第11話 11フラストレーション!!エスカレーション!!!エクスプローション!!!







午前中の町は人もまばらで、花屋とパン屋は開店しているが他のお店はまだ準備も始まっていない。食堂は準備していたので9時に開店するのかもしれない。日本の牛丼屋の様に24時間開いている食堂はない様だ。これからは屋台でお金に余裕のある時には食べ物を買っておいた方が良さそうだな。日本の感覚で過ごしたら空腹に頻繁になりそうだからな。


町は比較的綺麗で景観は主要ヨーロッパの国々の様に花が色とりどりに植えられ、ベンチも比較的多い。今の日本ってベンチ少なくね?治安の為とか言うんだろうけど、地面に座られた方が治安悪くね?俺の価値観とお役所の価値観はきっと違うんだろうなぁ・・・。寝にくい様に工夫している国もあんのになぁ・・・。

おっと、この世界じゃどうにもならない事思い出してしまった。



 「いらっしゃいませっ!!」


パン屋で足を止め、並んでいるパンを見る。出来立てのパンって惹かれるよな。この後身体動かすんだし、気にせず食ってやろうと思う。ダンジョンから出た後に来たってパン屋は追加ほとんどしないから、カスカスの陳列棚みる羽目になるだけなんだよな〜・・・今買わないとな。11時に買いに来るのがベストではあるけど今回は無理なので諦め、ショーケースの中のパンを数種類買った。一個だけサンドをベンチに座って食べてみると、金額以上の美味しさに満足した。

ちなみに文字が読めないから何サンドか何が入っているかは分かっていない。どうせ名前聞いた所でその物が分からないと意味がないので店員さんに聞きはしない。まーアレルギー持ちでも無いのでどうでも良いかなと。



 「ん?」



時間的にそろそろギルドに向かっての散策に切り替えた方が良さそうだと思い、踵を返すと路地に一瞬見えた人影がダンジョンで見た変質者に似た背格好の人物に見えた。


流石にあんなヤバい魔物召喚する人物を追いかける勇気はないので、ギルド職員に伝えようと思う。自分の命が大事だし、冒険を望む歳じゃないしな。弱っちいステータスの俺が刃物一本で勝てる筈がないもんな。







迷う事なく約束の時間よりも早くギルドに着き、受付の職員にギルド長がいるか聞いてみた。今日は渋いダンディおじさんだ。昔は冒険者でそこそこ腕があって活躍してた感があってなんだか強そうに見える。今まで会った奴はまともな見てくれの奴がヤバいのでこのおじさんもヤバい可能性があるので、程々の距離を保つとしよう。



 「ギルド長の出勤時間は11時です。何か伝言しましょうか?」

 「え゛っ・・・遅いんですね・・・。あ、まぁ見間違いかも知れないんで急いで無いんですけど、路地に一瞬だけ一昨日見た変質者を見た気がしたので・・・」

 「本当ですかっっ!?」


職員は勢いよく立ち上がり、急いで他の職員を呼ぶと入れ替わって慌てて出て行った。既に多くいる冒険者たちがざわついた。変質者って冒険者たちがざわつく程ヤバい奴なのか・・・。追いかけなくて正解だな!!


そういえば冒険者登録したってギルド長が言ってたけど、カードとか貰ってないな。言ったら貰えるのか?初対面のギルド職員に聞いてみることにした。今度の職員はポニーテールの可愛い系の女性だ。


 「あの・・・俺、昨日ギルド長が冒険者登録したって言ってたんですけど、証明書みたいなのって貰えないんですかね?」

 「お名前は?」

 「セイです」

 「・・・あー・・・『』にパーティー登録されているセイ様ですね。はい、冒険者カードをギルド長から預かっています。こちらです。今は初心者なのでEランクですが、ダンジョンの魔物や採集の依頼を受けて点数を稼ぐ事でランクは上がります」


再びギルド内にいる冒険者たちがざわつく。視線がこっちに向いているのをひしひしと感じるが、身体を斜めにし視界から外す。良い視線でない事は確かだ。ギルド職員もわざとかって程大きい声でパーティー名を言ったのが気になる。こうなると分かって言ったとしか思えん。パーティー名言いながら鼻で笑ったし、コイツ俺バカにしてんの?

異世界に来て3日でなんで冒険者とギルド職員に舐められなきゃならんの?100%アイツらの所為なんだろうけど、俺関係なくね?理不尽過ぎやしないか?


粗方説明を聞くと、ギルドカードをシロに収納してもらう。

居た堪れない雰囲気なので、どこか隅でみんなを待っていようと隅に行くと数人の冒険者達が寄ってきた。見た目はまともな男2人と世紀末な筋肉ムキムキな男、格闘家の様な雰囲気で仮面を付けた女だ。めんどくさい事に巻き込まれる予感をひしひしと感じる。こういうのって必ずあるんだな・・・。よく見るわ漫画やアニメで。俺チートじゃないんだから本当勘弁してほしい・・・。メンバー差し出すから殴るなり何なりは、そっちで片付けてくれよ・・・。



 「ねぇ、君。君って『無慈悲なる運命さだめ』のメンバーになったんだって本当かい?」


見た目がまともな奴が話しかけて来た。やはり、こいつらも見た目がまともな奴がヤバいのか・・・。


 「えぇ、まぁ成り行きで」

 「へぇ?なんで弱小パーティーに加入しようと思ったんだい?」

 「いや、だから成り行きで」

 「あんな全員頭のおかしい連中のいるパーティーに加入するなんて、君悪い物でも食べたんじゃないのかい?」

 「それは違うのではないか?」

 

もう1人のまともな見た目の奴が話に混ざる。



 「どういう事だい?」

 「あんなパーティーに加入する様な愚か者なのだ。この者も元よりおかしいのだろう」

 「あぁっ!!その通りでしたね!!私とした事が失念しておりました!!」

 「君の様な貧弱で頭のおかしい冒険者は似た者同士で冒険者ごっこしているのがお似合いだ」

 「全くです!!」

 「「はははははっっ!!!」」



本当だとみんなで俺を嘲笑っている。ギルド職員も無視しているのが尚腹立たしい。一昨日から今日まで色々とあってフラストレーションが溜まっていた俺は、ついに異世界でキレてしまった。



 「なーにが『私とした事が』だっっっっっ!!!てめぇの事なんか一切知らねーっての!!!!俺みたいな雑魚に構っている時点でお前も雑魚だっつーの!!!何気取って見下してんだよ、俺はここに来て3日しか経ってないんだからアイツらがどんな奴かしらんし、もしアイツらに何かされたんならアイツらに直接言えよ。新入りいびりするお前らよりは、よっぽどまともだとは思うがな!!!お前ら貴族なんじゃないのか?お前らの方が冒険者ごっこしてるんじゃね?貴族のお遊び感覚でやってんじゃねーの??」



ギルド内は俺がコイツらにキレると思っていなかったのか静まりかえっている。青褪めている冒険者達もいるが知ったことか。なんか2人が怒り始めてるし。お前らが知りもしない俺の事罵る気なら、こっちも知らないお前らの事罵ってやるよ。ムキムキと仮面はオロオロし始めてるし、なんなんだコイツらまとめる奴いねーの?



 「・・・我ら『暗黒竜に使えし四天王』を敵に回す気とは良い度胸ではないか」

 「は?だからお前らの事知らんし。つか『無慈悲なる運命さだめ』よりダサいのがいて良かったわ。『無慈悲なる運命さだめ』って聞いた時恥ずかしくて死ねるって思ったけど、お前らそんなクソダサパーティー名を良く堂々と名乗れるな。感心するわ、マジで。俺だったら痛すぎて、よー名乗れんわ」


まともな見た目の2人が顔を真っ赤にしてプルプル震えている。ほらムキムキと仮面、見てないでこのボンボンみたいなの回収しろよ。まだ放置するならこの2人の長い鼻へし折るぞ??



 「フィレックス様問題を起こしては不味いですよっ」

 「くっ!!そうだな。貴様覚えていろ!!!私に楯突いてただでは置かんからな!!」

 「知らんがな」



やっと気がついたのかムキムキと仮面が回収して引きずる様に去って行った。きっと貴族とかなんだろーな。まぁこの町にずっといるつもりも無いから追い出されても問題ないし、指名手配されたら国外にでも逃げれば良いしな。身内がこの世界に居ないからどうとでもなる。



 「セイっ!!待たせたな!!・・・?何かあったのか??」

 「おはよー」


騒ぎが少し収まった頃、アクスとミラが姿を見せた。アクスがギルドの異様な雰囲気に気づきキョロキョロと辺りを見回している。





・・・おせーよ。







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