第238話 農場の朝

 最近の朝食は典型的な朝食としか言い様のない感じになっている。

 サリアちゃんとレウス君にバランス良く食べて貰う為、リディナがそうしているのだろう。


 今日もやっぱり典型的な朝食風だ。


 主食はリディナが焼いた美味しいパン。今日のは大きな楕円形に焼いたものを1指1cmくらいの厚さに切ったもの。


 おかずのメインはベーコン&エッグ&チーズ。ベーコンは私が仕留めた魔猪イベルボアを使ってリディナが作ったものだ。


 更にサラダ、ポタージュスープがついている。


 サラダは菜っ葉、キュウリ、トマトと芋のサラダ。

 芋は茹でて潰し、脂身の無い赤身の肉を叩いた後オイル煮にしたものと混ぜ合わせ、塩と酢、ハーブで味付けしてある。

 この芋を他の野菜につけて食べる仕組み。

 

 ポタージュスープはコーンの甘みが効いたとろとろタイプ。

 甘みをつけたフレッシュヨーグルトがドリンクとしてついてくる。

 どれも美味しい。


 ベーコン以外全てうちの農場で採れたものを使っている。勿論野菜の種代とかはあるけれど、それ以外はベーコンを含めてほぼ無料。


 それでもそこそこ豪華でボリュームがある。私では食べきれないのでベーコン&エッグ&チーズやサラダ、パンを半分の量にして貰っている位だ。


 最近はサリアちゃんとレウス君も遠慮せず食べてくれる。それだけでも私達としては此処の環境に慣れてきてくれたようで嬉しい。


「さて、連絡です」


 セレスがそう言って、今日の予定を話し始めた。


「そろそろコーダちゃんとセーナちゃんのお婿さんの話を御願いしてこようと思います。

 食事が終わって山羊さん達を放牧したら、皆で牧場へ行きませんか。久しぶりにエルマくんも里帰りさせたいですし」


 勿論昨日話し合った通り。だから私もリディナもこの事は知っている。

 でもサリアちゃんとレウス君の手前、今初めて聞いた、という感じで反応させて貰う。


「そうだね。久しぶりにこの農場の外に出るから、ついでに街なんかも含めてゆっくり回ってこようか。買い物して、食事もして。

 エルマくんは里帰りついでに少しだけ牧場に預かってもらって。

 皆もそれでいいかな」


「いいと思う」


 簡単に賛意を示しておく。


「私達も一緒に行っていいんですか?」


 サリアちゃんがおずおずと、という感じで尋ねた。


「勿論。買いたい物があるなら街につくまでに教えて。レウスも。何か今、買いたい物、欲しい物で思いついた物、あるかな?」


「……特に無いです」


 うーん、この辺、まだ遠慮しているなと感じる。


「市場を歩いている時に見つけたら、その時でもいいからね。あとお昼はお店で食べるけれど、何か食べたい物、あるかな?」


「私達も行っていいんですか」


「勿論。レウスは何が食べたい?」


 リディナ、サリアちゃんだと遠慮すると考えて、レウス君に振ったな。


「うーん、ハンバーグ」


「それじゃハンバーグを食べられるお店にしようか」


 そんな感じで話が決まった。


 朝食後、リディナは帳簿作業や台所作業。


 セレスとサリアちゃん達は山羊の世話。エルマくんも一緒だ。エルマくんはこの農場の先輩格として2人を見守ったり手伝ったりしているつもりらしい。


 私は牧草の刈り取り作業とマスコビーの卵採取のため、一足先に牧草地へ。


 門を開けて牧草地へ。まずは山羊さん達がくるまでに牧草の刈り取り作業。


 本日刈り取る部分は門から入って左側奥、北東側がメイン。

 牧草は少しだけアカツメクサに似ている。ただ花がもっと紫で、茎が立って伸びたような感じ。

 この草の高さが膝より上くらいまで伸びている位が刈り頃だ。


 マスコビーが散歩している事があるので巻き込まないよう注意しつつ、草を芝生より少し高いくらいに残して収納する。


 なお日当たりや風通しのせいか、場所によって牧草の成長具合は結構違う。だから1回でまとめて刈るのは難しい。


 今回は3箇所ほど場所を変えて収納した上で草地全体を見回して確認。刈る程伸びている部分は無さそうだ。

 なら今日はこんなものでいいだろうと判断。


 この牧草は刈っても2ヶ月位したらまた伸びる。だから冬以外は場所を変えつつ刈って、乾燥させたりサイロに入れたりなんてしている訳だ。


 次はマスコビーの卵採取。これは割と面倒くさい。奴らは今や池の周りの樹上だけでなく、下の草地にまで住み着いているから。


 偵察魔法で慎重に探して、卵のある巣を発見したら卵の中を一応確認。中身が成長していると割ったときにとんでもない事になる。


 貯水池のまわりを樹上含めてしらみつぶしに探して、新鮮な卵を採取する。遠慮する必要はない。ここで根こそぎくらいに卵を採ったつもりであっても、何故かマスコビーは増えていたりするから。


 勿論マスコビーをタンパク源としていただくなんて事も可能ではある。しかし奴らもこの農場の一員、なのでどうにも可哀想な気がしてしまうのだ。


 マスコビー、決して顔は可愛くない。でも割と人懐こくて、そして煩くない。そして小鴨はやっぱり可愛い。だから何やかんやで肉にするのはためらわれる。


 その分、卵は残さずいただく。今はサリアちゃん達もいるので卵は出来る限り採っておきたい。


 とりあえず10個確保した頃、セレス達がやってきた。卵採取の時間、終了だ。


 山羊さん達がそれぞれ思い思いの場所へと散っていく。放っておくととんでもない場所に行く事があるので、見張りにゴーレムを置いていく。


 今日はバーボン君が見張り番のようだ。畑作業があるとき以外は、バーボン君とトロワ君はセレスが使っている。


 さて、いつもならここでエルマくんを置いていく。しかし今日は里帰り。だから帰り際、呼んでやる。


「エルマ、おいで!」


 エルマくん、はっと顔を上げて、そしてだだだだっとこっちへ走ってきた。うん、やっぱり可愛い。

 嬉しさのあまりじゃれつくエルマくんを含み、4人と1匹でお家へ。


「それじゃ着替えて一休みしたら出ましょうか」


 手を洗った後、皆で自分の部屋に戻って着替えて、そして出発だ。

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