【KAC20211】気が付いたらおうち時間で500年経ってた

@dekai3

なんとかしろよ。高橋!

『よしっ!、ようやくデスマーチが終わった!遊ぶぞぉ~!』


 そう言いながら作成したデータをメールで納品し、久しぶりに卓上の電子カレンダーを見ると、五百年が経っていた。











『は???』


 思わず声が出た。


 仕事疲れで眼がぼやけたのか思い、もう一度電子カレンダーを見てみるも、日付は自分がリモートワークでおうち時間を開始した年からだいたい500年経っている。


 正確には503年か504年? 夏に在宅して仕事してくれって言われたから504年か? どんだけ集中して仕事していたんだよっていうか本当に500年? データの保存の日時とか…うっわ、スクロールバー長っ。ファイルの数だけでどんだけあんだよ。でもこれちゃんと全部作った記憶あるんだよなぁ。これとか最終的に完成バージョンの元にしたから覚えているっていうかこれ350年ぐらい前のじゃん。最初の150年から少し頑張れば完成していたって事?あ、でもどうせ仕様変更あったから無理か。仕様変更だけじゃなくて追加発注もあったしなぁ。営業からメールが来るたびに仕様変更あったから何回営業の高橋をやっちまおうかと思ったかってか高橋も500年生きてるのか?そういや高橋から来ていたメールっていつが最後だ?うわ、200年は前じゃん。そうだ。あまりにも高橋が適当な事言うからクライアントと直接やりとりさせてもらったんだった。そうだそうだ。じゃあ高橋死んだのかな。普通は500年も生きれないよな。確か最長でも130歳ぐらいじゃなかったっけ?おい、じゃあ俺なんで生きてんだよ。待てよ待てよ。えーっと、確かリモートワーク始めてからしばらくは銭湯とかも言っていたし外食もしてたはず。だからその時は間違いなく生きていたよな? それで何年ごろかは忘れたけど、どんどんえらい量の仕様変更になってきたから段々と外に出ない様になって、全部ウーバーとかの宅配で頼んでいたはずで、なんか途中からウーバーじゃなくて新しい宅配サービスが出来たとかで、それが俺が作った物を流用したロボットの自動宅配とかで、関係者だからって割引でやってくれたんだよな。食事だけじゃなくて色んな物を届けてくれる超便利なやつ。それが出来たから既存の流通が全部AI任せになって一部労働者が仕事を失ったってのをネットニュースで見たもん。それでデモかなんかが起きて、俺の仕事が増えて、専門外だってのにロボットアームの操作や重心移動をどうにかするプログラムも作ってくれって高橋から無茶振りされたんだよな。結局やったけどさぁ、あの時は『必要だから経費で落とせ!』って言って工業用アームを買わせたんだよな。で、そっからクライアントと直接やりとりさせて貰ったんだった。高橋とはそっからもメールでやりとりしてたけど、途中で俺が面倒くさくなって返信しなくなったんだったわ。俺があいつの代わりにクライアントと打ち合わせもしてんのに、あれこれ別口で作ってくれってうるさかったし。他の案件の作業を回すなっての。お陰で俺もパソコン一つじゃ足りないからってデュアルモニターどころかパソコン複数台のマルチパソコンで仕事する羽目になったし、そのせいで部屋の中も配線やパーツでごちゃごちゃしちまったし。その頃はまるでマトリックスの映画みたいだなって思っていたけど、それが次は手が足りないからって前に参考の為に買った工業用アームを簡単な命令で動く複腕として使う事になったからアイアンマンの研究所みたいになったし、それが上手くいったもんだから腕の数を増やしてスパイダーマンの敵みたいになった。で、かなりよく出来てたもんだからクライアントにこんな事も出来ますよって提出してみたら向こうがえらい乗り気になっちゃって大口の仕事になっちゃって結局は自分の仕事が増えたんだよな。作業を楽にする為にサポートアームを作ったってのに、そのサポートアームのせいで作業が増えたから頭おかしくなったわ。お陰でカフェインどころかヤバ気なエナジー飲料飲みまくって作業してたもん。あの頃はマジで自分が起きて作業してるのか夢の中で作業してるのか分かんなかったわ。だからこそ夢の中というか脳波で電子機器を動かせたら楽になるんじゃねーのって考えて、空いてる手で作業の合間に脳波を機械に取り込ませて電波経由での遠隔操作を可能にしたんだけど、結局それもクライアントにどうですかー? ってしちゃったから結果的に自分の仕事が増えたんだよな。いやー、本当俺ってバカだったわ。高橋の事バカに出来んわなってなった。そっから開き直ってモニターもキーボードも腕も脳波リンクも増やしたれーって感じで色々と増やした結果、脳があかん事になって頭痛が痛い状態になったから補助の為の電脳を作る事になって、その頃になると栄養が偏ってるなんてもんじゃなかったから内臓は壊れるわ足はエコノミー症候群になるわで仕方なく仕事の為に人工臓器にしたり足を切断したりしたんだったわ。と言っても俺が片手間に組み上げた理論で作られた人工臓器や義足だから生身より性能良いもんで、替えちゃったほうがコスパ良くてその次の年ぐらいに義体がブームになったんだっけか? その頃に人間とロボットの境界があいまいなどうとかって言ってる団体が過激テロを起こしたから間違ってない筈。丁度高橋と最後のメールをしたのもこの頃。あいつもこのままだと戦争が起きるーとかロボットに支配されるーとか変な事を言い出したから返信しなくなったんだよ。そうそう、そうだったそうだった。そんでもってあいつからの最後のメールは未開封で放置してたんだったな。懐かしいなー。あいつ結局最後はなんて書いてたんだ? 今更だけど見てみるか。えーっと、『今の作業が終わったら連絡を入れろ。必ず迎えに行く』? あー、やっぱ変な思想に染まっちゃってる系だわーこいつ。どうせ届かないだろうけど、折角納品し終わったんだからメールしてみるか。内容は『今終わった』でいいだろ。流石に200年経ってればメアド変わってたりするよな。でも高橋の事だから残ってたりして。だったら笑うわ。送信っと。ほんと高橋の事懐かしいわー。最後はマジで終末論に影響されてたもん。でもまあ、その頃はデモとか起きてたんだし仕方ないっちゃ仕方ないか。……っと、おっとっと、揺れた? 地震か? おかしいな。ここは確か地殻に影響されないフロアに改築するみたいな事が100年ぐらい前に電子回覧板で回って来ていた様な…


ドゴォォォォン!!!


『な、なんだ?』


 突如部屋の壁が吹き飛び、部屋中に張り巡らされたケーブルや記憶装置が吹き飛ぶ。

 ここの壁材も耐熱耐衝撃隊腐食性の特殊装甲版に変更したとか回覧板に乗っていたはずなのに、それが吹き飛ぶなんて…


「ようやく追い詰めたぞ! 《オリジナル》め!! これが俺達人類の魂の輝きだ!!」

『は???』


 壁の穴から現れたのは、俺が昔設計した強化服パワードスーツを身に纏った青年。よく見ると手には同じく俺が昔設計した超重力杭打機グラビティバンカーを握っていて、相当無茶な使い方をしたのか強化服パワードスーツの全身は傷だらけだしヒビが入っている。

 いや、何事よ。強盗にしてはダイナミックすぎるエントリーだぞ?


「お前を倒せばこれ以上ロボトピアはアップデートされない! それが人類の勝利だ!!」


 青年はよく分からない事を言っている。これはあれか? 春になると現れる頭の中がお花畑になっている人か?

 厄介だけど、流石に命の危機だからぼーっとしている訳にもいかない。とりあえず警察に連絡するか逃げる準備をしないと…


ドゴォォォォン!!!


『また!?』


 次は部屋の反対側の壁が同じ様に吹き飛び、再度ケーブルと記憶装置が舞う。


「プロウジェニター・ルームの侵入者を発見。これより《オリジナル》の防衛及び、敵対勢力の排除を行います」

『は???』


 こっちの壁から現れたのは俺の肉体によく似た外見をしているロボットな何か。表面の処理を見る限り、俺がこの間クライアントから空いた時間にでいいからと頼まれて理論を組み上げた魔導電子金属を使用している様だ。


「くっ、もう現れたのがパニッシャーめ! しかし俺は負けないぞ!」

「いい加減に諦めなさい人類。貴方たちは我々に管理されるのです」


 そして俺を挟んだ状態で睨み合う二人。

 なんだこれ。どういう状況だよ。


「対パニッシャー用強化増幅装置”散華”機動! 俺の命を燃やし尽くすとも《オリジナル》は必ず倒す!!」

「相転移炉セーフティ解除。臨界までの30秒で貴方を解体します」


 二人はそれぞれ何かを叫び、体から赤い光や青い光を出して ギュインギュイン 唸りを上げている。

 これ、二人の間に挟まれている俺はかなりピンチなのでは? でもこれ逃げ場無いよな。どうする? この状態でも入れる保険ってある?

 と、俺が無駄に高速に回転する思考回路で現実逃避をしかけた時。


ドゴォォォォン!!!


『三回目!?』


 今度は天井が吹き飛び、上から何者かが降って来た。


「待たせたな、五十島」

『高橋!』


 それは俺の同期で、俺に迷惑をかけ続けた営業の高橋。


「高橋だと!? 人類の裏切り者がどうして!!?」

「S級犯罪人高橋。《オリジナル》から離れなさい!!」

「悪いな、こいつは友人なんだ。お前らのどちらにも渡せない」


 高橋はそう言うと、最後に会った時と変わらないよれよれのコートを翻しながら俺のコアユニットを掴む。

 このコートは高橋が初任給で買った全然似合ってないコート。500年経っても着てるなんてこいつはやっぱりバカだと思う。


「相手はレジスタンスのリーダーと、ロボトピア最高傑作の処刑人。ちょっと激しく動く事になるが我慢しろよ?」

『お前に振り回されるのは慣れてるからいいさ』

「はは、違いない」


 高橋は笑いながら俺のコアユニットを小脇に抱え、戦闘態勢を取る。

 依然状況は分からないが、高橋が来たのならなんとかなるだろう。こいつは昔から要領だけはいいからな。

 よし、なんとかしろよ。高橋!

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