第228話 カレンさん達の再訪
この辺りは比較的暖かい。おかげで冬でも牧草はそこそこ伸びる。
だから山羊さん一家、ノクトくん、アレアちゃん、コーダちゃん、セーナちゃんは今日も放牧。
ただ青草だけを食べさせると乳が美味しくなくなるそうだ。だから暖かいうちに刈って天日&魔法で乾燥させた干し草も食べさせている。
そのおかげか山羊さん一家は本日も元気だ。
コーダちゃんとセーナちゃんが乳を飲まなくなった後もアレアちゃんの乳は出続けている。
そして乳は何かと使い道が多い。最近のうちのおやつのほとんどはアレアちゃんの乳を使用している。水切りヨーグルトで作ったレアチーズケーキ風のものや山羊乳クリームなんてものも。
こういった加工品は基本的にリディナの仕業だ。私達の好みを知っているせいか、とにかく美味しい。濃厚さとさっぱりが両立する概念だという事を私はここで知ってしまった。うまく表現はできないけれども。
ただ山羊1頭分だけの量なので出荷はしていない。アレアちゃんが出す乳の量は1日あたり概ね
今日の朝食後、セレスは山羊の世話でリディナは加工品&料理。私は作業用の平屋でゴーレム製造作業。
今作っているゴーレムはローラッテの鉱山用。新しい銅鉱山部分、更に鉱区を広げるそうで、今度は一気に5頭の注文。
昨年より数が多い分早めに注文をしてくれたので、それに応えるべく製造を開始したところだ。
まずは部品を一気に作ってしまおう。補修部品の注文もあったので、その分も合わせて。アイテムボックス内で鉄インゴットをたたいて伸ばして加工して。そんな事をやっている時だった。
私達くらいしか通らないこっちに向かう道に、人2名の反応。すぐに誰かわかる。カレンさんとミメイさんだ。
カレンさんとミメイさん、どちらもゴーレム馬に乗っている。だから移動速度はそこそこ速い。この前のような魔法は使っていないが、このままでも
カレンさんにお願いに行ってから今日で4日目。領役所等での手続きが終わったのかな。
私は作業を中断。ゴーレムのシェリーちゃんを起動し、アイテムボックスから牧草地、セレスのところへ送る。
「セレス、まもなくカレンさんとミメイさんが来る。あと
「わかりました。それじゃお家に戻ります」
これでよし。私はシェリーちゃんを収納後、3階建てのお家のリビングへ。
こちらではリディナが食品加工中だ。素材は作ったヨーグルト。これに塩を混ぜた後、魔法で水分を抜き固める作業だ。
これを固めた後、数日熟成させるとほとんどチーズというか、チーズ以上に美味しい塊が出来上がる。
「リディナ、カレンさんとミメイさんが来る。あと
「わかった。それじゃ準備するね」
さて、それでは私も……特に準備する事はないか。わざわざ着替えるのも何だし。
リビングは掃除されていて、加工中の食品以外は片付いている。
だからリディナが今やっている色々を作業用テーブルごと自在袋にしまい込めば準備はOK。
麦芽飲料の香りがする。リディナがいれているのだろう。今日のお菓子は何になるのかな。
「戻りました」
セレスが帰ってきた。エルマくんも一緒に入ってくる。入口でセレスに足を拭いてもらい、中へ。
「カレンさん達が来るのはこの前のお願いの件ですよね、きっと。どうなんでしょうか?」
「多分大丈夫だと思うよ。ただカレンさんは申し訳ないと思っているかも。確かに領主の仕事と言えば言えない事はないから。
開拓でそこまでやる領主はまずいないけれどね」
なるほど。なら心配ないかな。
さて、カレンさん達が近づいてきた。そろそろ出迎えるか。そう思ったらリディナが動いた。
「それじゃお迎えしようか」
「そうですね」
私達はお家を出る。エルマくんも一緒だ。
ちょうどカレンさんとミメイさんが敷地の入口に入ったところだった。そこからここまで
カレンさん達が到着。ゴーレム馬から下りて一礼する。
「お出迎えありがとうございます。突然の訪問で恐縮ですが、少しお時間を取らせて頂いてよろしいでしょうか」
「ええ、どうぞ」
全員でお家の中へ。
「やはり落ち着きますね。此処は昔のままで」
「このお家は頂いた時のままですから。それでは簡単ですが、どうぞ」
温かい麦芽飲料とチーズケーキだ。定番だが悪くない。なおカレンさん分とミメイさん分だけでなく、5人分しっかりある。
エルマくんがセレスとリディナの間にちょこんと座っている。座っている時の頭の高さはセレスとそう変わらない。
ただし彼の分のチーズケーキは無い。甘い物は犬には良くないらしいから。まあ我慢出来たら後でセレスからおやつを貰えるだろうけれども。
「やっぱり美味しいです。アコチェーノの時もここでいただいた食事やデザートは美味しかったですけれど」
「同意。ところでこのチーズ、自家製?」
ミメイさんが気づいたようだ。
「正確にはチーズでは無くてヨーグルト加工品だよ。チーズと違ってレンネットを使わなくて済むから」
とりあえず、まずはお茶の時間。麦芽飲料はホットで甘みを加えたバージョン。ただし私のカップに入っているのは甘さ2倍仕様。私が甘いのが好きだとリディナは知っているから。
「飲み物も美味しいですね」
「同意。市販のものよりすっきりしているけれど薄くはない。おいしさ的にはずっと上」
なんてある程度食べたところで。
「さて、今日はこの前話して頂いた件をこちらからお願いする為に参りました」
カレンさんが切り出した。
「本来なら領主がすべき仕事をお願いしてしまう事になって大変申し訳ありません。ですが私達ではおそらくここまで出来ないでしょう。
今年は天候災害により国の中部で農作物にかなりの被害がでてしまっています。その為此処スリワラ領でも10月以降、入植希望者が急激に増加しています。
受け入れた入植者のうち開拓団に属していない者、特に技能を持たない者については現在、一時的に領主家で雇用して領内の街や住居、港湾拡張工事等について頂いています。
ですが農業を希望する者も多いですし、このままの状態は持続可能ではありません。ですのでどうしようか対策を考えているところでした」
なるほど。やはりリディナが言った事が現実に起きていたようだ。
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