第3話 頼み
第3話 頼み
・フリーター
・歳は23歳、私の6つ上
・本屋でアルバイト
箇条書きしてみるが、男の情報は未だこれしか分からない。小さい時、知らない人にはついて行かないこと、って習ったっけ。
あの日、私が死のうとしてから1週間が経った。
特に変わりはない。
約束通り、衣食住全て与えてくれている。
おまけにネットも使い放題だ。
私がこの男を突き出す(警察)という心配はしていないのだろうか。
今どき、ネットに呟けば情報なんて即出荷だ。
まぁ安心しろ、それは最終手段に取っておいてやる。
「ねぇ、ひよりさーん」
(なんだ、気持ち悪い)
バイトから帰って来た男が、夕ご飯を作りながら話しかけてくる。今日はカレーだ。
「何」
「あの、さ、バイトとか興味無い?」
「……は?」
待て待て、約束はどうなったんだよ。
だいたいなんで私がバイトなんか…。
「いやあ、さすがに食費とか生活費2人分をフリーターの僕ひとりじゃやっていけないなぁと思って…笑」
この家に来た時から、薄々感ずいてはいたが、まぁ金は無さそうだ。人1人養う余裕がどこにあるのかと不思議だった。
「それをわかった上で私を連れて帰ったんじゃないの…?!」
「うーん…。」
(はぁ、所詮は自分の前で他人の死ぬところ見るのが嫌だっただけだな、こいつ…)
「わかった、死ぬわ」
「待って待って待って!」
プラスチックのコップやらスプーンやらをバタバタと落とす。
「待って、ごめん、僕が悪かったよ。
大丈夫、何とかするから。カレー多めになっちゃうけどそこは許してね」
まったく、君はすぐに死にたがるから…。
そう呟きながら落としたものを拾う。
そんなに私に死んでほしくないのか。
なんで会ってそこらの他人にそこまでするのだろう。
男が居ない間、ネットを漁っては自分の名前が世間に出ていないかと検索する。
名前は、ない。
予想はしていた。
世間様なら、親は1週間も経って子供が家に帰って来ない、連絡もない、真っ先に捜索願いを出すのが当たり前だと思うだろう。
だが、’’あの親’’だ。
そんなことするはずもない。
あぁようやくいなくなったと思っているだろう。
私は邪魔者。
消えてほしい存在。
いらないもの。
「そんな怖い顔しないで、ほら、カレー冷めちゃうよ?」
眉間にシワがよっていたのか、おでこが痛い。
カレーを口にほお張る。
(…美味しい…。)
「バイト先、何か紹介してくれんの?」
男は口を開けたまま固まったかと思えば、子供のように目を輝かせている。
「怪しいバイトとかだったらぶっ殺すよ。」
ネットを漁る日々も飽きてきた頃だ。
食費くらいなら稼いでやってもいい。
「それは大丈夫だよ、僕もいるから」
「……?!」
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