第237話 明日の計画
サリアちゃんとレウス君が来て、1ヶ月ほど経過した。
3階建てのお家は2人が来た後、改築&増築をした。
今のままだと1部屋足りないからだ。
「どうせなら1部屋足すだけじゃなくて、もっと大々的に変えたらどうかな。たとえばこのお家と同じくらいの広さの建物をもう1つ建てるとか。リビングも大きくして、部屋数も倍くらいにして」
「あと、お風呂は温泉ハウスがあるからいらないですよね。その分リディナさんの食品加工用の部屋とか作るのはどうでしょうか」
リディナとセレスからそんな要望があったので、一気に大きくした。今までの建物と一体になるように、ほぼ同じ大きさの建物を組み合わせた。
2階と3階には寝室がそれぞれ3部屋ずつ増えた。階段は今までの建物部分にあるものを使うので、床面積的には同じでも部屋が多い。
1階はリビングとキッチンをそれぞれ広げた。他に専用の調理台も作ったし、貯蔵庫も増設。
「これだけ広いと作業をしやすいよね。貯蔵庫も広くて使いやすいし、これならもっと色々作れるかな」
リディナからは好評だ。
ただリディナ用の作業場は作らなかった。これは、
「1人で作業する部屋ってあまり好きじゃないかな。作業中でも皆がいるのを感じられる方がいいから」
というリディナの要望によるものだ。
またサリアちゃんとレウス君はまだ、3階の部屋で一緒にいる。
「レウスが1人で寝るのを怖がるので、もう少し一緒にいていいですか?」
との事だ。
「勿論それでいいよ。1人で大丈夫になってから引っ越せば。部屋はとっておくから。何なら隣同士の部屋に引っ越してもいいしね」
そういう事になっている。
なお2人にはエルマくんが大体くっついている。どうやらエルマくん、この家の後輩である2人を保護しているつもりのようだ。
エルマくんは歩く癒やし効果。そう思っているのは私が犬好きだからかもしれない。
でもサリアちゃんもレウス君もエルマくんにすぐ慣れたし、特にレウス君はエルマくんが大好きなように見える。一緒に遊んでいたり、一緒にお昼寝していたりなんて事までしているし。
私としては2人にエルマくんが取られたようで、正直少し寂しかったりするけれども。
そんなエルマくんのおかげか2人とも大分この家に慣れてきた。
今は、
リディナが文字や数字の勉強と料理関係
セレスが山羊の世話や家庭菜園の手入れ等仕事関係
私が魔法関係の勉強
という分担で教えている。
ただし進み具合は良くない。少しばかり難しい感じだ。
2人が寝た後、リビングでその話題になった。
「語彙が少ない感じかな。居所が転々としていたせいで友達が出来ずに、外の人との会話がほとんどなかったせいじゃないかなと思う」
リディナの意見を聞いて思う。なるほどそういう事もある訳かと。
「私の方は大分助かっています。2人ともよく働いてくれますし。これならコーダちゃんとセーナちゃんに子供を産ませてもいいですね。
ただ、こちらの指示には従ってくれるんですけれど、何か必死というか、言われたらすぐやらなくちゃという感じなんです。言う通りにしないと酷い目にあうと思っている。特にサリアがそんな感じです。
きっと今まで育った環境のせいじゃないかと思います」
確かにセレスの言った傾向もあるな。私は頷いて、そして口を開く。
「魔法もそう。灯火魔法と水を出す魔法、温度を上げる魔法は覚えた。でもその先はまだ。少し難しそう」
光る、水を出す等、具体的な説明はわかってくれる。ただ少しでも抽象的な事を言うと理解してくれないのだ。
語彙が少ないのも確かだ。想像する、という言葉を伝えるのすら難しかった。
「まあ、気長にやっていくしかないと思うよ。時間はたっぷりあると思ってね」
「そうですね。ここが安心できると感覚的にもわかってもらえるように、無理せずやっていくだけだと思います」
私も同意見なので頷く。2人の言う通りだ。
2人ともごめん、苦労かけて。そう言おうとしてやめる。
謝るのはきっと間違いだ。謝ってしまうとサリアちゃん達が迷惑をかけているという事になってしまう。
だからここはこう言うべきだろう。
「ありがとう」
「ううん、お互い様だしね。ところでコーダちゃんとセーナちゃんの種付けをするなら、明日、ゼアルさんのところへ御願いしに行こうか?」
セレスは頷く。
「そうですね。サリアとレウス、あとはエルマくんも里帰りに連れていってやれば喜ぶと思います。
畑の方はフミノさんとゴーレムのおかげで順調ですし」
7月頭、雨の季節が終わって1週間後に芋を収穫した。流石にゴーレム5頭でやると作業も速くて楽。
7月後半に入った今は麦畑だったところも含め、肥料を入れて耕して休ませているところ。
つまり豆が育っている所以外は一段落中。家庭菜園のトマト等夏野菜はもうすぐ収穫期だけれども。
「そうだね。フミノもそれでいい?」
「勿論」
私は頷く。
「あと、もう少ししたらコーダちゃん、セーナちゃんの世話をサリアとレウスに任せようと思うんです。そうすれば少しは自信もつくかなと思うので。勿論私もフォローしますけれど」
リディナが頷く。
「確かにそうだね。でも大丈夫かな」
「大丈夫だと思います。2人とも身体を動かす作業は覚えが早いですし、真面目にやってくれていますから。勿論2人の作業は魔法で見守ってあげるつもりです」
「じゃあ山羊ちゃんの世話を任せて見守ることにしようか。セレスに御願いしていい?」
「勿論です」
確かにそれはいい考えだなと思う。2人ともサリアちゃんとレウス君がどうすればいいか、考えていてくれて嬉しいし有り難い。
「それにしてもゼアルさんのところへ行くの、随分と久しぶりですね。牧場も大きくなっているでしょうか。
この村以外の開拓がどれくらい進んでいるかも見てみたいです」
「そうだね。何ならエルマくんをゼアルさんのところに預けて、少し街の方まで回ってみようか。サリアとレウスも買いたいものがあるかもしれないし、フミノの訓練を兼ねて昼食を食べてきてもいいかもね」
確かにそれもいいかな。そう思ったので私は頷いた。
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