第71話 ステータスシートの説明

 ノックの音が聞こえた。ミメイさんだ。


「どうぞ」


 ミメイさんはあがって周りを見回す。


「この小屋も収納していた?」

「今日作った。ログハウスを実際に作ってみたかったから」


「この街を出る時、どうする?」

「持っていける。問題ない」


 ミメイさん、驚いたようだ。声は出ていないが雰囲気でわかる。


「そんなに持てる?」

「自分でも何処まで持てるか不明。まだ余裕」


 ミメイさんにならばらしてもいいだろう。そう思ったので言ってしまった。

 彼女は何というか、呆れたという表情になる。


「想像以上に規格外」

「まあそうだよね。私もそう思うもの」


 リディナ、ちょっと待ってくれ。

 実際には私よりリディナの方がよっぽど多能だ。攻撃魔法も使えるし料理も出来るし普通に他人と話せるし。


「私が特別なのは収納だけ」


 そう、私が特別なのはアイテムボックススキルだけなのだ。


「人の魔法適性を知ることが出来るのも充分特別」

「だよね。私もそう思う」


 ミメイさん、私のリディナを取らないでくれ。勿論単に会話の流れでそうなっているのはわかるけれど。

 それでも私は少しもやもやしてしまう。ひょっとして私、嫉妬しているのだろうか。女の子同士なのに。


 確かに私には病んでいる自覚はある。でもそこまでではないと思いたい。そんなしょうもない事をふと考えたりする。

 どうもいけない。取り敢えず邪念を追い出して本でも読もう。


「夕食は大丈夫? 手伝う?」

「大丈夫よ。もう出来ていて並べるだけ」


 本に集中できない。リディナとミメイさんの会話が気になる。


 私はリディナに執着しているのだろうか。リディナを独占したいのだろうか。そこまで私は病んでいるのだろうか。それとも単に考えすぎなのだろうか。


「ところでフミノ、カレンさんの魔法適性、大丈夫そう?」

「大丈夫。さっき確認の為見ておいた。どの属性も最低レベル1はある。問題ない」

「でも、そうだとすると今のところ全員、どの属性も最低レベル1は適性を持っているよね。それってたまたまなのかな。それともどんな人でも全属性に対して最低レベル1の適性は持っているのかな」


 それは考えた事は無かった。いや、当初は私も魔法適性は全員が持っているものと思っていた。でも魔法の本を読んでそうでもないのかと思いなおしたのだった。


 確かに今のところはリディナの言う通りだ。ただ結論を出すにはデータが少なすぎる。


「そこまで多くの人の適性を見た事がない。だからわからない」

「そっか。そうだよね」

「でもこれから気にしておけば、ある程度はわかるかもしれない」


 ステータスは見ようと思えば簡単に見る事が出来る。でもそれは私だけらしい。


 そこでふと思った。本当に私だけがステータスを見る事が出来るのだろうかと。

 ステータス閲覧はスキルにも載っていないし魔法でもない。少なくとも私のステータスにそんな表記は無い。なら、ひょっとして……


 気になった事は確認せずにはいられない。昔はそうでもなかったけれど、この世界に来てからそうなってしまったのだ。だから早速リディナに聞いてみる。


「リディナ、ステータスってわかる?」

「社会的地位とか身分って意味だよね」


 リディナは英語を日本語に直訳した場合と同じように捉えているようだ。


「この場合のステータスとは個人の能力や状態のこと。具体的にはこんな表形式にして見たりする。これから例として私の能力と状態を占めるステータスシートを書いてみる。厳密に細かく見ると更に出てくる。今書くものはよく確認する能力や状態だけをまとめたもの」


 口で説明する自信がない。だからステータス表示を紙に書いて説明しよう。あ、でも偏差値表示を説明するのが面倒だな。というか標準偏差なんて説明できない。その辺含め表示がわかりやすくならないかな。


 そう思ったら見えているステータスの表記が少し変わった。おっとこんな事も出来るのか。初めて知った。何事も試してみるものだ。


 今回の表示では能力値は英文字表記ではなくこの世界の文字表記。数値も偏差値ではなく、下から数えて何パーセントかという値だ。

 これなら説明は楽だな。そう思いつつ紙に記載していく。


『氏名:ツツイ・フミノ 14歳 女性 

 生命力:155 魔力:320 腕力:85 持久力:91 器用さ:95 素早さ:88 知力:93

 職業:冒険者 装備武器:なし 攻撃力:42 装備防具:なし 防御力:34

 使用可能魔法系統: 地:2 水:3 火:3 風:2 空:4

 使用可能魔法:踏み固め(2)、掘削(2)、突き固め(1)……

 スキル:アイテムボックス(極3) 自然言語理解(5)……

 状態異常:対人恐怖(3)

 称号等:討伐専門 ゴブリンの仇敵 魔狼の敵 カウンター荒らし 引っ込み思案 ……』


 魔法は全部書くと長くなるから省略。あと称号についてもかなり省略。実は称号にリディナ依存症なんてものもある。でも流石にこんなの本人の前で明らかに出来ない。


 書き終わったものを2人に見えるように置いて説明を開始。


「私が見ているもの、実際は魔法属性の適性だけではない。こんな感じで能力全般を見ている。上から説明する。生命力は文字通り生きる力。怪我や病気で減っていって、ゼロになると死ぬ……」


 喋るのは苦手。でも仕方ない。何とか頑張って項目をひとつずつ説明していく。

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