第15話

「はい、今日は防壁のすぐ近くに確認された《幻想種》の退治よ!」


 いつもの〝《学院魔導戦士協会》感覚派〟の部屋の中、アカリの声が響き渡っていた。


「今回も依頼は決められているんですね」


 本日も《クラン》活動日――なのだが、自分達で依頼を決められないらしい。


「なーんか最近増えているらしいのよね」


 アカリの話ではここ一週間ほど低位種ではあるが《幻想種》の発生量が大幅に増えているらしい。それを聞いたシオンが当然の疑問を口にする。


「えっとアカリさん。《魔導戦士》に任せるのではダメなんですか?」


「鬼といい妖弧の件といい、またまた人手が足りていないんですって――それでまたしても学院生に出番が回ってきたってわけ」


 おあつらえ向きに低位種だけだしね、とアカリが最後に付け足す。


「なんかいいように使われているだけな気がするかなー」


「体のいいバイト感覚なのです」


 それに不満を漏らしたのはヒナとヤナだ。シオンも内心ではそう思っているのか、苦笑いを浮かべている。シュンも顔には出していないが、ほぼ同意見である。


 それを見たアカリは全員をなだめにかかる。


「まあまあ、それに私達だけじゃなくて、〝《学院魔導戦士協会》感覚派〟の他のチームも行くから。さらに、〝実戦派〟〝理論派〟もね。リーダーも行くみたいよ」


「あの二人ですか」


 全員の脳裏に豪快な物言いで体格のいい少年と辛辣な物言いをするメガネを掛けた少年の姿が浮かんでいた。


 とはいえ、アカリ同様癖も強いが実力は高いのは鬼との戦闘で全員がしっている。ある意味、安全度は上がったと言えるだろう。


「シオンちゃんも今度は気をつけてね。シオンちゃんは強力な《魔導》が使えるのは分かっているから、落ち着いて使えば大丈夫だから」


「は、はい。あとその話はあまりしないでください」


 アカリがいっているのはこの間の妖弧が大量発生したときにシオンが暴走状態に陥ったときのことだ。

 正直、暴走状態に陥る危険性があるのならば、《クラン》活動を中止した方がいいような気さえシュンはしているのだが、本人の意思もありそれは認められないらしい。

 

 所謂、家の力も関係しているのかと邪推しているが証拠はない。本当に家の力ならば能力の低い学生である自分と一緒に《クラン》活動をさせないだろうと思いもあったりするからである。


 そもそも、シオンとしてはあのとき自分が《魔導》を使ったことすら気付いていなかったらしい。気がつけば、学院への帰還途中、シュンの背中で目が覚めた状態だったとのことだ。


 あのときのシオンの慌てっぷりはかなりのものだった。


 未だに恥ずかしいらしく今も顔が少し赤く染まっていた。


 ちなみにシュンが放った《アニヒレーション》についてはバレることはなかった。《魔導戦士》に目撃されていれば気付かれた可能性はあったがどうやら生でみたのはいなかったようである。





 そんなこんなで、シュン達も結界の外――防壁の外へやってきて《幻想種》退治をしていたのだが、


「アカリ先輩!! 数が明らかに多いです!!」


 今現在、大量の《幻想種》の処理に悪戦苦闘していた。

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