第6話学院生活の始まり

「さぁ、HR開始するわよ〜」


「シーラ教官、またお酒ですか?」


「大丈夫よエミちゃん。まだ酔ってないから」


「シーラ教官、エミは酒臭いと言っているのではないか?」


ローラさんとエミさんがシーラ教官に文句を言っているけど、シーラ教官はそんなのはお構い無しと言った感じで話を開始した。


「え~と、何処に入れたかしらっと、、、あぁ」


「男子は見るな。女性は見せないように動いて!」


「おい!待てっ!」ビシャ


良く解らない音がしたけど、僕はシーラ教官がいきなり上着を脱いで胸を弄り始めた辺りで、近くにいたアンナさんに目を隠された。


「見た?」


「見てない!」


後ろから怒気が恐ろしい程に湧き上がっている。速くどうにかしないと。


「ねえ、アンナ。シーラは何してるの」


「ねぇ、ローラ。なんでシーラはお胸を触ってるの」


「「知る必要はない!」」


目が塞がれている前で双子が叱られているみたいだ。でも、原因はシーラ教官なのにね。


「ふぅ、あったあった」


「!シーラ、なんて場所に入れてんの!」


「ほぇ、リース。なんの事?」


「今、シーラに威厳なんて形もない」


「おい。俺の目を隠してる奴は誰だ?」


女子生徒達の声からリオンさんのドスの効いた声が聞こえてきた。


「あのぉ、私です」


声からしてエミさんなんだろうけど、あれ増々怒気が強くなったような気がする。


「、、、エミ。お前は俺の状況がわかるか?」


「えっ、あ!ごめんなさい!でも、外せないんです!!!」


「うわぁ、インクが酷い事になってるわよ。リオン、貴方の制服速く洗わないと」


「万年筆のインク。今入れたのが間違いだったかもしれん。自分のミスだから許容できる。そして、他人のミスにもできないだろう。だがな、せめて着替えさせては貰えないだろうか?」


リオンさんが凄いイライラしているのが解る。しかし、リオンさんはシャープペンとかでもなくて、万年筆を使うんだ。ミスしたら大変だろうに、なんて馬鹿な事を考えていたけど、どちらにしろ現状リオンさんはインクまみれだと思う。なんか、僕と同じくらい運が無いな。


「うん、よし私はもう大丈夫よ。ごめんね、酔が抜けきって無かったみたいだわ」


「さて、リオン貴方が着替えるのに何分必要かしら?」


「1分有れば良い」


「んじゃ、いってらっしゃ~い」


1分で終わる訳がないと思っていたけど、リオンさんは1分きっかりに教室に戻ってきた。どんな手品なのか聞きたいけど、とてもじゃないけど聞ける雰囲気じゃ無かった。


「よし、揃ったわね。まず学院証を渡すから名前と240ページまでに空白があるか確認してね」


僕は渡された学院証の名前部分と指定されたページまでをパラパラとめくってみた。特に空白も無くて、問題はないように感じる。皆も確認し終わった辺りで、制服の内ポケットにしまっていた。僕も見習って内ポケットへとしまう。


「よし、皆大丈夫みたいね。んじゃあ、学級委員長を決めようと思ってるのだけど、立候補はあるかしら?」


誰も手をあげようとしない。でも、何故か視線がリオンさんの方に向かっているのが気になる。


「おい、なぜ俺を見る?」


「いやぁ、リオン。お前って昨日の掃除思おだすとさ。的確な指示もできて、面倒見もいいだろう?学級委員長、お前以外にいないような気がしてさ。それに点数は堂々の500点満点!逃げられないよな?もし、点数を理由に逃げるなら499点の双子がなるんだぞ?12歳に任せられるのか?」


「ぐっ、、、なら、ルイス・フォン・ミューゼオ。貴様がやれ」


「却下」


「駄目だな」


「ごめんなさい」


「「えー!ルイスがやるのー」」


「ぐっ、てめぇら俺になんか恨みでも有るのかよ!」


リオンさんが反論したらそれを女性陣に却下されていた。リオンさんは驚いて、ルイスは悲しみの涙を目尻に浮かべている。まぁ、じぶ


「リオンの方がイケメン!」


「リオンの方が格好いい!」


双子の台詞に頭を抱えるリオンさんとルイス。まぁ、ルイスは純粋に悲しんでるんだろうけど。


「、、、了解した。リオン・マーキュリー、学級委員長に立候補する」


「それじゃあ対抗なしで、全会一致でリオンが学級委員長となりまーす!喜べー少年!次は副委員長ね。誰か」


「「はーい」」


「いい返事ね。でもごめんなさいね、1人って決まりなのよ」


「「なら止める!」」


双子は本当にぶれないよね。でも、副委員長かそれなら大変そうでも無いし、僕がやっても


「あと、男女比を同じにしたいって通達あるから女子から立候補して欲しいな」


うん、そうだね。でもシーラ教官、それはもっと速く言ってくれても良かったんですよ?僕、危うく上げるところでしたもん。


「なら私が行こうか、他に誰もいないな?」


「ローラなら、良いと思うわ。エマとじゃリオンが嫌がるだろうし」


「うぅ、ごめんなさい」


うん、アンナさんかローラさんになるよね。リースはどちらかと言うと面倒くさがりって感じだし、今も欠伸をしてるし。


「それじゃあ、学級委員長リオン・マーキュリー。副委員長ローラ・フォン・ディーンマラで記入したから」


リオンさんは本当に不服そうだけど、仕方ないなって言ってきちんと仕事してくれるような気がするし、ローラさんに至ってはコレも修行だって考えてそう。


「それじゃあ、改めてこのE組についての説明をするわね。E組は実験クラスとなっているわ。軍の武装や装備が配備される事も多くなるでしょう。でも大丈夫。軍で臨床実験とかも終わってる代物だから。そして、週に1回実技テストがあります。これは実力を確かめる為に行われるわ。そしてE組専用のカリキュラムとして課外授業が1ヶ月に一度あるわ。場所が何処になるかは解らない。でも最初のカリキュラムとしては来週になる事を覚えておいてね」


「、、、それは俺が居ていい物なのか?」


うん、そうだよね。試作型の兵器とかどう考えても学生に見せて良いものじゃ無いし、それに留学生をそのクラスに入れるなんて。


「別に良いわよ。どうせターシェ王国の兵器には100歩以上及ばないレベルだもの」


「そうか、なら問題は無いな」


それにいち早く反応したのはアンナさんだ。シーラ教官を睨むだけじゃ無くリオンさんの事も一瞬見たような気がした。まるで、リオンさんに憎悪があるかのような、、、気にし過ぎだね。


「んじゃ、もうすぐ授業終わりだから。それじゃあね」


シーラ教官の言うとおり、授業は終了した。そこからの授業は変わらない戦術・砲術の授業は興味がないけど、ある程度はやれた。でも、やっぱりトーマス教官の歴史学は楽しかった。今日最後の授業だったけど、1番印象深かったんだ。


「こうして《オルスリア帝国》の奴隷将軍であった《ルドルフ》はリドリー帝国を建国し、初代皇帝ルドルフ・フォン・リドリーとなりました。レオンハルト君、ではルドルフの初代皇帝として行った大規模な進軍は何処か。教科書を見ずに答えてください」


「バルト平原です。そこでオルスリア帝国を打ち破り、真のリドリー帝国の自由を勝ち取ったのです」


そう、リドリー帝国は元々は逃亡奴隷が創り上げた国。それが900年か其処らで大陸第2位の大国にのし上がった。それが僕等の帝国の歴史。僕は面白いけど、寝てる人は寝ていた。リオンさんなんて面倒な

って顔をしながら授業を聞いて、、、


「ではリオン君。オルスリア帝国の最後の皇帝の娘ミーナが嫁いだ国は何処か答えて貰えますね」


「ターシェ王国だな、確か36代ケフェウス国王の妃になっていたハズだ。家ではラブロマンスの代名詞だな。悪辣な帝国から妻を守る為に戦った国王として有名だな。まぁ、帝国に正義が有るように此方にも正義が有る。歴史ってのはそんなもんだしな」


へぇ、王国ではそうなのか。確かに、自分の妻を守る王様って格好いいよね。まぁ、絶対正義なんて物は存在しないのだから。


「さて、君達授業はなんとも無かったわね。こらから放課だけど、君たちには部活を決めて貰います。どんな部活があって、どの部活に所属するかせいぜい悩んで頑張ってね」


シーラ教官はそれだけ言うと何時もと同じように消えていった。僕達は残されて相変わらずだよ。


「レーヴェは何処に入るんだ?」


「ルイス、まず見て見ないとね」


「そうだな。んじゃ、行こうぜ」


「了解!行こうか」


僕はルイスと一緒に部活を回るようにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー解説

オルスリア帝国

リドリー帝国の前身となった国家。奴隷を使いつつ繁栄していた国家。侵略戦争を繰り返し、他部族等を支配下に置いた戦争をしていたが、奴隷の叛乱により壊滅した。


ルドルフ・フォン・リドリー

リドリー帝国初代皇帝元はオルスリア帝国の奴隷将軍だった男。奴隷を率いてオルスリア帝国に反旗を翻し、彼を皇帝としたリドリー帝国を起こした。





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