リドリー帝国物語

shadow

第1話士官学院へ 4/1

《ターシェ王国との間に和平交渉。ガンダルフ士官学院に留学生!》

帝国歴908年、喜ばしい事が起こった。長年敵対を続けてきた王国との間に和平交渉が成立したのである。これは、世界にとってそして、我が帝国にとって喜ばしい事である。《前皇帝フリードリヒ2世》の行った出兵により、和平交渉は不可能と思われていた王国である。しかし、《現皇帝ドライケアス帝》による交渉が幸をなし、和平交渉そして留学がなった。士官学院への留学であるが、ドライケアス帝ご自身は


「軍が変わったことを知ってもらい、我々との架け橋になってくれる事を期待する」


とのコメントを残している。


僕は新聞を読みながらこれから向かう場所の事を考えていた。〘ガンダルフ士官学院〙今話題の留学生が僕と同じように入学するみたいだ。どんな人なのか、男性なのか女性なのか。名前も、姿も知らないその人に期待を膨らませている。


「よぉ、お前ガンダルフ士官学院の入学生?」


「そうだけど、君は?」


「俺はルイス。ルイス・フォン・ミューゼオ。俺と同じ制服来てるからさ、声かけてみたんだ。席良いか?」


「うん、どうぞ。僕はレオンハルト・オイラート。あの、ルイス様って呼んだ方が」


フォンは貴族だけが使う事を許された称号だけど、正直形骸化したもの。でも、面倒臭い人達がいるから市民がフォンを名乗ることは無い。でも、彼がその面倒臭い人なら僕は気安く話しかける事はできない。


「あ~、俺そう言うの嫌いだからさ。ルイスって気楽に呼んでくれよ。レオンハルトは」


「僕はレーヴェ。そう呼ばれてる」


「よろしくな、レーヴェ」


始めて他の貴族と話したけど、楽しい人。それが僕にとっての始めての友人だった。


「しっかし、この黒い制服なんなんだ?こんなの貴族生徒用でも、平民生徒用でもないぜ」


「うーん、多分一緒に貰ったこの導力端末が関係すると思うんだけどね」


話し込んでいると、目的地を知らせる放送が聞こえてきた。


「レスタ、レスタ、お降りのお客様は」


「準備しようぜ」


「そうだね」


僕は棚に上げてある荷物を降ろして降りる準備をした。目の前では僕と同じ様な荷物を持ったルイスが笑顔を見せている。


「着いたみたいだな。レーヴェ、降りようぜ」


「うん、行こうか」


列車から降りて駅のホームを進む。切符を駅員の方に渡して僕とルイスは駅を出た。


「んっんあぁ!はぁ、座りっぱなしはキツイぜ」


「まったく、そんな事をしてたら邪魔になるよ。ってうわ」


「ごっ!ごめんなさい!」


何故か通行の邪魔をしていたルイスじゃなくて、僕と女性がぶつかった。しかも、走ってきたらしくて後ろからぶつかられた僕は地面に頭を打ってしまった。


「危ねーな、お嬢さん。もし、この通路に石でもあってみろ。レーヴェの頭に刺さってたかもしれないんだぞ。気を付けろよ」


「ルイス、僕は大丈夫だよ。それよりも、早く学院に行かないと」


「あっ、学院!ごっごめんなさい!」


ぶつかってきた女性はそのままガンダルフ士官学院に向かって走っていった。服装から士官学院の生徒みたいだ。謝られた気はするけど、何だか釈然としないよ。士官学院の正門が見える所に来ると、急に声をかけられた。


「邪魔だ平民!」


「えっ、あっごめん!」


「ん?割り込んできたのはお前たちだ。素直に順番ぐらい待てよな」


貴族に食って掛かる貴族。その図になるかと思ったけど、ルイスを見た瞬間貴族生徒は急に尻込みして、そそくさと学院に入っていった。


「まったく、あんなのが品を落とすんだ」


ルイスはご機嫌斜めといった顔をしている。そして、また貴族らしい女子生徒が見た。


「爺、ここまでで良い」


「解りました。では、お嬢様コレを」


「うむ」


胸の高さまで有りそうな大きなケースを渡された女子生徒はソレの持ち手を持って学院に入っていった。そして、何より僕と同じ様な黒い制服を着ていた。


「(あの胸)デカかったな」


「(あのケース)大きかったね」


今度は後ろから導力車の音が聞こえてきた。僕とルイスは慌てて隅によった。降りてきたのは金髪碧眼で貴公子といった印象の男子生徒だった。この黒い制服が似合っていて、物語の格好いい悪役みたいだ。


「ユリウス様、お荷物は」


「いらん、自分で運ぶ。それよりも、これ以上入ってくるな。邪魔なだけだ」


「!解りました。では」


セバスチャンと呼ばれた人はユリウスと呼ばれた人を睨み付けると導力車をUターンさせてそのまま消えていった。


「お前達、入学式の時間に間に合わなくなるぞ」


ユリウスさんはそれだけ言うとさっさと学院に入っていった。僕とルイスはそれぞれ顔を見合わせて、学院に入った。



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解説

前皇帝フリードリヒ2世 享年56歳

13年前にターシェ王国へと急遽進行をした皇帝。宣戦布告を行わず進行したが、ターシェ王国軍に劣勢を強いられ、前線への視察に赴いたさいに地上戦艦の主砲の餌食となり、死亡。なお死体は左足のみが奇跡的に残り、墓石の下に埋まっている。


ドライケアス帝 年齢43歳

前皇帝フリードリヒ2世の異母弟にあたり、戦争に反対した為に幽閉されたが戦争の悪化と国家の疲弊を目の当たりにした一部の軍人を纏め上げ、クーデターを起こした。賢帝と呼ばれ、支持は厚い。


ガンダルフ士官学院

レスタにある士官学院。名門であり、帝国史にある数多の名将はここを卒業している。今年で創立100年。

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