第52話 気になる依頼
小さい2階建て、大きい2階建て、そして最小1階建て。私は3種類の説明を何とか無事終え、ほっと息をつく。
大きい2階建て案は組み合わせタイプではない。単独で広い個室にそこそこ広いリビングダイニング、風呂、トイレ付きだ。
組み合わせタイプだと接合させるのが面倒だ。土地も綺麗に整地しなければならない。さらに組み合わせた際余分な力がかかって痛むかもしれない。そう判断したから。
小さい1階建ては作り付け2段ベッドの棚部分もお願いする。このサイズならお金が足りないという事はないだろうから。
それにプロが作るなら私が作るよりも頑丈でいいものが作れるだろう。マットは持っている物を使う予定。
「わかりました。それでどの程度の見積もりを致しましょうか。簡単なものでよければ1時間程度で1件
外見や内装のイメージまで描いたものでは半日、今からなら午後3の鐘までお時間をいただいて1件
「どうする?」
そう尋ねるリディナに小声でお願いする。
「簡単な方で。3件とも」
本当は小さい方の2階建てをすぐ作って貰いたい。でも持ち金で足りない可能性もある。その場合は仕方がないから一番小さいの優先だ。
「それでは3件とも、簡単な方でお願いします」
リディナの台詞にお姉さんは頷いた。
「わかりました。それでは1時間後、10の鐘が鳴り終わった頃までに仕上げておきます」
「それではお願いします」
私達は森林
「それでどうする? 1時間だと買い物も中途半端だし、もし何なら冒険者ギルドの方を見てみない?」
「何故?」
「討伐以外に何か出来そうな依頼がないかみてみようと思って。この時間ならそれほど冒険者もいないでしょ」
なるほど。勿論運搬と討伐以外の依頼を受ける気はない。しかしもし一番小さい方の野宿小屋を建てる料金が今の持ち金より高ければ、運搬以外の方法でお金を稼ぐ必要がある。
それにどうせ半端な時間だ。なら少しでも知っている場所の方が安心できる。勿論冒険者が大勢いるなんて事がなければだけれども。
こうやって街中を歩くと思い知らされる。私は冒険者にも向いていないなと。人が怖いだけではない。方向音痴でもあるらしいのだ。
私は偵察魔法を常時展開している。自動で危険を知らせるモードだけではない。周囲の状況も意識下においている。自分の上空から下に向かって眺める形で。
だから街の外で迷う事はまずない。川や海が見えるし、道を外れても街道の場所ははっきり上から見えるから。
しかし街の中ではそうでもない。1回行っただけの場所なんて覚える方が難しい。建物って上から見たらどれも同じように見えるし。
だから私は街の中では道がわからなくなる。
アレティウムではその辺深く考えなかった。この街に慣れているリディナが自由に街を歩けて、私がそれを出来ないのは慣れのせい。そうだとばかり思っていた。
しかし旅に出て気が付いた。リディナは一度行った場所には次も行くことが出来る。私はどっちに歩いていいかまるでわからない。結果的にリディナについて歩いているから迷わないだけ。
うーむ。人間相手と料理の他、こういった面でもリディナに頼らざるを得ないとは。我ながら悲しい。
なんて事を思っているうちに無事冒険者ギルドへ到着。
「フミノ、大丈夫だよ」
先行して貰ったリディナの台詞で私は冒険者ギルドの中へ。よし、冒険者は誰もいない。安心だ。
冒険者の癖に今まで一度も見る事がなかった依頼掲示板へ。
本来冒険者はここで自分にあった依頼を探して仕事を決めるものだ。私は討伐と紹介された依頼しかしたことがなかったけれども。
さて、依頼掲示板は級ごとに依頼が貼りだされている。
おっと、C級のところにローラッテへの木炭運搬を発見。何気に必要レベルが高い。2種以上の魔物や魔獣が出る可能性があるからだろう。
「フミノ、面白い依頼があるよ」
どれどれ。リディナの指す依頼を見てみる。
『ローラッテとアコチェーノを結ぶトンネル掘削の為の地盤調査作業。級問わず。魔法使いのみ。土属性必須。調査1日
「穴を掘る作業って、フミノ得意だよね」
リディナが小声でそんな事を言う。その通りだ。だから私は頷く。
「フミノならその気になればトンネルくらい1人で完成させる事が出来るんじゃない?」
「出来ないとは思わない。でも地質を調べる必要がある。魔力もかなり必要」
穴を掘る事は出来る。しかし崩れないという保証はない。水が出てくる可能性だってある。
それに土中の小動物や菌類等の生物を収納すると魔力がその分減る。だから一気に開通なんて事は出来ないだろう。
「そっか、そう簡単じゃないよね、やっぱり」
ふと思う。偵察魔法を使いつつ掘れば何とかなるだろうかと。レベルアップした偵察魔法なら穴を掘らずともかなり先まで土質や水の有無を確認可能だ。
なら偵察魔法で確認しながら掘って、いや土を収納して伸ばしていけば……
うん、出来なくはないかもしれない。土中の生物次第で。
「他に出来そうな依頼は無さそうね」
私は他の依頼よりこのトンネルの件の方が気になる。確かにローラッテとの行き来が一気に楽になるだろうし。うーむ。
「そろそろゆっくり森林
確かにそうだな。そっちも気になる。いくらかかるのか早く知りたい。それに運送で稼ぐ為にも出来るだけ早く注文を入れたい。
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