おうちワールドレコード
黒幕横丁
おうちワールドレコード
世の中には様々なワールドレコードが存在する。規定時間以内に箸でティッシュを何枚掴めたとか、頭で果物をいくつ叩き割った(割った果物はスタッフが大変美味しく頂きました)とか。
そんな津々浦々奇々怪々なワールドレコードたち。それへの挑戦に俺は大きく第一歩を踏み出していた。
俺が挑戦するワールドレコード……、それは……。
おうち時間を満喫した最長時間だぁ!
「それは、ただの引きこもりじゃねぇかーーーー!!!」
バンッと扉が勢いよく開かれ、猛烈なツッコミで姉がやってきたのだ。
「ちょっと入って来るときにはノックぐらいしろよ。もし、弟(年頃のイケメン)が生着替えしてたらどうするんだよ!」
「注釈で年頃のイケメンと入れている奴がイケメンなわけあるか」
姉の鋭いツッコミに俺のガラス製のギザギザハートがチュクチュクしそうだぜ。
「言っておきますが姉上、おうち時間を満喫するのって結構大変なのですぞ?」
「何故武士っぽい口調になっているのかあえてツッコまないでおくが、大変な理由を述べよ」
「“おうち”という限られた空間の中で出来ることというのは限られている。そんな手狭空間でずっと過ごしたら精神的に不安定になり、最終的には発狂する、ってこのホラー映画にも描かれておりますぞ」
俺は姉に某そーとかしーとか書かれているパッケージを見せる。
「例えで持ってきた映画が極端すぎるだろ」
「その極限状態の中でいかに楽しく!いかに快適に!過ごせることが出来るかが重要なポイントゥなわけですよ。それで俺は世界新記録を狙うのですぞ!」
俺はドヤ顔で力説する。
「おうち時間ということは家から出ないわけだろ?食料がもし尽きたとすればどうするんだ?」
「そりゃもう……霞を食べる!」
「仙人かっ!」
姉のスナップをきかせた右手チョップが俺の頭にクリーンヒットして悶絶する。
「……まぁ、大体理解は出来たけれども、そもそもどうやってそれを確認するんだ? 確かそういうのって専門の審査員がいるはずだろ?」
「まず、審査員さんを家に招きます」
「招く……」
「期間中は共同生活してもらいます」
「強いられるハウスシェア……」
「そして俺が全力でおうち時間をしているところを審査してもらうって寸法なんですぞ」
「ただただ、引きこもっている青年を観察させられているだけじゃねーか!」
姉の的確なツッコミが飛ぶ。
「だーかーら、なかなか満喫するのって大変なのだよ。今だってステイホームの時代だからさ、ゲームしたり、ビデオ通話したり、お菓子食べたり、たまには料理をしてみたり、読書に勤しんでみたりやっているけれども、出来ることって限られてくるんだからな!」
「私がリモートで仕事している中、めっちゃエンジョイしてるやん」
「多感な高校生だからさっ、もっとのびのびとしておきたいワケ。でも、そんな中で制約を課してまでおうち時間と向き合う、俺、カッコイイ。的な?」
その言葉を聞いて姉は俺の部屋から何かを探し始めた。
「何さがしてんのー?」
「てめぇを適度に殴れて投げられるものだよ」
姉の目がマジである。
「キャー、弟への暴力反対」
「姉の愛のある教育的指導と呼べ」
「ワールドレコードをゲットできた弟がそのうち誇らしくなるんだから、そういうのはやめておいたほうがいいよ?」
「ダラダラしただけで世界一なった弟なんて誇らしくもなんともないわっ! 働け!」
後日、マジで関係機関に申請送ったら、没になって帰ってきましたとさ★
めでたしめでたし。
おうちワールドレコード 黒幕横丁 @kuromaku125
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます