第229話 場所の決定

「この前のお願いを受けて頂けるという事でしょうか?」


 リディナの言葉にカレンさんは頭を下げる。


「ええ、むしろこちらからお願いいたします。魔物退治をして頂いた上、更にお願いする事になり、申し訳ないのですけれど」


「とりあえず土地はまとめて押さえた。此処の西方向と南北の土地を一通り。東南地区、201番から210番まで」


 ミメイさんがそう言って地図を出し、テーブル中央に広げる。私達の土地である208番の南北側2区画ずつと、それより西側の5区画だ。


 全部を合わせると、地形的には緩い一つの大きな谷。緩すぎて標高差は最大でも2腕4m無いけれど。

 此処208番と203番が緩い谷の中心。201番と206番が北側の緩い尾根と接していて、205番と210番が南側の緩い尾根に接している。


「土地の確保、ありがとうございます。それで、開拓する順番と何処をどのような形で開拓するといった案はありますか?」


 リディナがカレンさんに尋ねる。


「出来れば一般用の小規模な区画を、3月くらいに間に合うよう、最初に作って頂ければ助かります。一般用の区画が出来次第移住して貰えば、そのまま耕作を始められますので。


 土地を農作業が出来る状態にして頂ければ、各入植者用の住宅はこちらで建てます。また道路についても場所さえ確保されていればこちらで舗装作業を行います。


 開拓団指導の件についてはセドナ教会の方に打診しました。『場所を用意して頂けるのは大変ありがたい。指導者は依頼があればすぐに派遣可能です』とのことです。


 セドナ教会の開拓団に提供する土地についても、移住者用と同じように農作業が出来る状態にして頂ければ、あとはこちらで整備します」


 全部OKか。流石カレンさん仕事が早い。


「ただこれだけの規模の開拓となると、此処だけで一つの村並みの大きさになります。ですので何処でもいいので役所の支所を置く場所を確保して頂けますでしょうか。


 そう広い場所でなくて大丈夫です。あくまで出先という事で、職員5~6名程度の予定ですから。勿論建物はこちらで建てます」


 なるほど、そういう施設も必要な訳だ。問題ない。何せ当初の予定より格段に広い土地を渡されたのだから。


「あと、土地を全部使う必要はない。フミノ達がやりやすい方法でやりやすい広さまでで。

 それに一応ここの土地を中心にした範囲にしたけれど、もしそうでない方がいいなら別の似た条件の土地も候補に入れてある。もしその方がいいならそちらの地図も準備済み」


「ミメイが土地の地下構造まで確認して選んだので、他の候補も此処と同等の環境である事は保証できます」


 何というか用意周到というか、流石というか……

 しかしこの場所で問題ない。元々そのつもりで計画を立てている。


「私はこの地図の場所で問題ないと思う。リディナとセレスはどう?」


「私はフミノがそう判断するならこの通りでいいと思うよ」


「私もそう思います」


 あっさり。まあ当初の予定通りだからそうなるだろうけれど。


「すみません。こちらで大変な事をお願いしてしまいまして」


「いえ、私達から申し出た事ですから。それにここまで体制を整えていただいてありがとうございます」


 話はあっさりまとまった。それでは明日から開拓作業、再開だ。

 今は幸い冬になるところで農作業は少ない。だから思い切りよく開拓にいそしむ事が出来る。


「ところで今日は、久しぶりに農場や牧場をゆっくり見たいけれどいい? あとエルマにお土産持ってきたけれど、食べさせても?」


 ミメイさんがそう言って自在袋から小袋を出した。さっとエルマくんがミメイさんの脇へと移動。


「物は何でしょうか?」


「豚肩肉の乾燥肉。私が作った。味付け添加物一切無し」


 セレスは頷く。


「なら大丈夫です。それではミメイさんからやって下さい」


 エルマくん、お座りして期待の目でミメイさんを見ている。

 ミメイさんが小袋から乾燥肉を取り出し、エルマくんの前へ。


「よし!」


 ミメイさんの声でエルマくん、強烈な勢いで乾燥肉をぱくついた。

 大丈夫かな、ミメイさんの指。うん、大丈夫だ。大丈夫だと思ってはいたけれど、あの勢いなのでつい心配してしまう。


「それではここを片づけたら皆で池の方へ行きましょうか。カレンさんはお仕事の方、大丈夫でしょうか」


「ええ。今日はこの後を空けてきました」


「ならゆっくりしていってください。アレアちゃん達も喜ぶと思います」


 早くも乾燥肉を食べ終わってしまったエルマくんがもう一度びしっとお座りしてミメイさんの方を見る。


 おっとミメイさん弱い。我慢できずにもう1切れ乾燥肉を取り出した。ミメイさんのよしという号令で、エルマくん、再び肉にぱくつく。


 おっと今度はエルマくん、ミメイさんに甘え始める。背中をすりすりしてひっついた後、ごろんとお腹を出して横になった。


 ミメイさんが笑顔でエルマくんのお腹をなでる。嬉しそうなエルマくん、床に背中をつけた状態でお尻で身体を動かし、更にミメイさんにくっつく。


 うーむエルマめ。おやつをくれる人をわかっているな。賢い奴め。


 あとミメイさん、結構動物好きな模様。いつもは表情をあまり変えないのに、今は笑顔でエルマくんと遊んでいる。

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