第12話 俺の知らないもう一人の仲間
ギルドは空気が悪いので拠点に向かう事にした。
相変わらずアクスはイケメンヤンキーな見た目だ。ジャケットを肘付近まで捲り上げていて見える腕には、どこにも怪我は見えない。綺麗に無くなっているからミラが後から治癒したんだろう。加害者のうちの1人が治療したと考えるとなんとも形容のしようがない気持ちになる・・・。良く一緒にいれるよな。加害者と被害者が一緒に暮らしてるとかアクスも結構ヤバくないか?・・・洗脳とかされてないよね?
「そういえばなんで2人だけで来たんだ?」
「リーダーはまだ起きてないんですぅ」
「いや、起こせよ」
「ユリアナはどこに行ったのか分かんねー。いつ居なくなったのかも分かんねー」
「自由かっっ!!!」
「なんかセイが以前より近い気がするぜ。くっ・・・パーティーメンバー加入がこんなに嬉しいのは初めてだっっ!!これから依頼を受けるのが苦痛じゃなくなるんじゃねぇかって思っちまう・・・うぅっ・・・」
「なんか知らんけど、俺は兄貴と冒険者活動出来るのはかなり楽しみにしてるんですけど?」
「セイ〜〜っっっっ!!俺が待っていたのはやっぱお前だったんだな!!」
急に男泣きし出したアクスに思わず2度見してしまう。すれ違う人たちが奇異の目で見てくるので逃げたい。
「えぇっ!?兄貴こんな往来で泣かないでくださいよっっ!!」
「えーーーーっっっ!?セイさん私は私はぁーーー??」
「まぁ・・・うん。ミラも一緒に金稼ごうな」
「うんっっ♪頑張ろうねー!!」
もうコイツらに気を使うのも疲れたので、遠慮せずにツッコミは入れる事にした。黙ってたらストレスが毎秒溜まってさっきみたいに爆発するから周りの為にもちょこちょこ発散させよう。うん。
話している間に拠点に辿り着いた。アクスが鍵を開け続いて俺も室内に入る。今回はドアを開けた先にとんでもない光景があることも無く、誰も一階にはいない様で談話室に通されたので他のメンバーが集まるまで待つ事になった。シロを持ち上げたりひっくり返して撫で回したりしながらシロに構っていると
「あーーーーっっっ!!!セイさんだーーーおはよーー」
マリアはいきなりソファーに座っていた俺に抱きついて来た。華奢な身体は筋肉の存在をほとんど感じられない。むしろ女性並みに柔らかいんだけど・・・筋肉が感じられない・・・本当に男なのか疑いたくなる。何故か断りもなく俺の膝の上に乗っかってるんだけど軽い・・・軽すぎる。感覚としては小学生中学年位の体重しかないんじゃないんだろうか?本当に剣士かいよいよ疑わしい。
「おはようマリア。ーーつか、お前遅刻だから」
「10時だっけ?まだ大丈夫だよー11時まで後20分あるからねー」
「いやいや、10時台じゃなくて10時丁度に待ち合わせ場所に来なきゃ遅刻だから」
「そうなの?セイさん待ったの?」
「当たり前だろ10時前には居たぞ?」
「ごめんね?・・・セイさん僕のことキライになっちゃった?・・・キライになるよね・・・僕なんか・・・」
潤んだ目で俺の胸にしがみつき上目遣いで見た後項垂れた。あざとい・・・あざといけどなんか捨てられた子犬の様で・・・いや、子猫の様で、見捨てるのは良心の呵責に苛まれる事は間違いない。仕方ないのでマリアのプリンの様な配色の頭を撫でる。
「嫌いにはなってないから」
「・・・うそだー」
「まぁ、勝手にパーティー組んだり堂々と遅刻してるのはちょっと怒ってるけどな」
「ぐすっ・・・やっぱりキライになったんだ・・・ごめんなさい・・・」
「はいはい。マリアの事好きだよ、でも遅刻はダメだぞ?」
めんどくさい女ってこんな感じなんじゃね?と付き合った事すらないのに、男で味わう羽目になるっていうな・・・白目剥くわ。めんどくさくても女性で体験したい人生だった・・・。
抱き締めたり撫でたりしたがまだ俺の言葉疑ってくるのでめんどくなって、頬や額にキスした。美少女と自己暗示かければまだ我慢できる!!やっとマリアの機嫌が治って来た!!良くやった俺!!日本人の俺には過剰なスキンシップは苦痛だが、それすらマリアに悟られる訳にはいけない・・・。まためんどくさい事になるのが目に見えている。相手は子供だ怒ったら負けだ。
ーーーこれからしばらくこんなやり取りあるかと思うと涙出るわ。
「そういや俺らがくる前にギルドでーー何があった?」
急に真面目な声色でアクスが聞いてきた。元の世界だったら日本人の必殺技『茶を濁す』を発動させる所だが、この世界で別に誰に忖度する必要性もないから説明する事にした。ギルド職員の事から絡んできた『暗黒竜に使えし四天王』(笑)の言動までを説明し終えると皆俯きダンマリである。
「ーーアイツらか・・・。悪かったなセイ、俺たちの所為で余計な事に巻き込まれちまったな」
「なんで『暗黒竜に使え、しーーブフォッ!・・・コホン、四天王』とかに目つけられてんだ?」
「アイツら本当頭くるっ!!!目つけられ始めたキッカケは私達がパーティー結成して間もない頃の話なの・・・。セイさんには言ってなかったけど結成当時は5人だったの・・・」
「剣士は僕以外に居たんだ」
「その日俺たちは足跡ダンジョンに潜っていたんだーーー」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「じゃあー今日は10階層まで行って
「おうっ!!」
「サックっと終わらせて美味しいご飯を食べるんだからね!!」
「あぁ、そうだな」
「ほらっ早くいきましょう?」
足跡ダンジョン10階層まで降りて来たマリア達は蛇様な姿に足が生えた
「10匹討伐完了ーみんなお疲れさまー!」
「存外早かったな」
「よしっ引き上げっぞ」
引き上げる為に上へ繋がる階段を先頭を歩いていたアクスが上る。最後の階段を登り切る瞬間足元に魔法陣が展開した。ダンジョンにはトラップがいくつもあるが、足跡ダンジョンは20階層からしか存在しない。故に今回のトラップは人為的によるものであった。
魔法陣の光は全員を包み込み、その場から消えた。
いきなり飛ばされた衝撃で倒れた身体を起こす。同じダンジョン内だとはダンジョンの雰囲気から知ることができた。
「くそっ!!誰だ魔法仕掛けやがったクソ野郎は!!」
「皆大丈夫か!?」
「私は大丈夫ですぅ!何処ですかここ〜」
「魔素の量から考えて20階層は下の階の様ねぇ」
「いたたっもうっ!!びっくりしたよっ!!」
「ーー餌がやって来ましたね」
「これで我らも戦いに集中出来ると言ったところか」
声がした方向を見るとそこに居たのは『暗黒竜に使えし四天王』の4人だった。そしてそれと対峙しているのは
全員のレベルが20以下でミラはレベルが1番低く8であった。勝ち目がないこの状況で転移魔法陣で呼び寄せられて自分達のことを『餌』と呼んでいた事から、すぐに何のために呼ばれたのか予想がついた。
「捕獲」
『暗黒竜に使えし四天王』の闇魔法使いデランドがミラに向かって魔法を放つと、黒い手はミラを捕まえ入洞蜘蛛の前に差し出す。
「やだっっ!!なんでっっ!!離してぇっっっ!!!」
『ぎyuuぎぃyaaaaaa・・・』
ミラが必死に手足をバタつかせ抵抗するものの全く黒い手は緩む事なく、入洞蜘蛛を誘き寄せる。
「お前らっ!!自分達が何をやっているのか分かっているのか!?」
「テメェらミラを離せっ!!」
「ミラ!!」
「灼熱球!!」
「水撃」
ユリアナが火魔法で攻撃をデランドに向けて放つも、仮面を付けた魔法格闘家リンダが水魔法を帯びた拳で打ち消しユリアナが舌打ちをする。
ユリアナのリンダに対する魔法の相性は悪く、死なない程度の魔法を使えばリンダは軽々と打ち消す事が出来る上にリンダが得意なのは接近戦でユリアナは接近戦が苦手である。殺す気でかからないと倒せないが、冒険者同士の試合以外での攻撃は禁止であり殺したりすればもう冒険者に戻ることは出来ない。パーティーメンバー全員が罰を受けるのだ。
その為にユリアナは躊躇した。
その間アクスは闇の手や入洞蜘蛛に魔弾を撃ち込むが効く様子が全くない。マリアも必死にデランドや『暗黒竜に使えし四天王』のリーダーフィレックスに止める様訴えかける。
「こんなことはいけない事です!!ミラを離してください!!お願いですっっ!!」
「ーーーそうだな、可哀想だから離してやろう」
デランドがそう言ったので、安心したマリアだったがデランドの口の端が大きく歪に上がった。デランドが手を動かした瞬間、ミラは入洞蜘蛛に向かって放り投げられた。
牙のついた口を大きく開き、投げられたミラを食べようと入洞蜘蛛は身体を動かす。
ーードンッッッ!!
入洞蜘蛛の口にミラが入る前に、『無慈悲なる
「捕獲」
デランドが魔法を発動したのでやっと入洞蜘蛛と戦うのかと思ったが、黒い手が捕まえたのはエドワードだった。
「っっ!?」
「ーーーなっっ!!!」
「「え」」
ーーグヂュッッッ!!!
生々しい音と骨の折れる不快な音が鼓膜に響き、マリア達の視界は色を失った。
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