第10話 無料体験商法の様な。
無事にアクスを寝かせる事が出来た俺は、マリアがお茶を淹れてくれると言うのでリビングに向かう。リビングに向かう途中でシロが物陰に隠れていたのですぐに捕まえた。犬の時なら隠れられていただろうけど、宝箱は硬いので他の物に当たりつっかえ身体が半分出ていたのですぐに見つける事が出来た。まぁ犬の時もお尻と尻尾出てる事多かったけど・・・。頭隠して尻隠さずなシロは可愛い過ぎると思う。俺に見つけられると『見つかっちゃった!』みたいな雰囲気を感じて余計萌える。宝箱になったシロの愛らしさは『この世界でトップアイドル宝箱になれるんじゃ?』と最近真面目に思っている。
リビングに着き
俺も向かいに腰をかけると、ぬいぐるみが紅茶を淹れてくれた。弱小パーティーの割に良いカップとソーサーを使っている。高いだろう事は使い慣れていない俺でも直ぐに分かる程だ。
一体どこから金を得ているんだ・・・?ギルド長や国王ですらマリアの暴挙を止められないって、もしかして国を跨ぎ暗躍するヤバい殺人パーティーとか!?なんか怖くなってきたな・・・。ーー早く目を覚ましてくれ兄貴・・・。
「セイさん、ようこそ『無慈悲なる
両手を広げて可愛くウエルカムアピールがまたあざとい。
お前が罠に嵌めたんだろという言葉は喉の上部まで上ってきたが、ぐっと堪え紅茶を一口飲む。紅茶って美味いんだな!!すんげー高級感ある香りするわ。このぬいぐるみ只者じゃ無いな・・・。
「
保険を掛けてずっといない事を言外に含ませた。
「うん♪よろしくねっ!!」
にっこりと微笑んだマリアの紅茶を飲む様は素人目から見ても美しい所作だ。もしかして金の出所はコイツか?着ている服もレースまで付いて上流階級の貴族って雰囲気だし・・・。もしかして貴族坊ちゃんの道楽か?国王でも注意がめんどくさい高位の貴族っていうなら話の辻褄が合うが・・・。
「そう言えば、他の人達はどこに行ったんだ?全く見かけないけど?」
「いたよー?でもあーくんに酷いことしたから、お仕置きとしてセイさんの必要な道具を買いに行ってもらっているんだー」
「え?必要なもの?」
「うんっ!!空いている部屋に家具も服も無いからね、買いに行ってもらってるんだよー!一緒に暮らすから必要でしょ?」
え?マジで俺もここに住むの?なんか嫌なんですけど・・・。安らげなくね?勝手に部屋に入ってきそうな奴らしか居なくね?眠っている宿屋の部屋に勝手に入って来る様なのがリーダーだよ?ドアノックしそうなのアクス位しかいないだろ。ミラとかめちゃくちゃ心配なんですけど・・・。まぁ大事なものは全部シロに預けた方が良さそうだな。
既にシェアハウスが殺伐としている感否めない。ダンジョン潜った後に気の休まらない家は嫌だ。
「あ、お気遣い嬉しいんですけど、俺は宿で暫く過ごすんで大丈夫です〜」
「気にしなくて良いよー?お金も掛からないよー」
「いや、宿屋前払いしたんでまた今度お願いします」
「食事もぼくが作るよー?」
「この町の食事全部制覇したいので大丈夫です」
「洗濯するよー?」
「いや、流石に自分の洗濯物は自分で洗いたいので大丈夫です」
「ここからの方がギルドに近いよー?」
「俺まだこの町覚えて無いんで、歩いて覚えようかなと」
「そっかー・・・じゃあ、しょうがないよね」
「はい、それじゃ明日冒険者ギルドで待ち合わせで?時間は何時に?」
「そうだねー、うーん・・・何時だろ?10時で良いや」
「10時だな、分かった。じゃあ明日10時にギルドで」
「うん!また明日ー」
マリアと黒猫ぬいぐるみが手を振りながら見送ってくれた。
ここに長居すればするほど、住むことになりそうだったので長い攻防をへてやっと話を切り上げ別れを告げさっさと無慈悲なる
引き留めなげぇーーーっっ!!空気読めて敢えてなのか、読めないのか全く分からなかったな・・・。つ、疲れた・・・。
夕飯は心労から朝行った食堂には行かず、屋台でいくつか食べ物を買って宿屋に戻った。シロはベッドの上でガタガタ身体を揺らしながら元気が有り余っている様子で元気に動き回っている。俺はテーブルに屋台で買った食べ物を並べて食べていたが、パーティーの不安が付き纏い食欲が出ずにほとんどシロの中に収納させてもらい眠った。
♢♢♢♢♢♢♢
重い・・・
「・・・しろ・・・重い・・・おりて・・・」
ーーーぱこん・・・
あれ?俺の横に宝箱のシロが見える。眠りながらも俺の声に返事を無意識にした様だ。可愛い・・・。・・・ん?じゃあ・・・俺の下半身に乗っかってんのはなんだ?ーーーあったかい!?生き物!?
一気に頭がクリアになって上半身をすぐ起こし、何が乗っかっているのかを確認作業に移る。シーツの上ではなくシーツの中に上半身だけ入り膝が床に着いている状態だ。苦しくは無いのだろうか?人間の形で温かい息が下半身にかかる。あ、やばっ変な気持ちになりそう。
慌ててシーツを剥ぎ取る。
「だっ誰だお前っっっ!?!?」
赤いウエーブがかった腰まである髪の毛の年若い女性が全裸でパンツ一枚の俺の腰にしがみついている。
痴女が何故ここに・・・怖っ。変な気持ちも怖さのあまり収まったわ。痴女から逃れようと脚を引き抜こうにもガッチリ掴んで離さない。強引に抜いたらパンツが脱げるな・・・こんな痴女の前でこっちも全裸とか嫌すぎる。逃れようとすればする程締め付けてくる・・・この痴女タコか蛇の生まれ変わりなんじゃね?この町の住民まともだと思ってたのに宿屋に勝手に痴女が侵入するほど治安悪いのか・・・。
「ん・・・んんぅっ・・・」
俺の腰に顔を擦り付けてきたので、俺は思わず痴女の頭をシロを被せた。寝ぼけたシロは痴女をカミカミし始めた。ごめんなシロ・・・こんな得体の知れないもん噛ませて・・・ばっちぃよな・・・今日は空いている時間は全部シロの為に使うからな!!!
「いぎぎぎぎぎっっっっっっっっ!!!」
痴女は魔物の鳴き声の様な声を上げシロを外そうと必死だ。目が覚めた様で何よりだ。俺はベッドから降り着る。今日の帰る時にでも衣類買ってこないとな。
着替え終わったので、シロを痴女から引き離しシロを起こす。
ーー・・・ぱこ・・・ん・・・ガタ、ガタガタ
「おはようシロ、昨日買った食べ物一個出してくれるか?」
ーーぱこんっ!!・・・カタカタ・・・ぱかっ!!
シロが口を開くと昨日屋台で買った焼きそばの様な麺がシロの中にあった。ほのかに温かいのでもしかしたらシロの中は時間が止まっているのかもしれない。早速食べると、やはりこの世界の食べ物に間違いは無いと言うほどに美味しい。
完食後あまりの美味しさに存在を忘れていた痴女がどうなっているか捜すと、ベッドに上がりシーツの中に潜り込んでいた。何かボソボソ言っているのが聞こえるので耳を澄ます。
「・・・はぁはぁ・・・すぅすぅ・・・オスの匂いウマウマ・・・はぁはぁ・・・」
かすかに聞こえる声は拾うべきでは無かったと後悔し、シロを抱き抱えると音を立てずに部屋をでた。時間は元の世界と変わらなかったので安心だ。今は8時半と予定の時間まで余裕があるのでこの町の構造や店の位置を覚えようとシロと散策をする事にした。
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