簡単な仕事
@ponpon33
簡単な仕事
その青年は海沿いのの国道を車で走っていた。町はずれであり、遅い時間ということもあり、すれ違う車もなく、青年の愛車であるレクサスLFAのエンジン音だけが車内に心地よく響いていた。
「うん、今日も簡単な仕事だったな。独り身の爺さんをちょっとおどかして入会金と称して金を払わせる。それだけでこんな額の金が手に入るんだからな。」
青年は助手席の封筒に目をやり、ほくそ笑んだ。
「それにしたって今日の爺さんはやけに素直だったな。俺がちょっと大きい声出したら、すぐに家に上げて、お茶にお菓子まで出してくれるなんて。ああいう親切な人を脅すのはいくら俺でも多少気が引けるぜ、フフッ。」
おもむろにスピーカーのダイヤルに手を伸ばすと
「いたたっ」
両手に何かにつかまれたような痛みが走った。
「おかしいな。こんなこと初めてだ。おととい久しぶりにテニスをやったのが今になってあらわれたんだろうか、、、」
痛みはすぐに引いたので、青年はそのまま運転を続けることにした。そのまましばらく走っていると外から何やら大きな声が聞こえてきた。
「おや、こんな夜更けにどうしたんだろう」
青年は首を傾げ、道の端に車をとめ、外に出て、海岸を覗き込んだ。
「あれれ、確かに声が聞こえた気がしたんだが、、砂浜じゃなくて岩礁じゃないか。こんな険しい岩礁に人なんているわけあるまい。疲れてるのかもしれないな。」
足ばやに車に戻りおもむろにスマホを取り出す。
「そういえば、C子から連絡がないなんて珍しいな。いつもはあんなに返信しろとせがんでくるのに、、もしやほかに男でもできたか、、、」
しばらく青年がたまったメールの返信に夢中になっていると、前から鋭い光を感じた。反射的に顔を上げるあと、トラックが正面から迫ってきていて、、、、
「おやおや、どうやら今回の薬は失敗みたいですね。声をかけても反応はないし、なにより瞳孔が開いてしまっています。博士」
中年の男性が椅子に手足を縛られた青年の目にライトを当てながらつぶやく。
「そうか、、味もにおいもせず臓器には影響を与えない素晴らしい毒薬を開発したんだがね。なにしろ腕を縛ったときはまだ反応があったから今回は成功したとおもったんじゃが、、、」
「まあまあ博士そうおっしゃらずに、生きたままのほうが良い値が付くとはいえ、若くて健康な男の臓器なんて買い手は腐るほどいますよ。」
「それもそうじゃな。やっていることがグレーな分、向こうの会社も下手に警察に届けられんじゃろう。まったく向こうからわざわざ新鮮な臓器を届けてくれるなんて楽な仕事じゃの」
簡単な仕事 @ponpon33
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