ちょっと〝トクベツ〟なんだって
香居
おうちに、みんないたよ
ママと〝実家〟にいったら、じぃじとばぁばとまるちゃんに、
「「「お誕生日、おめでとう」」」
って、いわれた。
1さいって、ちょっと〝トクベツ〟なんだって。
「ちみたん、どうぞ。プレゼント♡」
まるちゃんが、おっきなふくろを、ぼくのまえにおいた。
「ぽこぽこしても良いし、けりけりしても良いし、どーんってしても良いよ」
まるちゃんが、にこにこしてる。
ぽこぽこ……
してもいい?
ぼくは、ママをみた。
「良いよ。まるちゃんが、良いって言ったから」
ママが、にっこりした。
ほんと?
いいの?
えっと……
えっと……
どこから、ぽこぽこしようかな……
「ちみたん、おむつけーきの周り、ぐるぐるしてる。どこが良いか、探してるんだね」
まるちゃんが、ふふってわらった。
ぼくが、ハイハイでぽこぽこの〝ベストポジション〟をさがしてるあいだ。
すぐそばで、ママとまるちゃんが、おはなししてた。
「これ、どうしたの? 買った……んじゃないよね。ぬいぐるみとか、入ってないし」
「ちみたん、まだぬいぐるみに興味示さないから、作ってみた」
「えっ、わざわざ?」
「皆やってる程度だから。消耗品だし、いっぱい入ってるほうが良いでしょ?」
「いやもう、本当にありがとう」
「いえいえ、ちみたんのためなら♡ 1歳のお祝いだもんね」
まるちゃんがにこってして、ぼくをみた。
たっちして、ぽこぽこしてるぼくと、めがあったよ。
ママもみてるかなって、ママをみたら──
──スカッ
……あれ?
「──っと……い゛っ」
まるちゃんが、ぼくのしたになった。
ゴンッて、おとがしたね。
ぼくは、いたいところないけど。
「ありがとう、ナイスキャッチ。……良い音したね。大丈夫?」
「うーん……痛い。でも、間に合って良かった」
「ごめんね」
「いえいえ。大事なちみたん、怪我でもしたら大変だから」
ぼくは、まるちゃんのうえにのったまま、ぎゅーされた。
「んなぁ!」
くるしいよ!
「あら、ごめんね。ちょっと、力入れちゃったかな?」
じたばたしたぼくは、ハイハイのかっこうで、ゆかにおろされた。
「さあ、ちみたん。このまま、ハイハイで突進したまえ」
ハイハイで?
「どーんって、行っちゃえ」
まるちゃんが、にっこりした。
あたまを、さすさすしながら。
いくよ?
ほんとにいくよ?
よーし!
「……ちみたん、ハイハイかなり速くなったね」
「ハイハイじゃなくて、シャカシャカって感じ」
「たしかに」
ハイハイハイハイ……どかーん!
──ころん。
「ふんすっ」
ハイハイハイハイ……どかーん!
──ころん。
「……『そして、勇者ちみたんは、何度転がされても、おむつけーきに勇敢に立ち向かって行くのであった』」
「おむつけーきだと、締まらないわー」
「『魔王ぴよこさん』だと、ちみたんに勝ち目ないからねぇ」
「なんで私」
「『魔人まるちゃん』でもいいけど」
「弱そう」
「否定できないのが、悲しい」
まるちゃんが、なきまねしてた。
ぼくは、たたかったよ!
ハイハイハイハイ……どかーん!
──ころん。
「うきゃう!」
やったなー!
──ぽこぽこぽこぽこ……!
「『お座りしてぽこぽこ』にクラスチェンジしたんだね。賢いね、ちみたん♡」
「まるちゃんは、なんでも『賢い』って言うんだから……」
ママが、ちょっとあきれてた。
「だって、賢いんだもん。ねぇ、ちみたん」
まるちゃんがはなしかけてきたけど、ぼくは、それどころじゃないよ!
「うきょー!」
えーいっ!
──ぽこぽこぽこぽこ……!
──ぽこぽこぽこぽこ……!
──ぽこぽこぽこぽこ……
……いっぱい、ぽこぽこしたら……つかれた。
「……あぅあー……」
ママに、りょうてをのばしたら、
「疲れちゃったか。そっか」
ってわらって、ぼくをだっこしてくれた。
いっぱい、だっこしてね。
いっぱい、ぎゅーしてね。
ママ、だいすき!
ちょっと〝トクベツ〟なんだって 香居 @k-cuento
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