第226話 小石を投げよう
周囲を見回す。聖堂の中、私が作った祭壇の前だ。
さて、神様と対話した結果、方針は決まった。手を出そう。それが猛獣相手に石を投げる程度の行為であっても。
どうせ手を出すなら実のある結果に繋げたい。ならばどのような方法があるだろう。
頭の中で幾つか案を考え、構築してみる。不確定要素が多い。わからない事も多い。私だけでは構築しきれない。
しかし私は1人で悩む必要は無い。私には相談出来る仲間がいる。
だから大丈夫。私は自分に納得させるかのように小さく頷き、そして祭壇前を後にする。
聖堂を出て、そして仲間が待っている3階建てのお家へ。
「大丈夫? フミノ」
お家に入るなり、リディナにそんな事を聞かれた。
「問題無い。でも何故?」
「さっきフミノの魔力の気配が消えたように感じたから。ほんのちょっとの間だけれど」
どうやら私は身体ごと白い空間へ移動していたようだ。
ただ神様と対話していたなんて説明されてもリディナが困るだろう。だから説明は省略。
「大丈夫。ところでひとつ、リディナとセレスに聞きたい。
もし開拓済みの土地を用意して、困窮者の受け入れを条件に委託するとしたら、受け入れる組織はある?
「えっ? それって!」
セレスの驚きの声。
一方リディナは少しだけ考えた後、小さく頷く。
「出来ると思う。領主から生命の
「信用して大丈夫?」
「
多分この時点で私の考えている事はリディナにばれている。でもリディナはその先を言わない。私自身の口から言うべきだと判断しているのだろう。
「わかった。ならこういう計画、どう思う?
① カレンさんに御願いして、この近くの未開拓の土地を100人位養える広さ分、提供して貰う。
② 私のスキルと2人の魔法で一気にその土地を開拓する。
③ 開拓した土地をカレンさん経由で
これなら多分、多少の生活困難者が出ても何とかなる。魔法を使う開拓補助依頼ではないからギルドの関与も必要ない」
「出来るとは思うよ。でも……100人養える広さとなると、どれくらいになるんだろう。フミノのスキルがあれば出来ない事はないと思うけれど、それだけの広さの土地となると、カレンさんでも大変なんじゃないかと思う」
確かにそうかもしれない、そう思ったところだった。
「いいえ、大丈夫です」
セレスがそう言い切る。
「大規模に耕作をした上で、うちの農場のようにいくつもの種類の作物を同時進行で育てる。それなら普通の畑より遙かに狭い面積で多くの人を養えます。単一種類だけを耕作しているのと違って凶作のリスクを抑えられますから。
小麦だけを栽培しているなら横
100人なら……この大きさの畑が17面あれば足りますね。それなら土地の形さえ良ければ
もともとこの
あ、言われてみれば確かにそうだ。でも待てよ、それならば……
「なら開拓して畑作可能な土地を作って、1家族でも耕せる程度の広さに区切る。その後カレンさん達に御願いして一般家族単位の開拓民に渡すというのは?」
「効率上は単一の開拓団に劣りますけれど、出来る筈です。ただ法律や制度的な事は私ではちょっと……」
「……出来ない事は無いと思う」
今度はリディナの番だ。
「普通の開拓地でそうしないのは費用がかかりすぎるから。家族単位の分まで農地や道路、水利、あるいは家まで整備するといくら領主といっても費用がかかりすぎる。
でもフミノがその気になれば出来るかもしれない。この農場だって数日で出来たし。法律や制度上は問題はないと思う。勿論カレンさんに相談する必要があるけれど。
ギルドとの契約が必要な開拓補助依頼にも多分ならないと思う。一度私達の所有として、その後領主家に返還するという形を取れば」
それならば。
「なら両方を考えてみたい。勿論カレンさんに相談して土地の提供をして貰えればの話だけれど。
幸いこの付近はまだ私達以外入植していない。隣接の土地ならば水源もうちの池から川として引ける。更に井戸を数カ所作れば問題無い。
ただ2人にも協力して貰わないときっと無理。此処の農場だけでも大変なのに、更に忙しい事になるのは間違いない。それでも、いい?」
2人に問いかける。
「私からも御願いします。是非やりたいです」
これはセレス。
「なら勿論、私も賛成だよ」
リディナも頷いた。
「なら明日カレンさんのところへ行く前に、もう少し案を練っておこうか。小さな村くらいの人が住む事になるから、そこまで考えて。
場所はフミノの言う通りここの隣でいいと思う。その方が計画が建てやすいし、作業もしやすいしね。その条件でフミノは土地の高低を考えて、どう整地して水利をどう流すか。あとは整地した場所が崩れないような対策を含めて考えて。
セレスは1家族当たりどれくらいの広さが適切で、どんな畑や家が必要かを考えておいて。村として必要になりそうな施設については私が考えておくから」
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