第171話 セレスの最強魔法
ヒイロ君はデュオ君とトロワ君を乗せたイストリアを引っ張って走る。牽引力はあまりないが路面状態がいいのでそこそこ速い。
それに縮地を使っているので実際の速度はとんでもない。
途中にいる魔物は位置的に邪魔なものだけ空即斬で排除。それ以外を倒すのはこの速度では無理だから。
左へのカーブを抜ける。そこそこ急な下り坂を下り、更に左へカーブ。前方からの攻撃はまだない。
右側から同じくらいの太さの洞窟が合流する。更にその先で同じくらいの洞窟が左側から合流。
この先、ゆるい右カーブのすぐ先があの見えない場所だ。
前方に巨大な魔力の反応を感じた。来たか。
「散開」
リディナも気づいたようだ。声が真横で聞こえた。
ヒイロ君はロープを切り離して右へ。熱量の塊がヒイロ君のすぐ脇を通過。大丈夫、デュオ君もトロワ君も避けている。リディナもセレスも流石だ。
台車がどうなったかは不明。見ている余裕はない。どっちにしろ乗ったままでは的になるだけ。だからここからはゴーレムの足で走るしかない。
この状態では縮地を使えない。その分時間がかかる。それがどうにももどかしい。
一方でこのゴーレム車にコボルト3匹が近づいてきた。問題無い。リアル私による空即斬で片付ける。
ヒイロ君が前方に巨大な空間を感知した。逆に背後に感じていた今までの洞窟は存在を感じない。どうやら今まで見えなかった空間変異が起きている部分に突入したようだ。
魔物の反応がとんでもなく多い。そのほとんどはコボルトの類。しかし前方に明らかに違う大きな反応がある。
もうヒイロ君の視界でも確認出来る。全身が赤色で
異形としかいいようがない。少なくともRPGのキメラや神話のキマイラとは違う姿だ。
奴は翼をはためかせ宙に浮いている。飛行できるようだ。なら私が得意とする落とし穴作戦は使えない。
大量の土で埋めるのでは洞窟が塞がってしまう。ここは空即斬で攻めるべきだろう。
空即斬を強めに起動。だが奴に到達する直前で何かの力に弾かれた。
空即斬は防御不可能な魔法の筈だ。なのに何だこれは。
頭が
「空即斬は効かない。弾かれた」
「弱点の属性でないと効かないのかもね。でも一応やってみる。皆離れて。駄目ならセレス、お願いね」
リディナ、いやデュオ君自身も
だが此処でデュオ君へ攻撃されたらまずい。だから私は効かないと知りつつも空即斬を連射する。奴の目をヒイロ君にひきつけるように。
3回目の火弾も縮地でかわす。付近にいるコボルトが数匹まとめて倒れた。しかし味方に被害はない。
デュオ君が魔法を起動、
でも駄目だ。感じている中心の魔力はそのまま変化無し。
やはり埋めるしかないだろうか。そう思った時だった。トロワ君から強烈な魔力の反応を感じる。セレスだ。
「
実際には私のすぐ横にいるセレスの声が聞こえた。効いている。嵐の中心にいる
やはり弱点属性の魔法は効果があるようだ。
嵐が終わって景色が静止する。
中心には巨大な氷柱が立っていた。中心にはあの
大丈夫かな。魔物の場合は活動停止状態と死亡状態の違いがわかりにくいんだよな。そう思いつつ魔力が吸い取られたらすぐ戻せるよう注意してアイテムボックスへ。
問題無かった。死んでいたようだ。無事収納完了。
「セレス、今の魔法、何?」
「基本的には水属性レベル5の
ふっと倒れかけるセレスをリディナが支えた。
「魔力切れね。でもこれで一安心かな。当座の危険は無くなったし」
「見事だった」
魔力を付加すれば弱い魔法でもそこそこ威力は強くなる。それを利用して水属性レベル5、おそらくセレスにとって最強の攻撃魔法に、更に全魔力を付加して勝負に出たのだろう。思い切りの良さと勝負勘は見事だ。
「トロワ君を回収」
操縦者が気絶したのでトロワ君も動きを止めている。だからアイテムボックスへ回収だ。
「あとは残った魔物のお掃除かな。私が
「わかった」
「それじゃデュオ君も回収お願い。私はライ君と私自身で対処するから」
ならばという訳でデュオ君も回収。ついでに今の戦闘で倒しまくったコボルトの破片や魔石も回収。
強襲揚陸台車イストリアは残念ながら跡形も無い。最初の
リディナが最後部をベッド化し、セレスを横にして布団をかけている。魔力切れだが他に身体の異常は無い。数時間もすれば目覚める筈だ。今回の殊勲者だしそれまでゆっくり寝かせておいてやろう。
さて、それでは残った魔物の掃討と地図作製をするとしよう。テーブル上に紙とペン、インクを出しながらヒイロ君を動かす。
ゴーレム車の警戒はリディナがやってくれる。だから私はヒイロ君経由で偵察魔法の視点を2つ起動。周囲をじっくり走査。
うんうん、コボルトだけではない。オークやトロルなんて素材が取れて褒賞金も高い魔物もわんさかいる。稼ぎ時という奴だ。
それでは地図を描きつつ、少しばかりヒャッハーしよう。依頼達成の為だけではない。私達パーティの収入の為にも。
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