第20話 まだ続く不穏な流れ







 「え?女神様って実在すんの?そこどこだ?迎えに行ってくっから」



なんでこんな時に出かけてんだよと思いつつも居場所を聞いた。



 「ーー?・・・ユリは死んじゃったんだよ?女神様のところにはまだ僕らは行けないよ?」


 「ーーは!?え?死んだって意味だったの!?なんでアイツが死ぬんだよ!!意味わかんねっ!!マジ意味わかんねーよ!!なんで拠点に居たのに死ぬんだよ!!アイツは上級魔法使えるんだぞ!?魔力もバカ高いし、体力も高かっただろ!?魔飛竜位じゃ死なないだろ!?」


 「ぼ、僕を庇って大怪我してその上に建物が崩れてきて・・・あれから結構経つの・・・。カルトの力じゃ瓦礫持ち上げれなくて・・・みんな必死だから誰も助けてくれないし・・・僕のせいでユリが死んじゃったの・・・僕が死ねば良かったのに・・・」


 「はぁーーーーーーーーーー・・・っっっっっっ

俺はお前もユリアナにも生きてて欲しいんだよ!!もしそれで片方が庇って居なくなったとしても、一人だけでも生き延びてくれた事に命かけて守ってくれた奴と女神に感謝を捧げて、居なくなった奴の安らかな眠りを生きてる間ずっと祈るよ。でも、本当に死んでいるか確かめるまでは俺は諦め無いし認めない。だからどこにいたのか案内してくれ」




鬱々とまた子猫の様に泣いていたマリアにユリアナの居場所を案内させる。アイツは上級の魔法が使えるんだ、多少の傷を負ったくらいで死ぬタマじゃ無い。魔法が発動できない状態である事には変わり無いから早く助けないと、一縷の希望すら無くなる・・・。


マリアを抱え言う方向に走っていくと瓦礫の山になった拠点だった場所だ。マリア達は最初は拠点に居たんだな。ユリアナがマリアを庇った後崩れて、さっきいたボロボロの建物に隠れていたのか・・・。

マリアは地面にへたり込みまた子猫の様に泣き始めた。






 「シロ!!急いで瓦礫を回収するんだ!!!」


ーーぱこんっっっ!!!!ぱかっっ!!ぱかっぱかっ・・・




シロは急いで瓦礫の回収を始めてくれた。だいぶん少なくなってきた所でシロが口をぱこんぱこんと開閉させながら俺を呼ぶ。急いで行くとぐったりとしたユリアナがいた。頭や腕・胸が血で汚れている。かなりの大怪我なのは分かるが果たしてこのまま動かして良いものだろうか?肋骨折れてたら内臓傷付けるかも知れないよな・・・。マリアは回復魔法使えないし、今からミラを呼ぶのは・・・回復薬とか持っておけば良かった・・・?ん?回復薬・・・そういや・・・。



 「シロ、前飲み込んだ回復薬あるだろ!?あれを出してくれるか?」



以前傷を負ってロープで縛られていたアクスを傷を癒すためにマリアが持ってきた回復薬を思い出した。シロが丁度自分の中に入った回復薬を奪って逃走後そのままだった筈だ。



ーーガタガタ・・・ガタッ!!ぱこんぱこん!!


お、分かったみたいだ。



ーーガタガタガタガタ、ぱかっっ!!!


そこには以前見た豪華な作りの便があった。それを飲ませようと思うものの、上手くいかないので仕方ないので口移しをする事にした。後から責任取れと言ってきそうな奴なのが不安ではある。


ちゃんと飲ませた後、様子を見ていると傷口が塞がってきた。顔の血色も良くなってきたので恐らく大丈夫だろう。



 「ゆ、ユリちゃん・・・たすかったの?」


ふらふらと近付いて来たマリアが聞いてきた。


 「ほら、諦めない事は確率を0にしない事なんだ。全力で挑めば1%の確率も上がるかも知れねーじゃん?だからマリアも自分の可能性の確率下げんなよ?マリアはもっと凄い事が出来る奴だよ」


 「セイさん・・・う、うぅ・・・うわぁぁーーーーーーぁぁぁんっっ!!!ぼくっ・・・ぼくもまだ生きてていいのっ!?ーーーー本当は生きたいのっ!!!生きたいのっっ!!!」



 

俺の胸にしがみついて大声で泣き出したマリアの話を落ち着くまで聞いていた。本当は生きたいってどう言う事なんだ?よく分からんが俺の知らない事がまだあるんだろうな・・・。この件が片付いてから聞いてみるか。




マリアが落ち着いて眠ってしまったのでカルトを頭に敷いて、ユリアナの様子を見に行く。マリアは小心者なのか魔物がいる中思いっきり泣いて眠れるって豪胆なのか分からんな・・・。


ユリアナの顔色を見る為に顔を覗き込むと、薄ら目が開いて俺を見た。



 「ーーーーわたしの・・・おうじさま・・・」



・・・・・・。どうやら元気になった様だ。


 「どうだ?そんな冗談が言えるくらいなら戦えるんじゃ無いか?」


起きあがろうとしても中々起き上がれず、腕と足をじたばたさせている。


 「怪我は治った様だけど・・・何が治っていないんだ?」


 「身体は治っていると思うわ。良く分からないけど、力が入らないの・・・。」


 「んー・・・。回復薬ももう無いしなぁ・・・。回復・・・あの『貴方と合体して一つに』があるじゃん?あれで回復しないのか?」

 「あれを使ったら使われた者は死ぬのよ?素敵・・・貴方が私の為に魂をくれるのかしら?」


 「なんで俺が死なにゃならんよ?魔物引き寄せたら束縛で自分で捕まえられるか?」

 「それは出来るけど、魔物って魔飛竜くらいしかこの周辺にいないでしょ・・・飛んでいる魔物の拘束は難しいのよ?」

 「んーーーーーー、赤花の貝が54匹いるんだけど一気に行けるか?」

 「やれなくも無いけど、なんで赤花の貝がここにいるのよ・・・」

 「詳しいことは後だ、シロ!!赤花の貝をここに出してくれ!!!」



ーーぱこん!!!ガタガタガタガタ・・・ぱこっっ!!!



どんどん赤花の貝がシロから出てくる。俺の可愛いシロから・・・。これアンデッド系や汚れている系は絶対回収止めないと!!可愛いシロのお口から汚いもん出させるか!!!!


寝たまま横を向きユリアナは次々に出てくる赤花の貝を次々と拘束し、テンポ良く魂を奪って行く。魂を奪われた赤花の貝は萎びて動かなくなっていった。54匹吸収し尽くしたユリアナは立ち上がれる様になっていた。



良かったと思う反面、ユリアナに違和感を感じるのは何故なのだろうか・・・。何かこう・・・やっちゃいけない事をやらかした気分になっていると言うか・・・。ま、まぁ今は気にしない事にしよう。



 「セイ、君たちは大丈夫だったのか!!すまない、町が襲われているのにこんなに遅れてしまって」


ローブを羽織ったギルド長が走って来た。いいなぁ、俺も厨二病発症させる様なローブを羽織ってみたい。でも俺の職業媒介者だし、魔法使いのローブの必要性皆無なんだよなぁ・・・。魔力はカスだし・・・。


 「いや、多分いない日を狙ったんだと思います。月1の定例会議の日に重なるなんてあり得ませんよ。俺らよりまだ魔物がいるのでそちらの討伐お願いします」

 「こちらにくる途中で5体倒したが、それ以外にはいない様だったから安心してくれ。魔物を討伐していたアクスも今はミラに合流していたよ。・・・それより何が起こったんだ?アクスは君に聞いてくれと言っていたのだが・・・」



アクス手が空いたのに俺の所にめんどくさい事押し付けて来たな・・・。ーーまぁ兄貴頑張ってくれたし説明くらい俺がするか。




 「ここじゃ話も何なんで、どこか話が出来る所でお話しします」

 「・・・そうだな。周りに聞かれて良い話か分からないからな。では、商業ギルドが壊れていなかったからそちらで聞こう」



どうやら冒険者ギルドは損壊しているらしい。マリア達がギルドに行かなくて良かった。

いつのまにか有償の愛の効果が切れてしまっていたので眠っているマリアをおぶい、カルトは元気になったユリアナに持って貰いシロはギルド長に持って貰い移動した。


商業ギルドも今回の魔物による惨事で影響を受ける為、職員達が慌ただしく動いている。ギルド長が受付に話すと応接室に通された。マリアの事まで忙しそうな職員に頼みづらかったので、ソファーに座った俺の膝に頭を乗せ寝かせる事にした。

ユリアナも俺の隣に座り、ギルド長が向かいに座った。話を始めようと口を開いた時ドアから壮年の人当たりの良さそうな男性が入ってきた。


 「いや〜すまない。ジョシュア遅れてしまって」


 「まだ話は聞いてないから間に合っている。セイ以外は知っているかも知れないが、彼は私と同期に当たる冒険者仲間でここ商業ギルドのギルド長をしているレイモンド・カックスだ。今回の魔物襲撃の件の詳細をコイツも聞きたいと言って来てな」

 「レイモンドだよろしく!早速教えてくれないか?早速今回の事について知っている事を教えてほしい」



カックスギルド長はソファーに座ると神妙な面持ちで俺を見据えた。








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