第145話 ラツィオ到着
翌日。
11の鐘より少し前にラツィオの街門前に到着。しかしすぐには入れない。街に入ろうという人や馬車等で長い列が出来ている。
列の最後尾にゴーレム車を移動させている途中、セレスがリディナに尋ねた。
「魔物や魔獣がいないのにどうして立派な街壁があるんですか」
確かに私も疑問に思う。
村壁や街壁は普通は魔物や魔獣から街を守るためのもの。それらがいない管理区域には必要が無い筈だ。
かつて魔物がこの辺にいた頃の名残りだというならわからないでもない。でもそれなら街門を開放してもよさそうに思う。
「犯罪者や政変、戦争対策よ。王都だから出入りする人の確認が厳重なの」
「私達は大丈夫でしょうか」
「正規の身分証があって犯罪歴が無ければ大丈夫。だから私達は問題ない筈よ。
ただこの長さだと1時間くらいかかるかな」
列はどう見ても
「私とセレスで交代で外に出ているね。外に1人いないと順番を抜かされる事があるから。フミノは中で私達に合わせてゴーレム車を前進させて」
「ありがとう」
列なんていう前後に人がうじゃうじゃいる環境、私にはかなり辛い。だからリディナとセレスに頭を下げる。
「フミノさんはここまでずっとバーボン君を動かしてくれていますから」
「そうそう」
「ありがとう」
私はもう一度頭を下げた。
◇◇◇
やはり城門から入るのには1時間かかった。昼12の鐘が聞こえたから間違いない。
「さてどうする? 早めに宿屋を確保する? それとも買い物を優先する?」
「裁縫店が先の方がいいと思います。特注でお願いすると時間がかかるので。早く注文すればその分早く作って貰えますから」
なるほど。セレスの言う通りだな。そう思ったので私は頷く。
「ところで裁縫店ってどの辺?」
土地勘が無いのでその辺全く分からない。
「もう少し真っすぐでいいかな。そうすると広場に出るから、そこから左。そうすると市場街の入口に出るから、そこでバーボン君達をしまって歩きね」
「わかった」
事前に行きそうな場所について調べているのか、元々この街を知っているのか、それとも街の構造なんて見る人が見ればわかるのか。
新しく訪れた街でもリディナの言う通り行けば行きたい場所にたどり着く。今まで常にそうだった。
だから今回も特に気にせずリディナの言う通りゴーレム車を動かす。
「歩く人がパスカラより地味ですね。王都だからもっといい服を着た人が多いと思っていたのですけれど」
通り行く人をゴーレム車内から見てセレスがそんな事を言う。
「この辺は下町だからね。貴族やお金持ちはこの先、少し高くなった辺りに住んでいるよ」
「それでももう少し色気のある服装をしてもいいと思います」
「エールダリア教会の影響も大きいのかな。教義で華美な服装を禁じていたからね。信仰していたのは主に貴族だけれど、その関係の仕事をする人達も服装をあわせていたから」
「開拓村ではそんな事を感じませんでしたけれど」
「あそこにいたのは教会でもかなり穏健というか、まともな人達なんじゃないかな。そうでない連中は国外追放か、何処かへ逃げたとかで。
何せ濃いめに染色した服を着ていると、神の教えにそぐわないとして没収されたりしたらしいしね。更に免罪祈祷料としてお布施をとられるとか」
何だそのあくどいコンボ技は。
「そんな事までしていたんですか」
「私も聞いた話だけれどね。他の教会ではそういう事はないと思うけれど。
少なくとも
うーむ、リディナ、よく知っている。
さて、リディナがさっき言ったとおり広場を左折。そうすると私の偵察魔法でも市場街らしき場所がわかるようになった。
なるほど、ここだな。そう思った場所でバーボン君を停める。
「この辺?」
「うん。ありがとう」
ゴーレム車を降り、バーボン君とゴーレム車を収納。市場街に入る。
やはり人が多いので私は落ち着けない。恐怖耐性は耐えられる
「ところでリディナさん、裁縫店でおすすめってありますか?」
「場所的にはこの先、少し歩いたところの左側の路地。幾つか裁縫店が並んでいたと思う。ただおすすめまではわからないかな。この辺で買い物をした事がないから」
この言い方だとリディナ、この街そのものは知っている感じだ。やはり学校の寮にいた頃の話だろうか。
セレスは歩きながらそっちへ視線をやる。
「見えました。なら私が店を選んでいいですか」
「お願いしていいかな。私はあまりわからないから」
「任せて下さい」
うーむ。こんな遠方の知らない街で、しかも生鮮食品とは違う分野でもセレスは店の良しあしとかが分かるのだろうか。
セレスも偵察魔法を使える。だからこの場所からでも店の中を見たりする事は可能だ。
しかし私が偵察魔法で見ても店にそう差があるように見えない。その辺は何かポイントがあるのだろうか。
ゴーレム車の中で人駄目ソファーについての要求事項については話してある。だからどのようなものを選ぶべきかはセレスもわかっている。
だからここはセレスに任せよう。私はどうせ何もわからないから。
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