第4話迷宮攻略

「材質は100年前によく使われていた物だね。まぁ、ここは旧校舎みたいだし当たり前かな」


僕は地面や壁の材質を調べてそんな事を話した。ほぼ独り言だったのだけれど、ルイスが話に乗ってきた。


「お前そんなのも判るのか?」


「まあね、考古学とか歴史学を齧ってるとどの時代の材質かなんてすぐ解るよ」


ルイスとは簡単に話せるんだけど、女子生徒やユリウスさん、そしてリオンさんとは上手く話せる気がしないんだよね。


「止まれ、魔獣だ」


「数は8、気を付けて」


リオンさんとリースがそれぞれ武器を構えて警戒している。僕達も武器を構えて待っていると、魔獣達が現れた。


「なっ、狼だと」


狼型の魔獣が8匹僕たちに向かってくる。リオンさんとリースさんを無視した状態で襲いかかってきた狼に僕達は応戦を余儀なくされた。


「くっ」


「ルイス!」


狼の一匹がルイスを押し倒し喉元2喰らいつこうとしていて、僕が助けに向かおうとしたら、ドン、銃声が聞こえてルイスの上にいた狼が離れた。


「ユリウスさん!」


「レオンハルトだったな、君は前線を支えろ。4人では数が違いすぎる」


そうだ、僕が抜けたから余計に7対4、急いで加勢しないと。


「ファイアバレット」


「ぐわぁ!」


「リオンさん!」


リオンさんがまるで後ろから吹き飛ばされたかの様に飛んでいく。そして、吹き飛ばされたリオンさんを狙って4匹が襲いかかった。


「武器が!」


リオンさんのガンダガーが両方とも何処かに飛んで行って見当たらない。そして一匹がリオンさんに襲いかかって、


「なめるなぁ!」


襲いかかった狼を蹴り飛ばしていたけれど、囲まれているのに変わりない。


「ワォン!」


「ちぃ!」


リオンさんの腕に一匹が喰らいついて赤い液体が滴り落ちる。それ見たアンナさんの蛇腹剣が伸びて、狼の頭を切り落とした。僕達は急いで負傷したリオンさんを中心に陣形を組み直し、ユリウスさんの的確な指示の下でなんとか狼を殲滅することが出来た。


「うぅ、リオンさんすみません」


「許すと思うか?」


リオンさんが吹き飛ばされたのはエミのファイアバレットが原因だった。標的をロックする事をしないでアーツを使ったせいで、適当に飛んでいってしまったらしい。でも、標的のロックなんて基本なのに。ウ~ン、ますますエミを信用できなくなったな。


「俺はお前が嫌いだ」


手当をしようとしたエミの手を払ったリオンさんはミロちゃんとミラちゃんを呼んで二人に火のアーツを使わせた。


「リオンどうするの?」


「リオン、大丈夫?」


リオンさんは二人の導力杖に傷口を近付けると、激しく悶る様子を見せながら、傷口を焼いていた。


「二人共、ありがとうな」


ルイスはいきなりの行動に驚いていたけれど、ユリウスさんはリオンさんに近づくき話しかけていた。


「戦えるのか?」


「利き腕は右だからな、それに聞こえるか?風の音だ。どうやら、ここは余り距離が有る訳では無いようだ。付いてこい」


ユリウスさんはリオンさんを見たあと、僕達に


「付いていこう」


と言った。リースがリオンさんのカバーをしながら、僕達は魔獣を退治しつつリオンさんの耳を頼りに出口へと向かった。


「つぅ、、」


「!リオン、出口だよ!」


「お姉ちゃん!」


「あっ」


ミロちゃんが明かりを見つけてそこに走っていった時、上から大きな魔獣が降ってきた。ソレを見たミロちゃんがしゃがみ込んでしまって、もつ駄目だと思った時、リオンさんが走ってミロちゃんを間一髪で助け出した。


「皆、いくよ!」


「《レッサーベヒーモス》だ!皮膚は柔らかい、切り刻むぞ!」


リオンさんが魔獣の弱点というか特徴を教えてくれて、僕達は魔獣を囲むように陣を組んだ。


「リース!」


「任せて」


リオンさんとリースが魔獣に向かって行く。魔獣は正面から襲ってきたリオンさんを返り討ちにしようとしたけれど、後ろ脚を斬られてよろめいた。


「ナイスだ!」


リオンさんが魔獣の目にガンダガーを突き立てて、ミロちゃんを抱えながら僕達の方に走ってくる。魔獣は激しい咆哮を上げた後、二人に向かって前脚を振り下ろした。


「無駄だ!」


ローラさんが大剣で前脚を受け止めて、薙ぎ払う。


「今度は外しません!ファイアバレット!」


「「私達もお返し!ガイアフォール」」


3人のアーツが魔獣を襲う。でも、魔獣はまだ倒れる様子を見せず、襲いかかってくる。


「ルイスさん!行くわよ」


「オーケー!」


ルイスとアンナさんが二人で魔獣の身動きを止めている。


「撃ち抜かせてもらう」


ユリウスさんが魔獣のもう片方の目を潰して、最後は僕だ。


「ウラァァァ!」


ルイスが血管を浮き出しながらも、魔獣を引っ張り魔獣は僕に対して腹を見せた。


「ハァ!」


刀で魔獣の腹を切り裂き、離れる。魔獣からはドロっと赤黒い液体が大量に溢れ出て、いるがまだ動きを止めない。


「魔獣、覚悟!奥義光翼剣!」


ローラさんの大剣が光を発しながら、魔獣の頭に向かって振り下ろされる。魔獣は呻き声を発する事なく、頭を真っ二つにされてその場に崩れ落ちた。





「はぁ、やったな」


「あぁ!」


僕達は生還した喜びを分かち合い。そして、僕達がこうなった元凶を見つけた。


「シーラ・バレンタインか」


「え?リオンさん?!」


僕達は驚いた。リオンさんがあの教官に向かって銃口を向けているんだ。そして、今にも引き金を引こうかといった気迫を見せている。


「やーね、怖い事しないの。皆生きてたでしょうが」


「レッサーベヒーモスがいた。正直に言おう、全員が生きているのは奇跡だぞ。レッサーとつくが、奴はBランク遊撃士すら場合によっては殺す魔獣だ。戦闘経験が半端な学生が相手するには」


「そう、でも皆気付いてるかしら?あなた達の身体能力が向上していた事に」


確かに、今までよりも動けたとは思うけど。


「それはピクシーに搭載されたシステムによるものなの。つまり、E組とは特殊装備試験クラスと言う事よ」


「そんな、私達はモルモットって事ですか?」


「確かにね、それにE組は他に比べてもカリキュラムは難しく設定されているわ。この迷宮攻略も試験の一環よ。もし危険となれば、控えていたメンバーが掩護にはいり、その人物はE組から弾かれ、通常のクラスに編入される。そして言うわ、もしこれからの事が怖かったり、容認できないのなら去りなさい。通常のクラスに編入されるから」


「なら、私は残ろう。元々鍛錬の為でもあるのだ。なら、より高い壁に挑むのは良い事だ」


「帝国貴族が逃げる訳には行かないのでな」


「私も参加します」


「う~んとぉ、私もです」


「リースは逃げるの禁止ね」


「ブー」


リースがシーラ教官に対してあっかんべーって、女の子がやる事とは思えないのに。


「「私達も!ねぇ、リオンも一緒!リオンも一緒!」」


「しょうがないな、、、ほらよっと、肩車だ」


リオンさんは双子が心配なのかな。でも、これで参加が決まってないのは僕とルイスだけ。


「俺はやるぜ。楽しそうだしな、レーヴェも来るよな」


「、、、そうだね。僕も参加します」


「うん、全員参加ね。では改めて、私があなた達の教官となるシーラ・バレンタインよ。2年間、宜しくね」


こうして、僕の波乱万丈な学院生活がスタートしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー解説

レッサーベヒーモス

全長4m程の魔獣。ベヒーモスとは近縁関係にある別種の魔獣であり、その姿はベヒーモスを一回り小さくしたような物である。ベヒーモス程の防御力を有してはいないが、それでも討伐には死者を出す程の危険な魔獣である。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る