第20話
「……くしゅん! うーん、誰か私の噂でもしてるのかなぁ?」
学院の外れ、ミオが鼻を抑えながら、振り返ると影に隠れている存在に呼びかけた。
「ねぇ? キミ達はどう思う?」
ぞっとするような殺気を滲ませた声に現れたのは一五人の白装束。
「私を狙うのは君たちだけかな?」
「いかにも、忌々しい精霊結界を突破させた《幻想種》様や侍祭達は貴様の手によって葬り去られてしまったが我々はそう簡単にいくと思うな」
「左様。《幻想種》様へ逆らう者どもを育てる施設の長でもあり、自身も反逆者であるS級 《魔導戦士》九羅真ミオ。貴様を救済してくれる」
「キミ達のボスは放っておいていいの? 私の教え子がキミ達の野望を止めに向かっているよ?」
ミオのその言葉に白装束達はケラケラと小馬鹿にしたように笑う。
「あそこには我らが司祭様と最強の《幻想種》様が呼び出される。たかだか学生ごときでは対処できまい」
「貴様はそんな心配はせずに先に救済されているといい。すぐにすべてを救ってやる」
「ふーん、話したいことはそれで終わりかなー?」
取り囲まれた状況でもいつもと何ら変わらない態度のミオ。その小馬鹿にしたような態度に救済教団のトップクラスの戦闘力を誇る教団員達の顔つきが変わる。
「我らB級一五人を前にしてもその態度……すでに諦めたか」
「愚かだな戦力差というものを理解する頭すらないとは……」
「狂人という噂はあったが真だったか」
さんざんな言われようだがミオが特に怒った様子はない。むしろ、落ち着いていた。
「あのね、なんでS級なんて区分ができたと思う?」
「いきなり何を?」
「評価としてはA級で十分なんだよ。だってそうじゃない? 実力を表すならそれでいいんだから。でもね、本物を倒すにはそれじゃ駄目なんだ。上位だろうと下位だろうと四属性じゃね」
「何を……! 何を訳の分からないことを言っている!」
そのミオが醸し出す得体の知れない恐怖に、教団員達の本能が〝逃げろ〟と叫ぶが、理性でそれを押し殺す。
「世迷い言に耳を貸すな……! 全員かかれっ!」
「「「「「おう!」」」」」
四方八方の《魔導発動機》から各属性の魔法陣が現れて《魔導》が放たれ――ることはなかった。
ミオが袖口からコンバットナイフを取り出した瞬間には全員が崩れ落ちていたからだ。
「バカな、我らが……何もできずに……だと」
「『クロックアップ』。と言っても分からないだろうね。どうせ、この程度の情報も知らなかったんだろうから」
「――……司祭様……お許――……」
「S級ってのはね、普通の人間が手を出しちゃ行けない世界なんだよ……」
ヒュウっとミオの髪が風にたなびいた。
「さーて、生徒達を助けようか! 契約は守らないとね!」
先ほどまでの雰囲気と一変したミオは、何事もなかったかのようにその場を後にするのだった。
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