主人公が私の出番を乗っ取ります…
リリシアの周りには見事に男子生徒ばかり集まっているけれど、あれを女子生徒に置き換えるとすると、イメリアナ=シュヴァリエのゲーム内での状態と合致する。
だけどね…担任の眼鏡先生(名前忘れた)の所へクラスメイト達が近付いて行って話している内容を聞いて…違う、アレはイメリアナ=シュヴァリエというキャラクターと一緒にしてはいけないと思った。
「あの…先生、私の席にあの人達が勝手に座ってるんです」
「僕もあの窓際の席だと思うんですけど…」
「先生…私、どこに座ればいいですか…」
あ~なるほどなるほど、不良達はどこか別の席か、もしくは違うクラスの男子生徒なのかもしれない。そんな嫌がらせやめて欲しいわ…
それを聞いた眼鏡先生は、果敢にも不良達に向かって行った。
先生、大丈夫かな?
生徒達が見守る中…眼鏡先生はリリシアの前に立った。
「リリシア=ミーガンレイ、すぐに自分の席に戻りなさい。そして君達は違う学年の生徒だね?すぐに自分の教室に戻りなさい」
先生、眼鏡のくせに強気だね!(注:イメリアナの眼鏡男子への一方的な偏見です
リリシアはジロリと眼鏡先生を睨み上げると、チッと舌打ちした。態度が完全に不良のソレである。
何度もいうが、あんたは恋愛シミュレーションゲームの主人公だから!
「あ~もう煩いわねぇ~行きましょうよ」
リリシアがそう言いながら立ち上がると、取り巻きの男子生徒達も立ち上がった、そして教室を出て行ってしまった。
「ミーガンレイと仰ったけれど、ミーガンレイ公爵家の方?」
「まさか二年生のエルティルト=ミーガンレイ様の…?」
「公爵家のご令嬢のなのに……」
リリシアがいなくなった途端、貴族令嬢の子女達が一斉にコソコソ話し始めた。これはお兄様のエルティルト君に苦情?とか苦言の類が届いてしまうのではないかしら?
眼鏡先生…名前はユーラス=ホマス先生が、新入生の歓迎式典の説明をして、私達は教室を出て、講堂に向かった。
「イリィ」
「イメリアナも同じクラスだったの?」
この声は…!後ろを向くと、茶会や夜会でよくご一緒する、伯爵家のナーラと子爵家のアージニアが笑顔で手を振っていた。
「二人も桃組?」
私はナーラとアンジーと三人で講堂に向かった。移動中の噂話はもちろん先程のリリシアの問題行動についてだ。
因みにクラスの名称は一年桃組、桜組、藤組、百合組、牡丹組…という純和風な名称だ。ここはツッコミどころかもしれないが、ゲームの中の呼称なので…でスルーしたいと思う。
そして、先程のリリシアの所業は瞬く間に全学年に知れ渡っていて…義理の兄であるエルティルト君が式典の後で職員室に呼び出しを食らっている…らしい。
らしい、というのは歓迎式典が終わり…ホマス眼鏡先生から明日の日程を聞いて、下校しようとして教室を出た所で、リグリー殿下とクェード=ビュネフト皇太子殿下のダブル王(皇)子が待ち構えていて捕まって…エルティルト君の件を聞いたからだ。
「そんな…エルは関係ありませんのに…」
「そうは言っても公爵家の人間には違いないからね、義妹の不始末は公爵子息にも責がある…と考えているんだろう。この魔術学院は特に厳しいからね」
クェード殿下の仰るように…私達の通う国立マラドレア魔術学院は入学するのも厳しく、そして卒業するのも厳しい超名門魔術学院だ。
その代わり国立マラドレア魔術学院の卒業生だという称号を得られれば、国の魔術師団に即入団出来るし、民間で働くとしても引く手あまたな状態で、一生生活に困ることは無いと言われるほどのエリートになれるのだ。
ただ…無事に卒業出来れば…の話だが
国立マラドレア魔術学院の進級と卒業査定には実技と筆記試験の他に内申点が大きく影響すると言われている。
勉学が秀でていても、学園生活に問題ありだと内申点が低くなれば簡単には卒業出来ない。正直、留年されて二十歳を越えている諸先輩方もいらっしゃるぐらいだ。
だが、そこで踏ん張ってでも卒業資格を手に入れる為に皆、頑張っているのだ。
私と王(皇)子様達三人は職員室の前でエルティルト君が出て来るのを待っていた。
そして暫く待っていて、やっと出て来たエルティルト君は…怒っていた。
「機嫌悪…」
リグリー殿下が呟くと、一瞬鋭い目を向けてきたエルティルト君だったが、一つ息を吐くと
「悪くもなるさ…まったく」
と、言ってから私の横に来て盛大に溜め息をついている。
リグリー殿下とクェード=ビュネフト皇太子殿と私とエルティルト君の四人は、市井のレストランに向かった。
高貴な方々で私の新入学のお祝いをしてくれるようだ。なんと恐れ多い…
そのお店に向かいながら…エルティルト君は職員室でのやり取りを教えてくれた。
やはりリリシアが入学早々ヤンキー宜しく舌打ちばかりして、歓迎式典にも参加せずにどこかに消えてしまったことを、ホマス眼鏡先生に苦言を呈されたらしい。
「今、リリシアはお祖父様の別邸に住んでいて俺じゃ彼女の詳細は分からないんだよ、俺だってまさかマラドレア魔術学院にリリシアが入学して来るとは思わなかったよ」
えっ?どうしてよ、
エルティルト君の言葉に、リグリー殿下は、あ〜そうだなと返している。
リグリー殿下とエルティルト君の顔を交互に見るとエルティルト君が
「リリシアはマラドレアに入るには、学力が足りない」
と、簡潔に述べてくれた。
そうだったっけ?とゲームの設定を思い出していた。うーむ?入学に難ありだったとかシナリオの中で言ってなかったよね?
「恐らく、リリシアはお祖父様から多額の入学寄付金を出して貰って、試験を免除して入学しているんだろう…確かにその方法でも入学だけは出来る、入学だけはね」
そう、エルティルト君の言う通り…この、マラドレア魔術学院には入学試験の免除というシステムがある。入学寄付金なる名目でお金を払えば試験免除で入学出来るのだ。
ただ、この入学寄付金とは…あくまで入学の試験だけが免除されるだけなのだ。入学してから勉学に付いて行けなくて毎年数人は退学や、留年する生徒が出る。どこの世界でもそうだけど、入学してからもついていける学力を保持していなければ、落ちこぼれてしまうのだ。
「リリシアは俺と同じ家庭教師を付けていたが、勉強をサボるし挙げ句には度々外泊をしたり…問題ばかりをおこしていた」
嘘ぉ!?
「父上がお祖父様に、こちらでは面倒見切れないと言ったので、お祖父様の屋敷に住むことになった。それが一年前…そこから交流は無い。実は…今リリシアはお祖父様の娘として籍に入っている」
ええっ!?ミーガンレイ公爵家の人間じゃなくなってるの?
「だから一応、親戚ではあるけれど俺に直接言ってこられても困る…リリシアだってこのままじゃ退学だと分かっているはずだ」
退学…なんともずっしりと重い言葉だ。
そんな重苦しい話を切り上げて、おにーさま達は行きつけの高級レストランへ私を連れて行ってくれて、盛大に私の入学のお祝いをしてくれたのだ。
わぁ二段重ねのフルーツケーキだ!…ん?ケーキの上に刺さっている板チョコに『祝!ご入学おめでとう』って書いている!!チビッ子扱いが気恥ずかしいけど、でも嬉しい
攻略キャラ達に囲まれるオタク悪役令嬢…有難すぎる!この瞬間を記録出来るデジカメなどは無いのかな~この際、開発しちゃう?
高貴な方々にチヤホヤされて、逆ハーを満喫して店を出たら…
表通りにはリリシアとその仲間達がいた。
奇しくもリリシアも私と同じ逆ハー状態だった。しかし敢えて言うなら、権力、顔面偏差値、学力?で私の傍に居られる高貴な方々が勝っていると思った…主人公を差し置いてすみません…
リリシアは私達を見るなり、睨みつけてきた。
「いい気なものね…入学早々殿下方を味方につけて」
「え?それ……」
おいおーーーい!!その台詞またパクッてるし!イメリアナのゲーム内での台詞だからっそれにお前が言うな状態だからっ逆ハーはあんたもだろうがっ!
何度も言うが顔面偏差値諸々でこちらの方が勝っている状態だと思われます、
「お兄様も酷いわ…私よりイメリアナを優先させるなんて、許さないわよ」
「え?」
その台詞もイメリアナのだから!って…よくよく考えればこのレストランの前の場面、私とリリシアの立ち位置を逆にすればまんま、シナリオ通りのイベントじゃないのか!?
リリシアが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます