第170話 台車の名前は銀●伝から
ヒイロ君、軽くして脚を伸ばした結果、運動性が数段向上している。加速もジャンプもかなりいい感じ。元のバーボン君とは比べものにならない。流石破壊工作員、いや違うか。
関節部分のベアリングを省略したが短時間なら問題なさそうだ。無論使用後のグリスアップは必須だけれども。
視界もかなり広い。ただその分距離感が掴みにくい。けれどそれは偵察魔法を併用すればいい。
「速いし動きが軽い感じだね」
「かなり軽量化した。元の4割以下」
4割減らしたのではない。4割以下に減らしたのだ。そこを間違えないように。意味が全然違うから。
「それで大丈夫なんでしょうか」
「ゴーレム車を牽いたり鉱石を掘ったりしなければ問題無い」
元々バーボン君は鉱山用ゴーレム。強度や運搬力を重視して作られている。その分軽量化できる場所は多い。
さてヒイロ君、魔法はどうだ。出てきたコボルトに対し空即斬を弱めに起動。この程度なら問題無い模様。
ならヒイロ君経由で偵察魔法を広域展開してみる。こちらも大丈夫そうだ。
なら更に激しい戦闘機動といこう。急加速、そのまま最高速度、急転回、そして空即斬!
大丈夫だな、これなら。要求性能通りだ。関節含めフレームにも問題は無さそう。
強いて言えば打たれ強さについて考慮されていない点が欠点かな。いわゆる紙装甲という奴だ。
しかし問題無い。当たらなければどうということはない。宇宙世紀の赤い人もそう言っていたし大丈夫だろう。
「性能的には問題無さそう」
とりあえず予定通りに出来たようだ。
「ならあと2台、作るのにどれくらいかかりそう?」
ふっふっふっ、聞いてくれるなリディナさん。
「組み立ては出来ている。起動魔法をかけるだけ」
「なら一度外へ出て休憩しようか。御飯を食べた後、私とセレスは訓練を兼ねて新しいゴーレムを使って討伐だね。そうすれば使い方にも慣れるだろうし」
そうか。私は集中していたので経過時間はわからない。でもリディナがそう言うという事は、きっとそれなりの時間なのだろう。
リビング用平屋を収納し、ヒイロ君を戻して収納。歩いて外へ向かう。
入り込んだ土砂の山を登って出口へ到達。検問所のところにいる騎士団の方に断って柵のある広場でゴーレム車を出し、昼食。
今回はフォカッチャサンド。中身は塩漬け肉とチーズと卵とトマトと青菜。何処で買ったかは忘れたけれどなかなかに豪華な一品。
「そう言えばテラーモの街でテイクアウトを買うのを忘れたかな。今度行った時に買いたいけれどいい?」
「勿論です」
「問題無い」
返答しつつ私とセレスは目で語り合う。リディナ、やはりその事が気になっていたのかと。
正直テイクアウト関係は余る程在庫がある。それでも新しい街へ行くたびに購入するのはリディナの趣味だ。
それにしてもリディナもセレスもよく食べる。マ●ドナルドのビッグマ●クなんて目じゃないくらいのボリュームがあるサンドイッチを3つも食べるのだ。私は1個で充分お腹いっぱいなのに。
これはやはり運動量の違いなのだろうか。
「休憩したらまた洞窟内、さっきと同じ場所で討伐再開ね。ただ今度はゴーレムを使える。だから交互にもう少し奥やわき道にゴーレムで入って討伐かな。1人というかゴーレム片方は必ず皆がいる処に残して。
フミノはまだ作る物があるんだよね」
「送り込み用台車。それほど時間はかからない」
これは単なる荷車でいい。私が操縦するヒイロ君で縮地をかけながら引張ればいいだけだから。どうせ壊されるからそこまで丁寧に作る必要もない。
「それじゃフミノの作業が終わったら、フミノに近場の防衛を任せてゴーレムで少し遠くまで行って討伐しようか。魔石回収だけなら自在袋1個あれば充分だしね」
「ゴーレムで自在袋を使える?」
「多分大丈夫だと思うよ。握れなくても触れる事が出来れば。自在袋そのものはゴーレムの何処かに縛り付けておく等すればいいし」
うん、ならその辺も少し考えておこう。
◇◇◇
翌日、
昨日と同じ場所に出した家で朝食を食べた後、ゴーレム車で
今回は北側の入口から入る。最初の日に入った方の洞窟だ。
路面から土砂が消えた辺りでゴーレム車とライ君を出す。あの他より太いわき道は結構遠いので、近くまではゴーレム車で。
なお今回は私がライ君を操縦し前方から来る魔物を攻撃、リディナとセレスはそれぞれ左側と後方の警戒&攻撃担当。
「ところでライ君のあの武装、いつ作ったの?」
おっと、リディナに聞かれてしまった。
今回、ライ君は右手に長い突撃槍、左手に円形の盾を装備している。魔法を使わなくとも魔物を倒せるように。
実はこの武装、ライ君を作った時に同時に作製した。
しかし実際に装備したところ存在感が強烈すぎた。魔物より数段恐怖をまき散らしそうな気がする。だから今まで装備しなかった。
でも今は洞窟内で他に見る人はいない。だからいいだろう。
「この前。今回は出来るだけ魔法を使わないよう、装備してみた」
「何か魔物より威圧感あるよね。確かに強そうだけれども
「そうする」
とりあえず
さて、あのわき道は出口方向に向けて口を開けている。不用心に近づくと口を開けている真ん前に出てしまう。だから手前
一度ゴーレム車から下りて、ゴーレム車とライ君を収納。そして反対側、つまり私達が入ってきた入口に向けて出す。いざ強力な魔物が出てきた際、全速力で逃げられるようにする為だ。
なおこの作業中も雑魚魔物、つまりコボルト類は出てきている。しかしその程度ならリディナやセレスが倒してくれるから心配はいらない。
それでは今回の主役と道具を出そう。ヒイロ君、デュオ君、トロワ君。そして強襲揚陸台車イストリア号だ。
周囲の魔物が一通り掃除された。それでは行くとしようか。
「この辺の防衛はフミノさん兼務で大丈夫ですか?」
「問題無い。ゴーレム2体までなら同時に動かすことも出来る」
この2日間、主に風呂場で訓練した。結果、ゴーレム2体、もしくはゴーレム1体と私自身なら同時に動かして戦闘をしても問題ない。更に必要なら見るだけの視点を1個追加して自由に動かせる。
これでもまだまだ精進が足りない。ヴィラル司祭は自分+ゴーレム3体が可能だったから。目指せ司祭を超えるゴーレムマスター、目標は複数ゴーレムによるオールレンジ攻撃! いや違うか。
「現場近くまで縮地を使って高速移動をする。ただ危険を感じたら逃げて欲しい。攻撃を避けるのが間に合わない可能性もある」
「わかったわ」
「わかりました」
デュオ君とトロワ君が台車の上に乗る。ヒイロ君の背中のフックに台車から伸びるロープを引っかければ準備OKだ。
「それでは強襲揚陸台車イストリア、発進!」
自分しか理解できないかけ声をかけ、私はヒイロ君経由で縮地を起動した。
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