第29章 ちょっとだけ単独行
第242話 後悔先に立たず
アイテムボックス内の木材が残り少ない。せめて家が2軒建つ位は無いとどうにも落ち着かない。
そんな訳でゼアルさんの牧場へ雄山羊さん達を返した後、1週間だけお仕事を休んでアコチェーノへ買い出しに行くことにした。
今回は畑作業や山羊ちゃん達の世話等も考えて私の単独行だ。今の私なら街門で衛士に身分証を提示して会話する事も何とか出来る。だから問題ない。
バーボン君やヒイロ君達Wシリーズ、シェリーちゃんは農作業用に置いていく。農作業用アタッチメントもだ。
食料のストックはとりあえず共用自在袋に移せるだけ移した。だからリディナ達も困らない筈だ。食料は他にもリディナ用自在袋とか貯蔵庫に入っているし。
魔物の探索と討伐についてはリディナに頼んだ。
いつもはこのお家を中心に
「わかったわ。私でも
リディナも偵察魔法、かなり上達しているようだ。
万が一魔物を発見した際はバーボン君達を現場に走らせて討伐すればいい。私が遠隔で倒すよりは遅いけれど、それでも人が駆けつけるより遙かに速く現場に辿り着ける。
倒した後、素材にならない魔物なら魔法で焼いて魔石だけをゴーレムで回収。素材になる魔物なら後からゴーレム車で駆けつければ問題無い。
これで私も安心して出かけられる。
◇◇◇
朝、夜明けとともにお家を出発。
「それじゃ行ってくる」
「気をつけて下さいね」
「いってらっしゃい」
4人と1匹に送られて、ライ君が牽くゴーレム車は動き出す。
それでは早速魔法で進むとしよう。間に障害物があっても問題ない新しい高速移動、自称『縮地+』を起動。
思った以上に速い。魔法なしなら
きっと使う対象が自分や自分周辺だからだな。そう思いつつ縮地+を連続起動。あっさりカラバーラの街を通り越してしまった。
無茶苦茶な速度だ。新幹線並みかそれ以上かな。そんなもの勿論スティヴァレには無いけれど。
その代わり魔力消費はそこそこ。でも待てよ、ひょっとして……
カラバーラから北東へ数
私単独で縮地+を使い本気で移動する場合はどれくらいの速度になるだろう。それを試してみようと思ったのだ。
歩きながら縮地+を起動する。残念ながら速度はゴーレム車ごと移動させる時とそう変わらないようだ。その代わり魔力消費ははるかに少ない。どうやら移動させる物の重さと魔力消費が比例している感じだ。
あ、でも待てよ。身体強化魔法をかけて走りつつ縮地+を連続起動したら……
今の私はそこそこ体力が戻っている。これは日々の生活のおかげだ。何せ毎日、農場内を行ったり来たりするだけで
だから身体強化をしなくてもジョギング程度ならずっと走っていられる。これに身体強化をして、更に……
思った事で実行できるなら試してみるのが私の主義だ。そんな訳で早速実行。おお、これは速い。ゴーレム車の時よりも更に。
どうやら移動させるものが軽ければ軽いほど、そして移動する私自身が走る速さが速ければ速いほど、この縮地+は速度を増すようだ。
よし、それでは限界に挑戦してみよう。私は全速力で走るとともに縮地+を起動して……
◇◇◇
疲れた。本気で疲れた。動きたくない。
身体強化をしても全速力で走ると当然疲れる。いくら最近体力が上がったからと言って、調子にのって2時間近く全速力で走ると筋肉が死ぬ。
そんな訳で私は人里離れた廃道にゴーレム車を出し、中で横になって回復魔法と治療魔法を連続起動中。
この移動法、間違いなく速い。とにかく速い。冗談みたいに速い。
何せ今いる場所、以前リディナやセレスと寄った海の近くの廃道だ。
つまりアコチェーノまでの行程の8割以上は来ている。今朝お家を出てきてまだ昼にもなっていないのに。
ここで一休みをしても、夕方までにはアコチェーノに着けるだろう。
そうしたらとりあえずいつもの河原にこのゴーレム車を出して泊まり、翌朝に森林組合に行って木材を買って……
帰りはもう少しゆっくり移動しても2日あれば十分だ。筋肉痛になりたくないからライ君に騎乗する形でもいいかな。それだとどれくらいの速さになるのかまだ試していないけれども。
何ならこれからアコチェーノに行く時に、ライ君騎乗モードの縮地+を試してもいい。そうだ、そうしよう。
でもその前にお昼ご飯を食べた方がいいかな。リディナに3食食べるように言われているし。
アイテムボックスからリディナ特製のパンケーキサンドを出す。甘い生地のパンケーキ2枚にバターと水切りヨーグルトと蜂蜜を挟んだ禁断の代物だ。
でも今日は運動したしこのくらいいいだろう。出してそのままかぶりつく。うむ、この甘さがいいのだよこの甘さが。そして水切りヨーグルトの酸味と塩味もまた良きかな。
よし、私、復活! 筋肉痛も治療魔法と回復魔法の連続掛けのおかげで大分ましになっている。
では行くぞ。起き上がって立ち上がり、ゴーレム車から出る。ゴーレム車を収納しライ君を出して起動。
ライ君をしゃがませて背中に乗り、首横につけた騎乗用の取っ手を掴む。この取っ手はミメイさんの騎馬型ゴーレムを見て改良した部分。あと足が踏ん張れるようにつけたステップもそう。
さて、ゴーレム車を牽かない状態のライ君なら時速
実験、開始だ!
◇◇◇
ずたずた、ぼろぼろ。
そんな感じで私は歩いていく。
目指す建物はもうすぐだ。
ライ君の全力と縮地+はとっても速かった。
私&身体強化&全力疾走&縮地+と互角かそれ以上に。
ただしライ君に全力疾走させると乗る方も大変だ。
中腰になって曲げた足で身体のバランスを取り、取っ手を握る手で身体を支えるなんて形になる。
決してのんびり騎乗なんて優雅な状態ではない。
それでも速くて楽しいから、ついついアコチェーノの街門手前まで乗り続けてしまった。
降りて街に入って、ふと気づいたら全身が筋肉痛。乗馬とはどうやら全身運動だったようだ。正しくは乗馬ではなく乗ゴーレムだけれども。
あまりに疲れたので街門から入った直後、ゴーレム車を出して乗ることにした。ゴーレム車に乗り込むのですら、身体がミシミシ言っている気がした。
そしてゴーレム車で森林
ただ建物の中にはゴーレム車に乗ったまま入れない。降りて歩くしかない。建物に向かう一歩一歩が今は辛い。
河原に直行してそのまま休憩にすれば良かった。しかしもう森林
ずたずた、ぼろぼろ。何とか事務所の入口に到達。開けっぱなしの扉から中へ。
「こんにちは……フミノさん久しぶり、ってどうしたの、調子悪そうだけれど大丈夫?」
「問題ない、ただの筋肉痛……」
椅子に腰をかけた瞬間、動けなくなった。やばい、元々全速で走ったりして筋肉が疲れ切ったところに、更に追い打ちをかけてしまったようだ。
治療魔法と回復魔法を連続起動。駄目だ、もう足も腰も死んでいる。
「ごめんイオラさん。木材を買いに来たんだけれど、ちょっとここで休ませて……」
調子に乗ってやりすぎた。そう思ってももう遅い。後悔先に立たず、私はここで立てず……
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