第7話
次の日も、私はノートを読んで寝た。
すると、また村井先輩の夢を見た。
私自身が村井先輩になる夢だ。
それを毎日繰り返していくうちにだんだん気持ちが変わっていった。
村井先輩に対して、家族のような愛情が湧いてきたのだ。
そして、村井先輩の寂しさが伝わってきた。
村井先輩はミュージシャンになりたかった。
上京したいと思っていた。
しかし、家族には「そんなもんで食っていける訳ないだろ」
と言われて否定された。上京も反対された。
村井先輩はそれを説得することができなかった。
夢の中での話なので、現実にそんなことが起こっているかどうかはわからない。
ノートを家に持って帰って1週間ほどがたった日、私はある決意をした。
ノートを村井先輩に返そうと思ったのだ。
このまま毎日村井先輩の夢を見るのはもう嫌だった。
現実ではひとことも話していないのに、夢の中ではどんどん村井先輩の存在が大きくなっていく。
奇妙だった。
私は村井先輩の教室を訪ねた。
村井先輩は加藤先輩と同じクラスだった。
加藤先輩が入り口付近にいたので、呼んだ。
「加藤先輩、、」
「あ、真希ちゃん、どうしたの?」
「あの、、このノート、村井先輩に返してもらえますか。」
「なに、このノート。」
「えっと、、部室で拾って、多分村井先輩のだと思うので。」
そう言うと、加藤先輩は
「そっかー。了解!」
というと、後ろを振り返り、
「村井くーん、これ!」
と、ノートを見せた。
遠くの席に座ってた村井先輩はこちらを見てびっくりしたような顔をした。
村井先輩が取りに来そうだったので、私は慌てて、失礼します、というと、教室を出た。
なぜか、本物の村井先輩に会うのが怖くなった。
後ろから石川さん!と声がきこえてきた。
見ると、廊下に村井先輩が立っていた。
中、見た?
と言われ、正直に、はい、と答えた。
どんくらい?
と言われたので、全部です、と答えた。
村井先輩は恥ずかしそうに、まじか、、と言った。
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