僕はそこまで顔が整っている訳じゃないけど、そう評価して貰えるのは良い物だね。
「よし、新入生。ここは購買だ。武器弾薬に手入れ器具、文房具まで揃ってるぞ。一様、お菓子も置いてある」
うん、凄かった。お菓子、文房具、砥石もあって、武器弾薬はカタログを見てから買うみたい。取り敢えず、士官学院凄い!
「次はなんか買ってけよ!」
「ありがとうございました!」
購買の直ぐ隣の階段を上がり2階に。見た限り部室は4つで、奥がせとなっているみたいだ。
「文芸部からかな」
中はホコリまみれで、窓はテープで固定されていたりして罅だらけだった。奥では何かがモゾモゾと動いている。それは平民の女子生徒だった。髪はボサボサで制服は草臥れている。近付いて確認してみると洗剤の匂いがするから入浴や洗濯はしているのだろう。だか、胸の辺りから赤い液体が流れ出ていて
「?!大丈夫ですか!」
上着を剥いで怪我の具合を確認しようとすると、お腹に傷は一切ない。心臓に耳を当ててみると、鼓動が聞こえる。
「え?」
「あっ、あの離れて、、、くれませんか?」
「すみません」
「あと、着替えるのでコチラを見ないで下さい」
扉の方を向いて、先輩が着替え終わるのを待った。
「うぅ、恥ずかしいです」
「、、、すみません」
「いえ、見学の生徒ですよね?私は部長のネーナです」
「あの、制服を剥いでしまいすませんでした」
「いっいえ、(格好いいから)許します」
うん、途中聞こえなかったけど僕の容姿で助かったような気がするよ。
「少し、片付け手伝ってくれませんか?部員がもう一人居るんですが、彼女コレを作ってから何処かに行ってしまったんです」
ホコリは薄い布にホコリのような物が作られているだけ、窓は上に取り外しできる罅のイタズラアイテムが貼ってあるだけだ。
「改めまして、ようこそ文芸部へ。私は部長のリーネ・トラスト。本の作筆や読書と感想の語り合いが主な活動です」
今はお茶をだして貰い、向き合って話している。
「はい、まぁ」
「予想、できますよね」
「リーネ!駄目でしょうが!貴方!リーネを剥いたんだから、文芸部に入りなさい!」
「うん、サーナは黙ろうね。元は貴女のせいなのだから。君はもう帰って良いよ、私はサーナと話したい事があるから、、、ね?」
リーネ先輩からドス黒い何かが溢れ出たのを感じで僕は直ぐに部室を出た。扉を閉める寸前、激しい悲鳴が聞こえたけど僕は何も知らないし、見ていない。
「チェス部」
うん、僕は余り興味ないや。誰かと対戦と言うより、余りボードゲームはしないからスルー。
「釣り部は」
「おや、少し待っててくれ。今用意するよ」
釣り部から出てきたのは二人の男子貴族生徒だった。似た栗色の髪をしていて、竿とバケツを持っている。中に通してもらうと、魚拓や剥製が飾ってあった。全部川魚だけで、始めて見る魚や僕が昔よく釣っていた魚の剥製があったりした。
「僕等釣り部は正確には部活じゃないんだ。シーパシー釣具店ってわかるかい?」
「はい、貴族家のシーパシー家が運営している会社ですよね?」
「そう、僕等はシーパシー釣具店ガンダルフ士官学院出張所って所かな。所で、君は釣に興味あるかい?家では釣セット1式を1000マルクで販売してるんだけど」
「営業みたいですね」
「営業だよ、見た所君は釣りの経験者だろ?川釣りがメインと見た」
「はい、故郷では良く川釣りしていました。なぜわかったんですか?」
「いやね、君が周りを見るとき懐かしんでいたからさ。いや、君は純粋に釣りが好きだよね?」
「えぇ、まぁ」
「よし、ハリー。アレを準備してくれ」
「もう有るよ。トニー兄さん」
そう言ってハリー君が持ってきたのは導力端末だった。見たことのない導力端末で、ピクシーと言うより携帯とも違う。
「君の携帯を出してくれ」
言われたとおりにピクシーを出すと、変わったアプリがインストールされた。
「生物図鑑ですか?」
「動植物の図鑑さ。釣ついでにいいだろ?実は、近年魚だけじゃない。色々な動植物の生息域に変化が起きているんだ。僕等にもその調査指示が帝国から発せられている。その中で僕等の会社は魚に関してだね。それに協力してくれるのなら、この釣セット一式をあげよう」
僕にとっても悪い話じゃない。調査協力も帝国の為になるんなら問題無いしね。
「わかりました。でも、釣るだけですか?」
「良いや、釣ったら写真を撮ってくれ。図鑑へデータがアップロードされる仕組みになっている。そこで釣った魚の品種と説明も出てきて一石二鳥だろ?もし、データベースに載っていない魚を釣り上げたら弟のハリーに連絡してくれ。新種なら、君の好きな名前を付けられるぞ」
「わかりました。それじゃあハリー君、連絡先の交換よろしく」
「こちらこそ、レオンハルト君?」
「レーヴェで良いよ」
「わかった、これから宜しくね。レーヴェ」
こうして、釣をとうして友人が二人。新しくできたのである。なんて、カッコつけないで直ぐに別の部室に向かった。
「オカルト部?」
「いらっしゃい、待っていたわ」
中は暗く、壁の蝋燭が淡い光を灯している。床には五芒星がひかれ、中心に机があり、その上には水晶玉が置かれている。それに手をかざす平民の女子生徒。雰囲気はオカルトその物だ。
「始めまして、私は占い師のミリアリア・ハウ。貴方と同じ1年生よ。レオンハルト・オイラート、いえレーヴェ君」
僕は名前を彼女ミリアリアに教えてはいない。名前を確認できる物を所持している訳でもない。それなのにミリアリアは僕の名前を言い当てた。
「運命は全て水晶が教えてくれる。でも貴方はまだ問題無いわ。行く末に迷いが出たらここを訪れなさい。それまでは、、、」
気付いたら僕は廊下な立っていた。でも、僕には自分で移動した記憶はない。目の前に扉があるけど、中は物置のようになっていた。
「まさか、幻覚?」
「迷いが出たらここを訪れなさい」
何処からともなく声が聞こえた気がした。僕は何故か理解できた。まだ、その時じゃ無いんだ。さっきのはきっと《マヨイガ》なんだろう。マシュー先生の言っていたマヨイガ。それに遭遇するなんて。
「あれ?君は確かE組の子だよね」
僕は呆ける間もなく、後ろへと振り向いた。
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