第21話 どこもかしこも気が休まらない
「こちらこそよろしくお願いします。じゃあ早速今日午前中からダンジョンに潜っていた時の話をしますね。俺が正式にマリア達のパーティーに入ったので、活動初日の今日はダンジョンで訓練をする事になっていました。マリアとユリアナはいつもの通りと言いますか、寝坊していたので放置してアクスとミラ、シロと一緒に向かいました」
カックスさんにシロの紹介を忘れていたので、シロを合間に紹介する。
「7階で魔物を倒していると矛牛テイルが再び現れて倒した後、シロが6階の何かの気配に気付いたので3人で覗いたら変質者とフィレックス二人で何か話していました。ーーシロ、あの時ダンジョンで回収した音源まだ持っているか?」
ーーぱこっ!!ガタガタ・・・ぱかっっ!!!
『話が違うでは無いかっっ!!貴様に協力したら最上位の闇の力を私に与えると言ったであろう!!』
『コノ町ヲ対価ニ 与エルノダ・・・。・・・モウスグ手ニ入ルゾ』
『本当であろうな?嘘であった場合は容赦せんぞ』
『嘘デハナイ。シカシ・・・オマエノ仲間ノ命ハ本当ニイラヌノカ?』
『あんな腰巾着共、仲間では無い。私は一人で最強になってみせるのだ!!こんな片田舎の領主に収まる器では無いわ!!』
『気ニイッタゾ・・・。オマエハ心ノ底から闇デアルノダナ・・・闇ノ
「これは・・・」
「・・・この言い方だとまだこの騒ぎは終わっていないのか・・・?」
「そうですよね・・・。この町を対価に力を与える・・・この町が滅んだら手に入るって魔法か何かなのかが気になりますよね・・・でも地面に魔法陣みたいなの見なかったですし。」
「ーーーーワードスギルド長、今回の魔物の襲撃で死者はどれ位出ましたの?」
「恐らく数人だろう。ミラの回復魔法によって商業地区には死者は出なかったと聞いている」
「そうですか・・・もしかしたら禁術かも知れませんわ。悪魔は命を刈り取る禁術を使いますわ。敢えて致命傷にならない程度に怪我を負わせ町から逃げられなくする事が目的でしたら、辻褄が合うのでは無いかしら?」
「そうか・・・!!変質者が持っている禁術が人の命を対価に術を授ける物ならばその可能性が高いな!!」
「そしてまだ発動していない所から見ると恐らく対価の数が足りないといったところね」
「まずい!!こちらに討伐の為の兵団が向かって来ている!!それも数に奴は入れているのかも知れん!!レイモンド、私は馬を走らせるから町の外に住民を誘導してくれ!!」
「分かった!!任せておけ!!お前も頼んだぞ!!」
ワードスギルド長が慌てて部屋を出て行った。その後カックスギルド長が職員に指示を出す為に一旦席を外す。
俺の背中や首や脇、手のひらに嫌な汗が滲む。俺の隣に座っているユリアナの方を向く事が出来ない。
急にサイコホラーが始まるなんか聞いてないぞ!!!ネジが飛んで狂ったパーティーどころの話じゃねぇよ!!殺人鬼にクラスメイトと立ち向かったらクラスメイトの中に犯人がいたとか、そんなありがちなヤバい系の物語と一緒じゃねぇか!!!しかも魔族とか通り越して悪魔ってなんなの!?魔族の方がまだ話通じそうなのに!!
ーーじーーーーーーー・・・
ユリアナ絶対こっち見てる!!視線めっちゃ感じるし!!目があったらスキルと術で口封じに俺の命刈り取る気なんじゃね!?マリア早く起きて!!シロもなんか俺に構ってアピールしてくれ!!!今ならもれなく夜まで遊んでやるから!!
どうすれば今を乗り切れるのか思考を高速で巡らせる。
今敢えて『禁術ってユリアナの魔法も禁術だったよね?』とか『「貴方と合体して一つに」も命刈り取る系じゃね?』とか空気読まずに言って藪をつつく真似だけは避けねば・・・。
ギルド長ってユリアナのステータス知ってるのか?さっきユリアナが『悪魔は命を刈り取る禁術を使う』って言った時ギルド長達変わった反応なかったけど・・・。もしかして知らないのか??う、うーん・・・。
どうもさっきの赤花の貝の魂を吸収させたのが引っかかって仕方ないんだよ・・・。
誰に聞けばいいんだ?ワードスギルド長は居ないし、商業ギルド長に聞いてもなぁ・・・。アクスか?アクスなんだかんだ言ってヒロイン枠って感じだから気にもして無さそうだし。マリアも気にして無いだろう・・・。ミラなんか気に留めてすら無いな。
ーーコンコンコン、ガチャ
「悪いんだが人手が足りない。君たちも町の人の移動手伝ってくれないか?」
「勿論ですっっ!!!」
天の助けとばかりにカックスギルド長のお願いを間を置かず了承した。マリアを起こすのは忍びないので先に避難先に移動させる事にした。
「ユリアナ、マリアが起きた時一人だと泣いてしまうかも知れないから一緒にいてやってくれ」
「・・・確かにそうね。分かったわ」
一瞬目があって何か忠告でもされるんじゃ無いかとヒヤッとしたが、特に触れる事なくマリアの側に座った。あの事は後で考えようと気持ちを切り替え町にシロを抱えカックスギルド長と急ぎ戻った。
町の人間はだいぶん町の外に出て来ていた。まだ残っている人間がいないか探し回り、アクス達とも合流した。
「おう!!セイ、マリア達無事だったんだってな!!ありがとな!!」
「いやいや、兄貴の方が大変だっただろ?俺が戦えない代わりに戦ってくれて、マジ感謝だわ!すっげー助かったよ!ミラもありがとな!!お前の有償の愛かなり役に立ったわ」
「どうだ!!ミラちゃんの回復魔法と補助魔法とスキルは最強なのだ!!今後ともご贔屓お願いしますぅ」
ぶっちゃけ2人の無事な姿を見て心底ホッとした。
後はカックスギルド長と俺たちだけになったので、避難所に行こうと町の外に行こうと方向転換する。
ーーーードーーーーーーーーーンッッッッッ!!!!!!
「「ーーっっ!?」」
砂煙と爆風で全員吹き飛ばされた。
「ーー貴様らか?私の為の大事な贄を外に出したのは・・・」
そこにいたのはフィレックスと変質者だった。
「やはり君が今回の事件の犯人なのか!?領主様は知っているのか!?」
カックスギルド長が声を張って問いただす。
「これはこれは商業ギルド長では無いか。こんな
俺もミラもアクスも絶句した。どうせ同じ穴のムジナ系親子だから父親も裏で関わっていると思っていたのに全くこの件には関わっていなかったし、自分の悪事に手を貸していた親すらも切り捨てたって・・・。え?領主って結構上の存在だよね?殺したって大事件じゃね??コイツ想像の遥か上の悪道進んでね?
カックスギルド長は苦虫を噛み潰した様な顔でフィレックスと変質者を見据えている。
「ーーもう我々がこの領地に住む人間として君を庇う必要性もない様だな」
「だったらどうする?今の私は30人以上の力を得ているのだ。昨日までの私と同じだと思って侮ると痛い目に遭うぞ?」
「・・・もしかして・・・30人って・・・」
爆風に飛ばされた後なんとか身体を起こしたミラが顔を真っ青にして呟いた。
「ご想像の通りだよ。今朝邸宅にいた父上や母上、弟と奉公人合わせて30人以上いたが私の為の贄になったのだ。あの世とやらでさぞかし喜んでいるだろう」
『次ノ町ニ行クゾ。ココデハモウ贄ハ得ラレン・・・』
「すまないが、みんな私と一緒に戦ってくれ」
次の被害を出さない為にここでこの2人を倒さなければならない。カックスギルド長は札を何もない空間から取り出した。
え?もしかして戦える系商業ギルド長なの!?なんか変質者めっちゃヤバそうだから俺めっちゃ戦いたくないって思ってたんだけど、商業ギルド長が戦うなら俺絶対戦わなきゃならんやん?あーーーーー・・・なんでこうなるんだよ・・・。俺まだレベル7よ?赤ちゃんが暴走族倒せる?無理だよね?それと一緒やぞ!?
「コイツを野放しなんか出来ねぇもんな!!!」
「う、うん!私も頑張る!!」
ーーぱこんぱこんっっ!!!
うっわシロまでやる気とか・・・俺、今猛烈に空気読めない人間になりたい・・・。
「俺たちで止めましょう!!!」
やっぱり空気読んじゃうよねぇ〜・・・・・・。俺流石に魔法使える世界で「俺レベル低いんで戦いたくないです」とか格好悪いこと言いたくないじゃん?シロに格好悪いところ見せたくないし、みんな置いて行けないしね。はぁ・・・死ぬ気で頑張るしかないよなぁ・・・。
シロの口からセイは剣を取り出し剣を構え気持ちを戦闘態勢に切り替えた。
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