第266話 地道な攻略?

 カトル君に迫るコボルトキング。さあ来い、もう少し、もう……


 今だ! 私は出口前広場下側の土を、既に掘ってある縦穴まで収納する。カトル君はすぐ収納したので、落ちていくのはコボルトキングだけ。


 コボルトキングには飛行能力は無さそうだ。落下速度を抑える魔法も無い模様。

 途中で穴の壁部分にぶつかり、その後はやや回転しながら落ちていく。


 このままだと時速何km位で下にたたきつけられるだろうか。でも空気抵抗があるからそこまで加速しないかな。


 待てよ。空気抵抗か。なら穴の下部の空気を収納すればどうなるだろう。


 コボルトキングの現在位置より下側の空気を収納。

 コボルトキングは一気に加速した。これは空気を収納していない上部分との気圧差によるものかな。


 ドン! コボルトキングは穴の底に叩きつけられるように落下した。

 遠いせいかクラーケンほど重くないせいか、私自身がいる拠点までは衝撃が響いてこない。でも穴の底は悲惨な状態だ。コボルトキング、原形が全く残っていない。


 いや、持っていた槍だけは曲がったけれど残っている。これは修理すれば使えそうだ。だからとりあえず別に収納。


 コボルトキングの本体、もはや残骸としか言いようのない物も収納。これで中ボス退治は終了だ。


 穴は埋めておこうか。でもこの先、雑魚敵を落とすのに使えるかもしれない。なら縦穴はそのままにしておこう。


 落とし穴作戦を使えるように上部分は塞いで。あと迷宮ダンジョン部分との接続部分も土を出して塞いでと。


 さて、これで明日は少しは迷宮ダンジョンの様子も変わるかな。少しだけ期待しつつ、いつもと同じ雑魚討伐を開始する。


 ◇◇◇


 翌朝、目覚めてすぐ。

 ヒイロ君経由の偵察魔法で迷宮ダンジョン内を確認した私は目を疑った。

 何とコボルトキング、復活してる! 前と全く同じ位置に。壊れた筈の槍まで持って!


 何故だ! 折角頑張って考えて倒したのに! そう思っても居るものは仕方ない。


 まさか昨日倒したのは夢だった? 

 いや、アイテムボックスの中には昨日回収した残骸が入っている。だから倒した事は間違いない。


 迷宮ダンジョンの様子は他に変わりないだろうか。偵察魔法で隅々まで確認。


 竜種ドラゴンは変化なし。迷宮ダンジョンの広さも多分同じ。

 強いて言えば魔物の総数が若干減っているような気がする。でも気のせいと言われるとそんな気も……

 

 私は思わず大きなため息をついてしまう。リディナの処へ帰れる日がまた少し遠くなった気がする。


 でも仕方ない。一息ついたらまたコボルトキングの討伐だ。


 方法は昨日と同じでいいだろう。昨日の事を覚えているなんて事はあるまい。残骸が私のアイテムボックスにある以上、今いるコボルトキングは別個体の筈だから。


 さて、今日は朝ご飯、何にしようか。昨日はハニートーストだったから、今日はパンケーキにしようかな。


 その前にヒイロ君やウーフェイ君が襲われないよう、周囲の雑魚魔物を狩っておこう。とりあえず100匹ずつ倒しておけば大丈夫だろう。今日までの経験から考えて。


 ◇◇◇


 コボルトキングを倒して、翌朝復活したのをまた倒して。このサイクルを1週間以上繰り返した。


 作戦は毎回同じ。カトル君でおびき出して穴に落とす。今、偵察魔法で確認している残骸が9匹目のコボルトキングだったものだ。


 しかし何度も倒した事は無駄ではなかった。迷宮ダンジョンに明らかな変化が出てきたのだ。


 一番わかりやすいのが迷宮ダンジョンの魔物の質。

 最初の頃は雑魚と言ってもトロル類とかコボルト類の上位種が主だった。しかし今はただのコボルトも結構多い。トロルに至っては出なくなっている。


 魔物総数も明らかに減った。最初の頃は400匹以上倒していたのだが、今は狩れる部分に居るのは300匹以下だ。


 コボルトキングも弱体化している。特に今日倒したのはかなり弱々だった。最初の時ほどの圧迫感が感じられない。私が慣れたからでは無いと思う。

 

 この調子でコボルトキングを倒し続ければ迷宮ダンジョンの消滅も近いかもしれない。少なくともこの迷宮ダンジョン、最初と比べると明らかに弱体化している。


 ただ竜種ドラゴンは弱体化していないようだ。少なくとも私には弱くなっているとは感じられない。偵察魔法越しに見ても圧迫感はそのまま。


 やはり竜種ドラゴンと直接対決というのはやめた方がいいだろう。地道に竜種ドラゴン以外の魔物を狩りまくって迷宮ダンジョンを弱体化させ、消滅させる方針、継続だ。


 ただ雑魚敵が本当に雑魚ばかりになってきたし、数も減ってきた。だから竜種ドラゴンの勢力範囲以外の魔物を全滅させても魔素マナの減少はたいした事がなさそうな気もする。


 でも少しでも魔素マナが減るなら倒しておくべきだろう。だから私は端から順に空即斬を使ってコボルト等を倒していく。


 安いけれど毎日倒していればそれなりの褒賞金の額になる。コボルト1匹の討伐褒賞金はゴブリンと同額で小銀貨3枚3,000円。最低でも毎日200匹以上は倒しているから稼ぎは小金貨6枚60万円以上。

 

 うーん、私の日給、高過ぎ~♪ でもそろそろお金はいいからリディナに会いたい。真剣にお家が恋しくなっている。エルマくんを撫で撫でしたい。


 しかしもう少しでこの迷宮ダンジョンを消せる、少なくとも更なる弱体化を起こせる、そんな気がするのだ。だからこそ、ここで手を緩めず叩きまくっておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る