第18章 再会の季節
第144話 私にはあわない街?
予定通り昼1の鐘で開拓村を出発。
ゴーレム車の中ではリディナとセレスが複写機魔法を練習中だ。
「紙と銅板を通して下に書いてある事を見るの、難しいです」
「確かに難しいよね。私の場合はどうしても紙に穴があいちゃう」
リディナもセレスも苦戦している。しかしそんなに難しいだろうか。私は思いついてすぐ出来たし、ヴィラル司祭も教えたらすぐ出来たし。
ただ私はコピーという概念を知っている。ヴィラル司祭は元エールダリア教会、つまり魔法の専門家だ。
だからきっと2人の方が普通なのだろう。
「セレスはまず監視魔法で銅板を見る事を意識する。その後にゆっくり見たい場所を下げればやりやすいかもしれない。
リディナは温度を上げるのは色が変わる直前まででいい。黒くなるまで熱を上げなくても色は変わる」
「そうなんだけれどね。熱関係の魔法であまり力を微調整するなんて事していなかったから、そこが結構難しいのよ」
「私は空属性の魔法、ほとんど使っていませんでしたから。獲物を探すのもフミノさんやリディナさんに頼っていましたし」
なるほど。私の場合は空属性魔法が得意で、モノづくりで熱魔法も多用する。だから複写機魔法が簡単に使えるのかもしれない。
ただ私自身もまだまだ魔法について精進が足りない。未だに攻撃魔法が使えないし、ゴーレム関係だってそう。
実はヴィラル司祭に最後の最後に尋ねたのだ。ゴーレムを何体同時に使えるかを。
「いただいたイーノック含めて3体までですね。それ以上を同時起動するとどれかの動きが止まってしまいます……」
更に詳細を聞いたところ、自分自身が自由に動けて、更にゴーレム3体を自由に動かせるという事のようだ。会話等も自分含めて4カ所で同時に出来るらしい。
一方で私は操縦している間は読書すら出来ない。レベルというか鍛え方の違いを思い知らされてしまう。
今すぐヴィラル司祭の真似をするのは無理だ。とりあえずは自分+ゴーレムの2体同時制御が出来るように頑張ろう。そしていずれは12機の
さて、ゴーレム車は順調に走っている。
もうこの先上りはほとんどない。街道はこの先、平原に出るまでほぼずっと下り坂。
このペースだと平原の始まりくらいの部分で宿泊かな。そして明日の昼過ぎにはラツィオに到着出来るだろう。
さて、順調なのはいいが残念な点もある。
開拓村を出て1時間程度のところから魔物や魔獣の気配が一気に減った。おかげでほとんど稼げていない。
何故魔物がいないのだろう。リディナに聞いてみようかな。
「この辺ほとんど魔物や魔獣がいない。何故だろう」
「あ、もう王都管理区域内に入ったんだね」
やはりリディナは知っていたようだ。
「管理区域って何?」
「
それなりの戦力が常駐していないと出来ないからスティヴァレだとラツィオ近辺とロンバルド近辺、あとウェネティ近辺の3カ所だけかな。
もう少し詳しいことが知りたければ多分百科事典に載っていると思うよ」
「ありがとう」
なるほど、そういう事も出来るのか。でもそれならばだ。
「ならラツィオでは冒険者は仕事が無くなりませんか?」
私が思ったのと同じ事を先にセレスが質問した。
「そうね。生成した魔物の処理は騎士団がやっているから討伐系の仕事はほとんどないんじゃないかな。護衛もあの辺の貴族や大商人は専属でいるだろうし。遠方への荷物運搬くらいかな、依頼があるとすれば。
私もラツィオの冒険者ギルドは行った事がないから自信ないけれどね」
おお、なんという事だ。
「なら買い物したら移動した方がいい?」
「そうね。儲かりそうな事はないだろうし、街が大きいから外に泊まるというのも難しいだろうしね」
理解した。つまり私向きの街ではないという事だ。
「ただ街が大きいし国の研究機関等もあるから売っている物は種類が豊富だよ。図書館も国内で一番大きいのがあるしね。だから1泊2日か2泊3日くらい宿に泊まって、その辺じっくり見ればいいと思うよ」
なるほど。そういう場所なのか。流石リディナ、よく知っているなと思う。
「リディナさんはラツィオに行った事があるんですか?」
「何年か住んでいたかな。ただ行動範囲はそれほど広くなかったからそんなに詳しい訳じゃないけれど」
今まで聞いた話から考えるとメイドになる前、学校の寄宿舎にいた頃の話だろうか。でもこの辺の話をリディナから聞いた事はない。
なら聞かない方がいいのだろう、きっと。本人が話してくれるまでは。
ただ久しぶりに宿に泊まるなら気になることがある。
「個室がとれて風呂を借りられる宿、あるかな」
「ラツィオは高い宿が揃っているから心配いらないかな。3人隣り合った個室をとって、2泊なら正銀貨9枚くらい。そのクラスなら風呂も当然あるよ」
「そんなにするんですか!」
「高い方はきりがないけれどね。お風呂があって個室を借りられるのはそのくらいが最低線かな。勿論もっと安いところもあるだろうけれど、そういった宿は場所があまり良くないしね」
「そんなところ私も泊まっていいんでしょうか」
「合計でゴブリン30匹程度。問題ない」
どうも私は金額をゴブリン換算してしまう癖がある。何せ間違いなく一番多く狩っている魔物だから。
「ゴブリン30匹ってかなり多いですよね」
「それでも開拓村周辺で2日間討伐して、それ以上倒したよね。他に魔猪や魔熊も」
「あ、確かにそうですけれど」
「だから大丈夫だよ。それにラツィオを出たらまた討伐をすればいいんだし。
ところで今回の目的は魔法金属の購入だけれど、他に行きたいところはあるかな。図書館はまあ行くとして」
そうだ。私は思い出した。
「布でカバーみたいなものを作ってくれるようなお店に行きたい。作ってもらいたいものがある」
「どんなものを作って貰うの? 布団のカバー?」
いや、確かにいい布のシーツも欲しいけれど今回はそれではない。
私は木で作った人駄目ソファーの模型を出す。
「中に詰め物を入れるとこんな形になるよう、袋状のカバーを作ってもらいたい。布はできるだけ伸び縮みする素材で。中に入れるのはこれ」
コルクもどきで作ったビーズを出す。
「この小さなのを入れるの?」
「そう。これを大量に作って入れる。そうすると座り心地のいいソファーになる筈」
「それもフミノの国にあったもの?」
「そう。通称人を駄目にするソファー」
「何なのそれ。前に聞いた気もするけれど」
そう言われても困る。そういう代物なのだ
「わかった。裁縫店に行って頼めばいいのね」
「わたしもその辺は行ってみたいです」
2人がそう言ってくれれば安心だ。
何せ私、そういった事は全くわからない。神様から貰った大事典にもその辺までは書いていなかったし。
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