第2話入学式から
「来たね。君達が最後だ、入学式に荷物は持ち込めないよ。僕等に預けてくれないか?」
「安心してね。君達の寮に運んでおくから」
制服とは違い、作業着を着た女子生徒と生徒会に所属している事を示すワッペンが胸に付いている。小さめで、僕より頭一つ以上小さい。僕が176cmだから160?いやもっと小さい可能性も、、、もしかして飛び級かな?それで生徒会所属とか凄いな。
「お願いします。ルイス行こうか」
「おっ、おう」
ルイスは何かに驚いていたみたいだけど、一体何に驚いたんだろう?
「有り得ねぇ俺がXXXXにトキメクなんて」
うまく聞こえないけど、一体何を言っていたんだろう。それにしても、さっきの作業着の人は美人だっ!たな。生徒会の人は可愛い感じだったし、凄いな。
「新入生はこの中に入れ、入学式が始まるぞ」
帝国軍人が何故か講堂入口にいるけど、考えたらここは士官学院だもの。教官の一人や二人、軍人でもおかしくないね。講堂に入り、名前を言うと僕達は席の座標を渡された。A、Bが貴族生徒のクラス。
C、Dが平民生徒のクラス。でも、僕達の座標はEとなっていた。
「Eなんてあるか?」
「多分あれだよ」
僕達と同じ黒い制服を着た生徒が8人、座っている。空席が2つあるから、きっと僕とルイスのだ。
「Eの5が僕だね」
「んじゃ、その後ろ」
席について数分したら、学院長でもあるヴァン・ダイク学院長が前に現れた。2mは軽く超える歩く巨人。
「我が学院は、今年で創立100を記念する。創立者はかの《女帝エルフリーデ大帝》である。《10年戦役》を終結させ、今ある帝国を築き上げた中興の祖である。即位から10年余り、10年戦役を忘れない為、そして砲術、兵学を教える為、この終息の地である《レスタ》に士官学院を開いた。近年、軍の機工化に伴い本学院の役割も大きく変わり、軍以外の道に進む者も多くなった。しかし、それでも大帝が遺した“この言葉”は今でも学院の理念として息づいている。〘若人達よ。未来を描け〙この言葉を諸君らがどう捉えるかは自由である。そして、どんな未来を描くのか。それをこの2年間で自分なりに考え、切羽琢磨していって欲しい。以上である。そして、今年度主席入学者を紹介する。リオン・マーキュリー。起立」
ヴァン学院長がそう言うと僕の前の生徒が起立した。
「彼は王国からの留学生であるが、入学時に諸君等と同じテストを受け、500点満点というズバ抜けた成績を遺した。総員、拍手を」
ヴァン学院長の言葉の後、凄い勢いで拍手が贈られた。真後ろでリオンさんの顔は見れなかったけど、友達になれると良いな。
「よし、A組移動!」
教官達の呼び声で各クラスは移動していく。でも、僕達E組は何故か残されていた。
「さ~て、Eクラス移動しましょうか」
それぞれが顔を見合わせる中、僕達E組は人通りの無い古びた校舎に連れてこられた。
「さて、君達先ず最初に言うわ。恨み言なら後で聞く!それじゃあね」
「何!」
いきなり僕達の床が抜けて、そのまま僕は暗闇に落ちていった。
「ウ~ン、君留学生よね?なんでそんな物有るのかな?」
「俺からしたら隣のお嬢さんの方が気になるがな」
俺は落ちる寸前、アンカーを天井に撃ち込みぶら下がっている。そして、隣りにいる14かそこらの少女も俺は俺とは違い、携行用のロープのような物だ。
「シーラ・バレンタイン、これも試験か?」
「そうね、確かに試験の一環よ」
「そうか、お嬢さん。さっさと降りた方が良い。これはアドバイスだ」
俺はアンカーを消失させると坂をゆっくりと降りていった。
「さて、リース。あんたもよ」
「あっ」
銃声と同時に俺をずっと見ながら滑り落ちていくお嬢さんを見たが、俺は一切知らん。警告はしたんだからな。
「おっ、重い」
「レーヴェ!レーヴェしっかりしろ!おい、お前等早くレーヴェから降りろ!」
僕は激しい苦しさと重さ、地面の冷たさを感じているとレーヴェが僕を救い出してくれた。
「レーヴェ、ありがとうあのままじゃ圧死する所だったよ」
「お前の上に3人も乗ってたんだ。そりゃ苦しいだろうよ」
「お前達、女性に重いは失礼だろう」
「あ?レーヴェを下敷きにして気楽に過ごしてた女3人に言われたくねぇ」
「あぁぁ!今朝ぶつかってしまった、すみません。2度もこんな目に合わせて」
「貴方、災難なのね」
何故だろう、謝られた事よりも最後の一言がグサリと突き刺さるのは。
「あ〜」
「ぎゅあ」
すると今度は僕の頭に足が降ってきた。
「あっ、ごめん」
「うん、気にしないで」
運、やっぱり無いんだな。
「よっと」
最後は留学生のリオンさんが降りてきた。僕達をみね少し驚いていたいるけど、、、
「おい、大丈夫か?制服が凄い汚れてるぞ。まさか、足蹴りでもされたか?所々足跡が付いている。酷いな、帝国は入学式からイジメが行われるのか。お前、王国に亡命するか?」
僕達じゃなくて、僕を見てたのか。って、それよりも酷い勘違いが起きている。
「落ちた時、僕は3人の下敷きになっていて」
「可愛そうにな」
どうにか勘違いを解いて貰った。もし、こんなのが帝国人の普通と思われたら大変だもんね。
ピー!ピー!ピー!
導力端末の着信が聞こえて皆が一斉に開く。
「おーい、全員いるかな?よーし、居るね。君達に渡してあるのは帝国の《グリムガルド社》製の試作型導力携帯端末Pixie)よ。全員、荷物の一部がそこに置いてあるでしょ。名札があるから全員その前に移動して」
言われた通りに移動すると、僕の刀が置かれていた。隣には《導力魔法アーツ》の発動媒体である火属性のマスターモーテルが置いてあった。
「火のマスターモーテル」
「それぞれ手に入れたわね。それじゃあピクシーにセットして」
僕は指示通りピクシーに火のマスターモーテルをセットする。するとピクシーの動力回路に光が灯り、
一定時間して落ち着いた。
「全員の起動を確認したわ。それじゃあ、言うわね。次の試練は貴方達が力を合わせてそこから脱出してみせなさい。それだけの力はあるはずよ。因みに、中は魔獣もいらから頑張ってね」
通信が一方的に切られた。はぁ、どうしようかな。
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解説
エルフリーデ大帝 享年82歳
帝国史上初の女帝。10年戦争を終結させた英雄でもあり、ガンダルフ士官学院の創設者でもある。そして、この士官学院を開いたさいに〘若人達よ。未来を描け〙と残している。
10年戦役
当日帝国を4分した大規模な内戦。4人の王位継承者によって起きた物であり、帝国は疲弊仕切っていたそれをエルフリーデ大帝が収めたとなっている。レスタはその10年戦役後に最も大量の血が流れた場所に作られた都市である。
導力魔法 アーツ
導力魔法=アーツ。モーテルを媒体として行うある種のシステム。マスターモーテルを全体の発動キーとして、導力携帯端末内の回路を使い端末を媒体として発動する。
試作型導力携帯端末Pixie
妖精の名を冠した帝国の王手会社グリムガルドによって制作された物である。試作型の実地試験を兼ねてE組に配備された。勿論、通話などもちゃんとできる。
グリムガルド社
帝国の王手企業。民間企業でありながら、軍の物資の製造、補給をすべて任されている。グリムガルド社と言うが全体は3つにわかれており、第1から第3製造所。第4から第5開発部。第6特殊開発設計部。それらが独自の路線を描いている。
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