第108話 お買い物の日
まずは市場で食べ物のお買い物。雨期だからしばらく買い出しをしなくていいようにかなり多めに購入。
次は古着屋。セレスの服を取り敢えず5着購入。セレスは遠慮したが無視。洗い替えの為にもある程度の数は必要だ。
更に鍛冶屋街でも買い物、これは私がゴーレム改造や他の工作に使う為で、これもやや多めに。
この時点で11の鐘を過ぎたので、市場で買ったテイクアウトをゴーレム車内で食べる。
「ごめん。私が人が多いの苦手だから」
私がいなければ食堂等で食べられる。だから2人に申し訳ない。
「この方が落ち着けるから私も楽です。それにこれ、その辺の食堂よりずっと豪華だと思います。こんなのお昼から、私も食べていいんですか?」
「他の人が作った美味しいものを食べないと美味しい料理を作れなくなるから。セレスも美味しいものをたくさん食べて美味しいものが作れるようになって貰わないとね。だから遠慮しないでしっかり食べる事」
今回食べているのは
一品料理の一品はカプナタと呼ばれるナスと貝、エビが入った揚げ煮。味は甘くて酸っぱい。勿論美味しい。
もう一品はカチャタラという肉と夏野菜のワイン煮込み。これは塩とハーブで味付けしてある。美味しくない訳が無い。
一品料理最後の一品はフリット。これは白身魚を揚げたもの。当たり前だがまずい訳がない。
他にはジャガイモとひよこ豆、チーズが入った白い濃厚なスープ、以前私がはまったスティックサラダ、パンという内容だ。
どう考えても昼飯にしては豪華。ただリディナの言い分も理解できるし美味しいのはいい事だ。だから反論はない。
こういった出来合いのおかずはデーリシーと呼ばれ市場の専門店で売っている。自分で作るのと比べると結構高いが美味しいしつくる時間を節約できる。だから共働きが多いこの国の人はよく使っているようだ。
お腹いっぱいになったら眠くなるがあと一仕事のこっている。図書館での買い出しだ。
今回は図書館に長居をするつもりはない。セレスがまだ文字を読めないから。長居をしたらやることがなくて可哀そうだ。
さて本当は図書館でセレス用に文字勉強用の本を買うつもりだった。しかし見たところ、ここの図書館にはそんな文字学習用の本が無い。
更に言うと教科書や参考書のような初等教材的な本が全くない。国語も算数もそれ以外の教科関係のものも。
この図書館には無いけれど他にはあるという訳でもなさそうだ。街が大きいおかげかここの図書館はそこそこ大きい。本も揃っていると感じる。
「この図書館に教材的な本がない。リディナは学校で勉強した時どんな本を使った?」
よく考えたらスティヴァレ語には教科書という単語もない。だから教材的な本という言い方をする必要がある。
「最初、文字を勉強する時はエールダリア教会の聖書を使ったかな。他の科目は先生の指導通りに本を読んで、先生が言った事をノートに書くという感じだよ」
「その本ってどんな本?」
「歴史はエールダリア教会の本だったな。聖暦何年、エールダリア教会はイギタリス2世にアレマニア国王の称号を与えた、なんて教会中心の歴史記録。地理も同じ感じだよ。エールダリア教会南教区にあるスティヴァレ国は……という感じ」
うーむ、すべてが教会中心の教育か。強烈なプロパガンダ教育をやっていそうだ。もっとも教会の権力介入が酷すぎて支持者はほとんどいない様子だったけれども。
とりあえず何となく状況はわかった。予定変更だ。
「ここでは挿絵が多く文字数が少ない本と、同じく絵が多い実用書を買って行こう。あとは簡単な辞書も欲しい。
他には市場で紙と鉛筆をまとめて買いたい。滑りのいいペンとインクも」
「何か思いついたの?」
「効率のいい教材を考える」
文字や計算のドリル等だ。私の自作でも何も教科書的な本が無い状態よりはましだろう。
何なら神様から貰った大事典を翻訳するなんてのも悪くない。あれは基本的かつ実用的な知識がわかりやすく載っているから。
そんな作業をするとゴーレムを操縦できないから移動できない。でも急ぐ旅ではないし別に構わないだろう。
雨期の間は討伐のような外作業はしたくない。なら快適なおうちに籠ってお勉強専念というのもありだ。
どっちにしろ、しばらく此処に滞在するつもりだった。お家も3人用に改装しないといけないし、ゴーレムのバーボン君も改良したいし。
「何か思いついたみたいね。わかった。面白そうな絵本と絵や図が多くて冒険に役立ちそうな本を探すのね」
勿論私やセレスも一緒に探す。セレスは文字は読めない。でも実際に勉強する本人だし、この絵が好きとかこの分野を知りたいとかその辺興味を持てる部分を聞きたかったから。
2時間くらいかけてセレス勉強用の本を選び、ついでに私とリディナ用の本も2冊ずつ買って合計
「いいんでしょうか。私の分の本だけで3週間は余裕で生活できる額ですけれど」
「気にしないで大丈夫だよ。昨日の件でお金がかなり入ったしね」
「でも私まだ全然役に立っていないです。出来る事もほとんどありません」
「昨日の夜だけであれだけ魔法を使えるようになったでしょ。まだまだ覚えられる魔法はあるしね。
それに取り敢えず帰ったら早速昨日おぼえた魔法で料理を手伝って貰うから。もう魔法で水を出したり熱を加えたりできる筈だからね」
その間に私は教材つくりをやってしまおう。取り敢えず文字と数字をおぼえてもらうところからだ。
後は文字の練習帳なんてのもいいな。あとは計算帳も。とりあえず思いつくものを作ってセレスとリディナに見て貰えばいい。
「なら市場に戻ろうか。紙と筆記用具の他に買いたいもの、ある?」
「特にない」
「セレスは?」
「ありません」
「ならさっさと買って帰ろうか。ここまで結構時間もかかったしね」
私とセレスは頷いた。
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