「丈留と二人で遊ぼっかなー?」
次は
ここまで来ると慣れたもので、配られたカードを額に掲げるまで、そう時間はかからなかった。
家入はダイヤの6、ステイシーはクラブの4。直観的には勝てそうである。
「むむ、また微妙な手ですね」
「あー、ダメだよ
「早速惑わせに来ましたね。そうはいきませんよ。加藤先輩の手、安いじゃないですか」
「あれー? さっき微妙って言ったよね?」
家入とステイシーの間で激しい攻防が繰り広げられる。入る余地がなくつい傍観してしまっていると、ステイシーが「丈留もだんまりは良くないよー?」と煽ってきた。
「そうだな……。家入は親で降りれないし、悪いこと言わないから大人しくレイズせず挑めとしか」
「それはステイシー先輩より低いってことですか?」
「俺が400点払いたくないだけかもな」
「なら、二人から400点頂くとしましょうか。お二人が降りないならこのまま賭け点倍にして勝負しますよ」
「あ、じゃあ私降りるねー」
突然ステイシーがそう言うや、カードを下ろしてしまう。その様子に家入の表情ご少し歪んだのを見逃さない。無理もない、あんな安手なら勝負に引きずり込みたいからだ。
「先輩はどうです?」
「勝負する」
「……そうですか。じゃあしょう──」「大夢ダメだよ!」
勝負宣告しようとした家入をステイシーが制した。何事かと思い、俺と家入の視線が彼女に集まる。
そんな俺たち、というか家入に向けてステイシーは言い放つ。
「さっき賭け点2倍にするって言ったよね?」
「……わかりました、2倍で勝負しましょう」
家入は残る持ち点すべてを場に出した。家入がそう決めたのならと、俺も200点を場に出した。
「いきますよ先輩。せーの!」
家入はダイヤの6、俺はクラブの8。つまり俺の勝ちだ。
「あははっ、大夢の負けだね」
わかっていて吹っ掛けたステイシーがけたけた笑う。
当の家入はというと、身動き一つも取らずに黙ったままだ。さすがに気の毒になり、俺の口からは苦笑いが漏れた。
「ちょっと大夢弱すぎじゃない?」
「いや、ステイシーが強すぎるんだろ」
「ホントですよ」
「ラスベガス仕込みのギャンブルの腕だよー」
そう言えばステイシーは最近までアメリカにいたんだったか。なるほどラスベガス。妙に納得していまうのは俺だけではなかったようで、家入もなるほどと言うように頷いていた。
するとステイシーは途端に慌て始める。
「ちょ、ちょっと冗談だよー? そもそもラスベガスのカジノは21歳からだからね」
「それを知ってるってことは、行こうとはしたな?」
「日本ならパチンコが18歳からって知ってるでしょ? それと同じで向こうじゃ常識なんだよ」
「お前日本生まれの日本育ちって言ってなかったか?」
俺の言及に対してステイシーはばつの悪そうな表情を見せる。やはりカジノに行こうとして行けなかったな、これは。
やがてステイシーはその場を誤魔化すように一度咳払いして話題を変えた。
「それはそれとして、楽しかったねー。またやろうよー」
「そうだな」
「まあ悪くは無かったですね。しかし……」
家入は歯切れの悪い返答をする。その様子にステイシーは悪戯な表情を見せて家入にこう言った。
「大夢はそうでもないのかな? じゃあこれからは丈留と二人で遊ぼっかなー?」
「むむっ、そうは行きませんよ。そのときは私も混ぜてくださいね」
「えー、どうしょっかなー?」
「ステイシー先輩の意見は聞いてませんよ」
「言うねー。ま、しょうがないなー」
「待てお前ら、そもそも何で俺が巻き込まれる前提なんだよ」
俺の問いに二人は一度顔を見合わせると、再びこちらに向き直りこう言い放った。
「当たり前じゃないですか」
「わかってないねー」
そして、先ほどまで少し言い合いしていたのが嘘かのように、二人は共に笑い合うのであった。
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