第267話 相談しよう
私は此処へ来て何度目かの来客を迎えていた。
勿論今回も相手はアルベルトさんだ。
彼は2~3日おきにこの拠点までやってくる。どうやら隊の方から連絡要員として指定されているようだ。
私にとっても相手がアルベルトさんというのはありがたい。彼なら話すのが楽だから。
「おかげでシンプローン
あの魔物以外の魔物の大半はコボルトで、数もフミノさんがいらした頃の2割以下になっています」
確かにアルベルトさんの言う通りだ。
しかしいい事ばかりではない。
特に最近、気になっている事がある。
「ただあの魔物はそのままなんですよね。見た感じでは弱体化もしていませんし。
それに中の
毎日コボルトキングを倒していた頃は、迷宮の弱体化をある程度実感出来た。
しかしコボルトキングの代わりにコボルトジェネラルが出るようになり、更にそれがコボルトナイトになる頃になるとあまり変化を感じなくなった。
そしてついに中ボス格が出なくなった。それから今日までの5日間は感じられる変化は全く無い状況。毎日雑魚コボルトを倒すだけとなっている。
「それでも
そうかもしれない。
ただ1日に100匹以下のコボルトを倒す程度では、減る
このペースでやっていくなら、そして今後更に出る魔物が減るのなら。
此処へ来てもう少しで1ヶ月。いい加減お家が恋しくなってきた。さっさとお仕事を終えて帰りたい。
何なら2~3日だけ討伐を休んでお家に顔を見せに行ってくるなんて事も考えた。
しかしどうにもこの
「隊の方はどうですか。あの魔物対策の方はどうなっているでしょうか?」
「避難指示は解除されました。避難者もまもなく戻り始める模様です」
「えっ!」
何故だ。
そう思ったのがわかったのだろう。アルベルトさんは小さくため息をついた後、説明する。
「きっかけは国が避難活動にかかる費用の援助を取りやめたからです。国の方針を受け、領主であるメディオラ侯爵も避難活動の中止を宣言しました。
つまり
偵察魔法で
しかし現場で
「第6騎士団分遣隊の方は今のところ人員はそのままです。
現在ほとんどの部隊は待機、訓練、周囲の魔物の探索・排除任務で、魔法偵察部隊だけが
ただ、魔法偵察部隊以外については近々任務解除される可能性があります。
あの魔物の強力さを知っている現場としては避難活動継続・部隊配備の強化を訴えているところです。ですが
第6騎士団本隊幹部の方もそう判断しているようです」
騎士団の魔法偵察部隊は私と同じ意見のようだ。ただそれが現場以外には通じていない。
そういう事だろう。
「魔法偵察部隊としては、今後も監視業務を続ける方針です。ただ以前にも申し上げた通り、監視以上の事は能力的に出来ません。
迷宮の魔素がこのまま減少していくなら、監視だけで大丈夫でしょう。ですが万が一迷宮が再び成長するのを監視ゴーレムで確認しても、私達にはどうすることも出来ない。
そう思うと今後ともフミノさんの魔法に頼るしかないのが現状です。騎士団としては大変心苦しいのですが」
「いえ、作戦を考えて、迷宮を地下へ閉じ込めたのは私ですから」
そう、この結果は私が招いたものでもある。
余分なものを背負い込んでしまったのかもしれない。それでも
しかし
そして時間が経つごとに避難民は戻ってくる。更に騎士団の実働部隊が帰還してしまう可能性すらある。
もし避難民が完全に戻ってきて、更に第6騎士団が偵察部隊以外帰隊してしまったら。
そしてその状態で
最悪の事態を迎える事になる。
それならいっそ、早期に勝負をかけた方がいいかもしれない。
避難済みの者が戻ってくる前、第6騎士団分遣隊がまだ今の人数いる、今のうちに。
コボルトキングを倒し続けている時に思いついた作戦がある。
ただ本当に
だから思いついても今まで実行はしなかった。
しかし時間が経ってもこれ以上
早いうちに仕掛けた方がいい。
ならば……
「アルベルトさん。実はあの魔物を倒せるかもしれない作戦があるんです……」
一人で考えているより誰かと相談した方がいいだろう。そしてアルベルトさんは信頼していい人だ。その事は今までのやりとりでわかっている。
だから私は彼に話す事にした。
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