こんな時だから。
燈樹
こんな時だからこそ。
おうち時間。
それはなんとも言えない言葉だろう。
いい意味で自由時間。
悪い意味で駄々の暇人。わたしの場合は後者にあたる。
新型ウィルスが発生する前から時間を持て余していた私からすれば、暇な時間を"おうち時間"と言い換えただけに過ぎない。
だからといってやる事が変わるわけでもないし、増える事もない。
あるのは何も変わらない日常なのだ。
とはいったもののやはり日常はほんの少し変化はあるもので。
何が変わったと言えば仕事と趣味に忙しい夫がよく家にいるようになったのだ。
前までは一週間に二日あれば良かった早帰りがほぼ毎日に、週四で行っていた趣味は集まる場所が借りることができず、家でラケットを振る。
夫の趣味はバドミントンだからか密を防ぐために体育館を借りられない様だった。私から見れば何も出来ないよりマシだと思えた行為だが、むしろこれはよくないものでもあった。ラケットを振れば振る程羽を撃ちたくなる様で半ば強制的に室内でラリーをやらされる。時には庭でだ。
ただ二人で打ち合うのならば問題はないが、私達には一歳になる子供がいる。その子を庭で遊ばせながらやるのは気が気ではなかった。
我が家は住宅地にあり、すぐそこに道路がある。ちょっと目を離した隙に道路に飛び出すなんてお手の物の距離だ。ラリーに集中できる訳がない。
私のそんな思いとは裏腹に夫は三十分はやりたがるし、私のストレスは溜まる一方。
だがこれをしないという選択肢はないに等しい。
夫も仕事のストレスが溜まってあたるのだ、ストレス発散する行為がこの趣味なのだから付き合わなければなるまい。
実際バドミントンができない時間が増えると夫がイライラする事が増えるし、みてて気分の良いものではない。適度に相手をしてあげる事で互いの運動不足解消にもなるし、柔かに過ごせるのならば諦めもつくというものだ。
世間では夫が家にいる時間が増えてたせいでのコロナ離婚なんて言葉も出ている様だが、子供がいるし夫を愛しているし私としてはそれはなんとしても避けたい限りだ。
今回生まれたこの"おうち時間"でより一層中を深めていく事が私たちには必要だったのだろう。
時間が増えたおかげで我が子はいつもお父さん待ってとたどたどしい言葉で夫を追い、それをデレデレの顔で眺めている夫。
今まで遅い時間に帰ってきた為にあまり子供と遊べなかった夫だが、今はまぁ、よく遊んでくれてはいる。ただスマホ片手に相手するのはもう少し控えてほしいは思うが、私もしてあるし文句を言える立場ではない。
よくよく考えれはこんな時間もあまり取れなかった訳だし、今はこの言葉に甘えて家族の時間を満喫しておくとしよう。最短で後数ヶ月もすればワクチン接種が始まり、また慌ただしい日々に戻るだろう。前にの日々に戻る事が良い事だが、こんなに一緒にいる時間は当分取れないかも知らない。
些か私もストレスが溜まる事があるが、それは夫も子供同じ。誰か一人だけではないないのだ。息抜きを見つけて過ごすしかしかない。
少なくともこの不意に与えられた"おうち時間"は、我が家に良い時間だったとおもう。
歳をとって、それこそ孫でも出来た頃にこんな事があったねと、あの時は大変だったなと言える時代が来ることをただいまは願っておくとしよう。
こんな時だから。 燈樹 @TOKI10
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