第5話 俺、雑魚過ぎじゃね?







取り敢えず2人は魔力が少なくなっているらしいので矛牛テイルの死骸を処理したら休憩後、上の出口から外に出る事になった。

シロが吐き出した俺の武器は壁に刺さっていたが、アクスの手を借りてなんとか抜くことが出来た。矛牛テイルの死骸は討伐証明部位以外も高く売れるらしいので、無一文の俺は少しでも金になる物を持って帰ろうと、シロの口に入る大きさにしてどんどんシロの中に入れていった。




 「すげーな・・・矛牛テイル持って帰る冒険者は基本、大人数で討伐するからみんなでバラして個々に持って帰るから持てるんだけど・・・まさかシロが収納バックと同じ性能持っているとはなぁ〜・・・相当楽だな」



アクスも手伝ってくれ、だいぶん早く片付きそうだ。ミラは討伐部位のツノを撫で回している。矛の様になっていた尻尾は千切れていてどこに行ったのか分からない。



 「最初シロの中を見た時は全くそんな感じじゃなかったんだけどなぁ」

 「宝箱だけどレベルアップしてスキル獲得したとかか?」

 「そういや、この包丁みたいな武器シロと協力してゴブリンみたいなのを倒した時に手に入れたんだが、その時レベル1上がってたな。その後トカゲみたいなのを倒したからその時上がってスキル獲得したのかも?」


 「ゴブリンが何か分かんないですけど、その武器持っているのは断魔ツマですねぇー。魔法が効かないので一般市民が倒せるとか凄いですよ!!後は闇トカゲですね!闇トカゲは光から逃げる習性があるので、照明魔法が使えれば戦わないで済むんです!!でも、油断していると背後から舌で首をぎゅーっとやられちゃうんで気をつけてくださいね♪」



いきなりミラが話に加わって来た。どうやらミラは勉強は出来るらしい。



 「なるほどな。説明ありがとな」

 「えへへへっ♪どういたしましてっ、またいつでも魔物のこと聞いてください!!」



頼られることが普段少ないのだろう、やたら嬉しそうにニヤニヤしている。うん、教本的な事は全部コイツに聞いて常識はアクスに聞こうと思う。



 「アクス、ここ初心者ダンジョンって話だったけど結構強くね?」

 「あー・・・まぁ1階〜5階辺りをパーティー5人位でうろついて経験値稼いでしばらくして、5階〜10階に降りるって感じだな。1階〜5階の魔物はレベル1〜5の魔物しか出ないんだ。ここの足跡ダンジョンだけは他のダンジョンと違ってその階層と同程度のレベルの魔物しかでねぇ。ここは16階だから大体レベル16位の魔物だな。」

 「え?じゃあ、その断魔ツマってやつや闇トカゲってのもレベル16位なのか!?」

 「そうだ。両方とも初心者抜け出した辺りに戦う魔物だからな。一般市民のセイが生き残れたのは運が良かったってこった」

 「でも、断魔ツマ倒してもシロのレベル2だったぞ?経験値強い割に少なくね?」

 「ーーシロのレベルって元々1だったのか!?1上がったって言うからてっきりシロのレベル13位かと勝手に思ってたわ・・・。セイ本当に運が良かったな・・・。普通なら絶対死んでんぞ」

 「やっぱ、レベル1のやつが断魔ツマ倒したらもっと上がるのか?」

 「そうだな・・・2人で戦っても大体レベル8になる位経験値あるんじゃねーか?まぁレベルが上がる必要経験値も人それぞれだからな・・・。シロはレベル上がりにくいんだろ。ちなみに今どれ位か分かるか?」


矛牛テイルの回収が終わり、アクス達が持っていた干物と水を貰って休憩を取る。アクスに聞かれたのでシロを膝に乗せどうやって確認すれば良いのか考えていると文字が浮かんだ。俺が見たいと思ったらシロのステータスは見える様である。



       【シロ】セイの愛宝箱

       【木の宝箱】レベル9

       【術】

        ・噛み付き

        ・捨て身タックル

        ・オウム返し

        ・吐き出し

       【スキル】

        ・異空間収納

      New・宝箱



宝箱というよく分からないスキルが気になるが、調べるのは追々にする事にした。



 「あ、やっぱ闇トカゲ倒した時にスキル手に入れてたみたいでレベルは9だってさ。矛牛テイル倒してレベル9ってめちゃくちゃ効率悪いじゃん・・・相変わらず体力とかは分かんないみたいだなぁ」


 「そういやどうやって倒したかまだ聞いていなかったな。今後の為に教えてくれねーか?」


 「それ気になってるやつぅ〜!!」

 

 「あー・・・多分なんだけどシロの術に『吐き出し』ってのがいつの間にか増えてんだけど、アクスが一回俺たちに攻撃しただろ?あれ、シロが体内に攻撃回収していたんだろうな。なんか吸い込まれた感若干あったけどまさか本当に吸い込んでいるとは思わなかったな。2人が矛牛テイルのタックルで気絶してて俺も動けないから預けていた武器を投げて貰おうと思って、口から出す様に言ったんだ。そしたら尻尾咥えたまま開いている隙間から、矛牛テイルに向かってアクスから回収した電撃と俺の武器を一気に吐き出してシロが倒したみたい。シロ凄くね?お利口さんじゃね?」


 「やべぇな・・・。シロが人間ならもうBランクの冒険者にはなってんだろーな」

 「そういえばセイさんのレベルっていくつなんですか?ちなみに私は矛牛テイル倒して5つ上がって丁度20です」

 「あ、ちなみに俺はさっき3つ上がって35だ」


アクスがレベル35という事に驚いた。苦労人が祟って結果が出せていないのが手にとる様に分かって身震いした。ミラに限っては『だろうな』感しかしない。まぁ回復魔法は中級が使えるのでどんどん効率良く鍛えれば替えの効かないヒーラーになれるだろう。そこまで行くのにどれだけのアクスのフォローぎせいが必要なのだろうか・・・。


自分のレベルはどうやって調べるのかシロの様にステータスウィンドウが出るのかさえ分からない。


 「レベルの見方分かんねーのか?指先に少し魔力を込めて人差し指と親指を合わせる。んで、反対の腕とか身体の一部の上でその合わせた指を開くと出るぞ」


魔力がイマイチ分からんが何となく、言われた通りやってみると自分のステータスウィンドウが現れた。



      【セイ】シロの飼い主

        体力 75 魔力 50 力 20

      【一般市民】レベル5

      【術】ー

      【スキル】

       ・シロへの意思伝達

       ・シロの躾

       



 「おおっっ!!出たっっっ!!アクス出たぞ!!・・・え?」

 「ははは♪良かったじゃねぇか!!で、どうよ?」

 「レベルいくついくつ??」


2人の期待の眼差しに居た堪れない気分にしかならない。シロのステータスウインドウに出てなかった体力と魔力、力が載っている。体力と魔力、力の悲惨さはこの世界の基準が分からない俺でも少ないのが分かる。これは見なかった事にしてレベルだけを伝えよう。


 「・・・・・・5」

 「「え?」」


 「だから・・・レベル5なんだって。うぁぁぁぁっっっっっっ!!!なんで宝箱のシロより効率悪いんだよーーーーーーっっっっっ!!しかも別に今回のレベルアップでスキル獲得したわけじゃないみたいじゃんっっっ!!」


 「ーー2番目に書いてあるのは職業に当たるんだけど、何て書いてる?」

 「・・・一般市民」

 「あー・・・なるほどな。セイ、職業が一般市民の場合レベルが上がる必要経験値がかなり必要なんだ。冒険者になりゃレベル上がりやすくなるだろうから心配すんな」

 「一般市民でレベル5なら技もねーだろ?」

 「・・・あぁ」

 「スキルは何があるの??」

 「『シロへの意思伝達』と『シロの躾』」

 「わぁ〜シロちゃん関連なんですね〜♪飼い主の鑑です!!」

 「いや〜♪♪そうかなぁ〜♪♪」

 「勿論ですよっっ!!シロちゃんも良い飼い主さんで良かったですねぇ?」


ミラがシロを撫でると、シロは蓋をぱこんぱこんと開閉させ身体を嬉しそうに揺さぶる。シロは宝箱でも可愛い。


 「そういや報酬どうすんよ」

 「均等に3分割ですよね!!」

 「ーーあ゛ぁん?矛牛テイルの肉もセイが持ってくれるんだぞ?てめぇ・・・セイが何も知らね〜からってふざけてんじゃねぇぞ、コラ」

 「ひぃ〜っっっ!!ごめんなさいっっっ!!!」


アクスはヤンキーはヤンキーでも正統派ヤンキーかよ!!やっぱコイツ苦労人だわ!!マジでカッコ良い!!男は正統派ヤンキーに一度は憧れるよな〜・・・。弱気を助け強気を挫く・・・かぁ〜!!心までイケメンたぁ恐れ入るぜ!!まさか自分達の利益より俺の不利益を怒ってくれるなんてな。

アクスの事をこれから兄貴と呼ぼうと心に決めた。



 「アクスの事はこれから兄貴って呼ばせて貰います!!」

 「え?あ、そうか・・・?ははっ、なんか恥ずかしいな」

 「私の事はお姉ちゃんって呼んでね!!」


 「ーー報酬は均等で良いよ。お詫びのご飯もご馳走になるしな」

 「ーーそうか。お前いい奴だな・・・お前に一つ詫びなきゃなんねー事があるんだ。出会った時セイの事変質者だと思って警戒してたんだ。悪かった」


出会った辺りの自分の行動を思い出してみる。ん?宝箱のシロに頬擦りして無かったか?しかもめちゃくちゃ泣きながら・・・しかもその後包丁持って追い回したな・・・。あれ?これ変質者どころじゃなくね?・・・きっとこの世界じゃ変質者レベルだな、うん。


 「・・・宝箱持って号泣していたら変質者だわな・・・気にしないでくれ」

 「ありがとなっ!!じゃあ報酬と変質者の報告の為に帰るぞ」

 「おうっっ!!」ーーぱこん!!


背後で何かお姉ちゃんがどうとか喋りかけて来るが、無視してダンジョンを脱出した。








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